体育祭編 疑惑と疑念の生徒会(4)
「恐怖でな!支配するっていうのが1番手っ取り早いんだよ、人を使うにおいてはな!」
どうやら男は本格的に性格が終わってるらしい。
もう輝はため息をつく余裕すらない、この男のトンデモ理論にもはや尊敬の意すら払えてしまう。
「・・・こいし・・・ごめん・・・俺・・・こいつを・・・」
輝は手に力が入ってしまった。
しかしまだ輝自身にはブレーキがある、そのブレーキが輝の理性を覆い被さるように押さえ込んだ。
「はぁはぁ・・・一つ聞く・・・お前はこいしに何をした?」
少し声が低くなってしまったが輝は1番聞きたいことが聞けた。
本当は聞きたくない、でもまだこの状況になってまである単純な疑問を解きたいという気持ちが勝ってしまったが故の質問だ。
しかし男は今と余り変わらず不快な笑みを浮かべながら
「ははは!俺はな!こいつに・・・」
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時間軸は少し前に戻る。
今は放課後、もう教室には人はいない。
いつものこいしならこの時間にはもう既に家でゲームをしている時間だろう。
しかし今日は違う。
ある男に呼び止められ教室で話していたのだ。
その男こそが今輝と対面している男だ。
男とこいしは立ちながら見つめ合っている。
まるで試合開始前の選手のように・・・
「ごめんね急に呼び出してしまって・・・」
「だ、だ、大丈夫ですよ」
輝と対面して人間と喋れるくらいには成長はできたもののまだやはり余り喋らない人間と喋るのには時間がかかりそうだ。
だが多少話せるようになったのは成長点だろう。
突然男の顔に不敵な笑みが浮かんだ。
まるで何か武器を持っているかのような自信とこれからが楽しみな顔をしている。
「確かこいしさんって・・・Youtubeやってるでしょ」
「っ!?」
こいしは突然の質問に体が大きく動いた。
「え、な、なんで・・・し、知ってるの」
まだ人に嘘をつくということができないこいしはまんまと認めてしまった。
そうこいしは実はYouTubeをやっているのだ。
このことは1番信頼を寄せている輝にさえ言っていない秘密のことだ。
しかしなぜバレたのかこの時は分かるはずもない。
「やっぱりか・・・それもかなり体・・・使ってるよね?」
男はこいしの耳元でそう呟いた。
その時とてつもない恐怖ととても大きな不安が心を支配し始めた。
全てバレている。
その焦りがこいしの思考力低下に大きく貢献している。
(なんで、なんでバレてるの・・・輝・・・助けて)
「・・・サムネで胸を使うって・・・なかなかなチャレンジャーだね」
「うぅ・・・助けて・・・」
もう声が出ても蚊の鳴くような声だ。
男は確実にこいしがどういうスタイルで動画を作っているのか全て把握済みのようだ。
もう言い逃れができない。
「マスクとサングラスで隠しているつもりだけどバレるよ・・・でもこれバレたらマズイだろうな」
男はそう言うとスマホをいじり始めた。
前後の会話の後もありこいしの冷静さはもうあってないようなものだ。
あわあわした様子をこいしは無意識のうちに見せてしまいそれもこの男にとってはより畳み掛ける合図になる、だがそんなことも今のこいしには分かるはずもない。
「俺は黙ってあげるよ・・・でも一つだけ条件を飲んで・・・」
もう今のこいしには飲む他ない。
そのくらい追い詰められていたのだ。
「俺の言うことを体育祭が終わるまで聞く・・・それだけだ」
「分かりました!聞きます・・・だから広めないでお願い・・・します!」
こうして契約は成立してしまった。
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時は戻り現在。
男は冷静さを失ったあまりか輝にこの件を1から10まで説明してしまっている。
だがこの件を1から10まで説明するともちろん話の要となるこいしのYouTubeの話が嫌でも入る。
今の男は冷静さが無いため頑張れば隠せるであろうYouTubeの話を黙ると言った約束を忘れてしまっていた。
そのくらい頭を回転させ自分のみが助かる言い訳をこの状況下でも考えてしまっているのであろう。
だがそれが逆に首を絞める行為だとはこの時は誰も思ってもいない。、
「こいしがYouTubeをやっているのを黙る代わりに言うことを聞けって言ったんだ!」
男は言ってしまった。
このことを聞いたこいしは膝から崩れ落ち無言で涙をポロポロと流し始めた。
1番隠したかった人達にバレてしまった、酷いこと言われるかな、絶交されるかな。
そんな恐怖が頭を右往左往しまくる。、
「・・・お前は約束を平気で・・・」
もう何かが切れそうだ・・・
この男といると何かが確実に切れる・・・
「あ、言ってしまったか・・・まぁいい!」
この一言が輝の最後の線を切ってしまった。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




