体育祭編 疑惑と疑念の生徒会(5)
「こいし、先に言う・・・俺は例えこいしがどんな動画を出そうが友達のままだ・・・安心してくれ」
輝はこの一言をこいしに残すと立ち上がり男の元へ1歩1歩確実に距離を詰めていき静かに、そして今までにした事の無いくらい冷たく突き刺さるような視線を送った。
まるでゴミを見るかのような目でじっと男を見つめた。
「お前は・・・本当にクズなんだな・・・」
「頭脳派の手段と言ってもらいたいな」
「お前を頭脳派と認めるのは言い訳の量だけだ・・・」
先程の輝の冷徹な目の意味がわからなかったのか男は輝から怒りの火が鎮火されつつあると思っているらしい。
本当はその逆でむしろ鎮火するどころか燃え上がる一方だ。
その男の頭の悪い思考力のおかげで先程までの焦りに焦った様子は少しづつ消えていき威勢が生まれつつある。
ここまで来てまだ威勢があるということに驚きを隠せない。
もうここまで来たら「最後の手段」を使うしかない。
「・・・はぁ、まぁいい、もう・・・少し話は変わるがこの会話を録音していると聞いたらお前はどうする?」
「どうするって?・・・は!?」
やっと男は気づいたのだろう。
男はハッとさせた、ハッとさせるとどうやら色々と気づいたのか顔が青くなり汗がまた流れ始め出した。
先程まで輝がずっと右手だけはポケットから手を離さない理由を・・・
そう輝は
「この会話・・・実は録音済みなんだよ・・・悪かったな」
そう言うと輝は心のこもっていない笑顔を作りながら右手をポケットから取り出した。
その手には確かにスマホがある、そして開いているアプリは音声メモのアプリだ。
スマホの画面をよく見ると録音中と書かれている。
「・・・じゃああとの判断は先生に任せるか・・・」
そう言い残すとこの場を去ろうとした。
しかし
「もうこの際やけくそだ!うぉぉぉぉ!」
「なに!ぐふぉ!」
「輝!」
「橘君!」
投げやりになったのか男は叫び出すと輝の背中目掛けてタックルを仕掛けに来た。
もちろん輝は美神の元に戻ろうとしたので男のことは確実に見えていない。
その隙をついたのだ。
不意打ちなためか何も防御ができず声が聞こえて振り返った際にタックルをモロに食らったためお腹に衝撃が走った。
「がはっ!はっ!は!」
輝は突然の攻撃に衝撃や恐怖のせいか足が崩れ落ちた。
あまりの突然すぎる出来事なため足に力が入らない。
美神もこいしも突然さ故に脳がまだ完璧に理解ができていないらしく足が棒になり動かない状態だ。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
「・・・また面倒事を作りたいのか?」
「もういいんだよ・・・どうせどれだけ言い訳しても」
「いい加減にして!」
「「!?」」
こいしが声を荒げた。
今までに見た事のないくらいの顔で声を荒げている。
輝も男も美神も衝撃で声が出ない中こいしは話を続け始めた。
「輝を虐めないで・・・聞いていたら好き勝手に・・・自分勝手も限度があります・・・人として本当に嫌いです!」
いつもはそんなに人に強く言わないこいしが今回ばかりはとても大きく声を荒げそして言葉遣いも荒くなっている。
「話を聞けばくだらない理由・・・本当に・・・やめて!・・・そしてごめんなさい・・・橘君・・・」
先程までは気合いがあったが徐々にその熱さ慣れないことをした疲労などで減っていき気づいたらこいしは限界を超えたのか泣き始めそうだ。
「・・・もう諦めろ・・・もうここにお前の味方はいない」
「嫌だ・・・」
「ん?」
「嫌だ!」
男はまだ諦めれていない。
その執拗さは素直に尊敬の値になるが決して名誉なものでは無いのは確かだ。
そしてこの戦いに終止符をうつ「あの方」が静かにこちらに向かってきた。
「全部見させて貰ったよ・・・輝」
冷静な声だが声には少し熱い何かを感じさせる、そう来たのは輝の担任である増田奈佐が来たのだ。
「1から10まで見ていたよ・・・いや、本当なら見ている間に止めるべきだったけど・・・輝・・・お前がいたから任せたんだ」
後から詳しく聞いた話だが増田は輝が使った道では無い道から静かに最初から見ていたようだ。
しかし入るタイミングがどうにも見つからなく苦労しているとこの場に輝が来たらしい。
なぜかは知らないが増田は輝をとても信頼しているらしい、そのためあの場でじっと見つめていたそうだ。
「・・・本当輝は人間と会う運はないな・・・」
そう呟くと1歩ずつ確実に男に近づいてきていく。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




