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バレほど面倒なのは無い

「ね、ねぇおばさん……これ」


「そりゃあ気になるわよねぇ」


明子はとてもニヤニヤしている。


明らかあらぬ誤解を持っているような顔だ。


さすがにこの誤解を解かないと後々面倒だと感じた輝は言われた通り席に座った。


誤解を解くといったことを美神も受け取ったのか彼女も普通に席に座る。


地味に対面で集中したことないか輝は色々と気持ちが昂ってくる。


(地味に対面であまり見た事ないしあんまし思ったことないけどよく見ると……こりゃあ女神だな)


輝はそう考えてしまうと美神の顔が直視出来なかった。


その反応に美神は首を傾げてはいたがその後の明子のせいでこの件も深追いする暇が無くなってしまった。


「2人は付き合ってるのかい?」


「はぁー!」


輝はいきなりの大爆弾を投下してきた明子に咄嗟の行動で怒鳴ってしまった。


しかしその様子に全く怯まない明子はやはり親そのものだろう。


「だってこんなに仲良いんだし付き合ってて当然じゃない」


「ボケ始めたのか!」


だが明子の顔を見ると明らかからかっている時の顔だ。


だがこの手の冗談は肝が冷えるので辞めて欲しいこと限りない。


「待て待て、おばさん、絶対にこのことは他言無用!良いな」


「それは……わたしゃ最近ボケが酷いからなぁ」


「嘘つけ!」


さっきまでの会話から明らかボケてないのは確定だ。


まだまだバリバリ動けてる時点で年相応のボケなど何処吹く風な人間なのだ。


しかし輝もいつもならここで引くが今回だけは引けない。


(ここで引いて変なことになれば……俺の幸せオタクライフが一気に変わる、そして真面目に殺される)


「お願いだ……この事がもし学校の生徒にバレちゃえば……考えただけで恐ろしい」


輝はあえて恐ろしいを強める動きをとって恐ろしさを表現したが全く見ていなかったため多分効果は無しだろう。


だが明子はコップに口をつけ1口コーヒーを飲むとまた話し出した。


「輝がそれだけ言うのなら付き合ってないのか」


「そうだよ……良かった……話は通じたぞ」


しかし明子の顔を見るとまだまだ隠し玉を持っている時の目だ。


「でもね、渚はどう言うかな?」


そう言うとカフェのスタッフオンリーの入口から渚が堂々と現れたのだ。


渚の顔は堂々かつドヤついていた。


「な、渚!?」


「お兄、私はとても辛い……」


そう言うと渚は何故か知らないが一回転して指をかっこよく輝に向け指した。


それらの行動にまたあらぬ誤解を植え付けれているのは何となく理解できるのは容易い。


「こんな可愛い彼女を連れて帰るなんて!」


「だから彼女じゃねぇよ!話聞いてただろ!」


「じゃあなんなの!セフげフー!」


「このバカモノがー!」


輝の素早すぎるチョップが渚の頭を撃ち抜くぐらいの勢いで飛んできた。


そのチョップを受けると速攻体を怯ませ体が徐々に倒れていく。


しかし気になることにはとことん貪欲になる渚は机に這いつくようにしながらじっと美神のことを見つめる。


そして無言の10秒程度の間が空くと渚が話し出した。


「可愛い・・・なんでこんなに可愛いの」


「え、そ、そうかな」


美神は明らか分かりやすく喜んでいる。


鼻の下が誰にでもわかるくらい伸びておりその姿はきっとこの場くらしか見せないだろう。


「本当に可愛いなぁ、お兄どうやってこんな可愛い子をとっ捕まえれたの?」


「いや普通に話したら仲良くなって・・・というか付き合ってないからな!」


そう言うと渚は明らかニヤニヤした顔でこちらを見つめる。


その意味を輝は魂で理解できたらしく自分の失態を激しく嘆くことになるのは目に見えた。


「私は彼女のことをお兄の恋人とは言ってないけど」


「うぐっ!」


「このバカ……」


渚は見るからにニヤニヤしながら輝をからかう。


自分の早とちりのせいで自ら墓穴を掘ってしまったのは一生の不覚ものだ。


美神を見ると顔を真っ赤にしながら俯いており明らか誤解解きの戦力になるのは諦めの領域になる。


それらの会話を見ながら明子は笑顔でコーヒーに口をつけ飲んでいた。


(本当にあの二人は仲が良いわね)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


悪夢の尋問が終わるともう外は真っ暗になっていた。


さすがに美神を1人で帰らすのは無理に等しい。


そのため輝が美神を家まで送るというのはごく当たり前のことになるだろう。


しかし予想外は起きる。


理由は明子のいつまで経っても変わらない好奇心旺盛な性格のせいだ。


「美神さんや、今日は晩飯食べてから帰るかい?」


明子の特大爆弾がまたもや起爆された。


しかしここで明子を止めないとさらに現状は酷くなる一方だ。


「おばさん、さすがに美神も明日は学校だし」


「私も聞きたいなぁ・・・お兄の可愛い友達のこと」


輝に会話を入らせることなく渚は輝を横はいりするようにした。


だが美神の顔を見るとまんざらでも表情をしている。


なんなら少し喜びの笑みを浮かべるぐらいには。


こうして美神が少し悩むと声を出した。


「なら晩御飯だけ頂かさせていただきますね」


「やったー!」


明子と渚は2人とも両手をハイタッチさせて喜んでいる。


一難去ってまた一難というのはこのことだというのを最近痛いほど理解ができたしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


明子はとても喜んだ雰囲気でカフェを閉めキッチンに姿を消す。


渚も自分の部屋がある2階に戻って行った。


だが部屋に戻るまでの間ずっとニヤニヤした表情で輝を見つめていたのは彼は知っている。


こうして2人だけになるという少し気まずい場面が家の廊下内で行われそうとしている。


しかしこの気まずさにピリオドを打つのは美神だった。


「良いなぁ・・・家族・・・かぁ」


「・・・美神、本当のことを言うとおばさんは俺の本当の親ではないよ」


そう言うと美神の顔は一気に曇っていく。


きっと輝の触れてはいけない一線に触れてしまった時のトラウマが蘇ってきたのだろう。


だが美神の質問にも輝はまゆひとつ動かすことなく答えるだけだ。


「親は死んだんだ・・・まぁそのせいでこのカフェに住み込みで働いているってわけ」


だが美神は輝を励ませるようにまた話した。


その時の顔は慈愛に満ちふれている女神のような顔だ。


「家族の形は血だけじゃない……私は血は繋がってるけどそこに愛なんてない……愛があればそこはもう家族よ」


「そうか……ありがとな……とりあえず俺は部屋に戻る……美神はどうする?」


輝は自分の部屋に行くために使う階段に上り美神にそう聞いた。


美神は少し考えているが答えは意外な人物の一言で決まったようだ。


「じゃあ私の部屋来てよ、お兄の学校のこと聞きたいし」


渚が部屋から顔を出し急ぎ足で美神の元に向かう。


この間役数秒だ。


渚の目を輝は一瞬だけ見ると目をかなり光らせていた。


絶対余計なことを沢山聞かれる、そう心が警告しているが渚はそれを言わせる間もなく美神を部屋に連れていった。


連れて行かれる時ずっと「え、え!」と声を漏らしていたが興奮状態の渚は誰にも止められない。


結局抵抗などできずにそこでただぼーっとすることしか出来なかった。


「これは死んだ」


そう体は理解出来たのだ。


輝は絶望を口にすると自分の部屋にとぼとぼ戻っていった。


部屋に戻りベットに体を放り投げるような形で寝転んだ。


枕を顔に擦り付けながら眠りに落ちようとするが寝れない。


(きっと余計なこと言ってるんだろうなぁ)


そう思うと謎の恐怖で眠れない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うわぁ〜すごく美味しそうですね」


美神の目がとても輝いている。


宝石のような輝きをともしながら明子の用意をした料理をじっと見つめている。


その姿はいつも輝をシバいているあの鬼の姿などなくただただ年相応の可愛らしさのみだ。


「そう言って貰えると嬉しいことよ」


明子の顔はとても喜んでいる。


基本は笑顔を忘れない明子だが今回はとても喜んでいる時の顔だ。


「じゃあ食うか……何見てんだよ渚」


「ふふふ別に……」


渚の目は明らかにニヤついている。


これで変なことをバラされたのは確定になった。


美神の目を見るとやりきったような表情をしている。


完全にその姿は女神の姿など無い。


「・・・美神、言っただろ」


「私は輝の学校のやった行為全て洗いざらい話しただけですけど」


真剣な眼差しでそう突き放された。


そう言われるともう何も言い返せなくなりただ口ごもるしか出来ない。


「それにしてもヤンキーから身を呈して守るはイケメンだねぇ」


「うぐっ!」


成り行きとは言えども割と男らしいことをしたのが少し今となっては黒歴史のひとつになっているためその事が1番知られたくない渚に知られてしまったことの恥ずかしさで今猛烈に死にたい気分だ。


それが顔に出たのか渚が更に煽ってきた。


「ほらほら勇者様の顔がとても醜くなるよ」


「ちくしょう……つい動いてしまったんだよ」


渚はずっとからかうような顔で話している。


それらの様子をずっと真剣に聞いている明子も輝からして見ればただただ最悪に等しい。


「だからあれはー……あれは……」


「お兄もう諦めて認めなよ、勇者様」


「こいつだけは後で潰す!」


「やだ怖いー」


明らかにわざとらしい行動が輝には腹が立つ。


だがこれ以上変に口を出せば何を暴露されるかなんて考えたら日が昇るだろう。


そのため黙るしか選択肢は残されていない。


(こういう形……良いなぁ)


美神はこの笑顔に満ち溢れた夕飯時を見て1人静かに羨ましがっていた。


彼女は昔から家族とは会ってない。


ずっと愛を知らないためあのような態度に変貌を遂げてしまったのだ。


そのため家族団欒である夕飯時の楽しみなど分かるわけもない。


しかし今日初めて輝の家に入りその楽しさ、温かさを知るともう元の生活に徐々に後戻り出来なくなるのを感じる。


(私もこんな生活したいなぁ)


結局は願望だ。


だがその願望を叶えたいのは夢である。


お金があっても愛はお金では買えない。


そんなこの空気感では野暮ったいことを考えていると明子が最高の手を差し伸べてくれた。


「ねぇ美神さんや、また今度ここに来たら」


「え……良いのですか」


一瞬思考が止まった。


本当に良いのか、そう考えていたが明子の声や目を見るとそれが本当だと理解出来たようだ。


明子に続き渚も話し出す。


「私もその意見に賛成ー、美神さん可愛いし」


「ほら渚も良いって言ってるし全然遠慮なんていらないのよ」


そう言うと涙がこぼれ落ちそうになった。


しかしここで涙を流すと2人が困ってしまうため顔を俯かせてなんとかの思いでで耐えた。


美神は顔を上げ笑顔を咲かせるように


「はい、分かりました……ありがとうございます」


その笑顔は女神のあだ名にふさわしいだろう。


(まぁ美神が良いならいいか、さすがに俺の話題だけで永遠に喋れないし)


輝はまだこの時でも頭の悪い理論を続けている。


だがその女神の笑顔にはすこし見惚れていたのは黙ることにした。

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