体育祭編 疑惑と疑念の生徒会(3)
「おい・・・たとえどれだけ追い込まれて不利になり頭が使えなくなったとしても最低限わかるだろ・・・一般常識は!」
1つ目の感情は怒りだ。
大事な友を、大事な仲間を殴られたこの怒り、確かに持っておりそれは男の顔を見れば見るほど先程の光景が脳裏にフラッシュバックするため嫌でも憎悪が肥大化していく。
そのため先程から輝の拳はギチギチと音を立てそうなくらい力が籠っている。
そして滅多に見せないような顔、輝が怒りにどうにかなってしまっている顔、それらのことを全て見てしまっている美神とこいしはただただ黙るしかできない。
「・・・だがこれではっきりしたよ・・・さっきから分かってはいたがまさかお前がこれほどまで単純なヤツだったとはな・・・あれ全部嘘っぱちだろ?」
最後に沸いた感情は疑問が晴れた達成感のような感情だ。
「ち、違う!」
「何も違うわけないだろ!」
輝は柄でもない大声を上げて相手を威嚇した。
もちろん威嚇を兼ねているので迫真の声だ、そのため男はかなりビクついて尻もちをつきそうになっている。
その点は少し輝の中で評価したいなと思いつつ男の口からボロが出るのをまた待った。
「・・・お、俺は・・・何も・・・」
「・・・」
「ヒーッ!」
男はまだ言い訳をするくらいには余裕があるらしくその余裕さえも輝は男から消すために目で威嚇した。
自分が悪党になった気分だが勝手にデマを流されそのデマの真相を突き止められ焦り人を殴った、その経歴を見るとどちらが悪党か一目瞭然だ。
そう心に言い聞かせ男の精神をじわじわと破壊して行った。
「す、す・・・すみません・・・でした」
男はついに負けを確信したのか膝をついて謝った。
ここからは輝の思い通りに進むトントン拍子のようなYes or Noの質問の繰り返しだ。
「あの証拠は嘘なのか?」
「はい」
「あの嘘は他には広めてないな?」
「はい」
その他もろもろのことを聞いたがどれも輝の思う通りの結果で終わった。
しかし一つだけ残っている疑問がある。
それはYes or Noなんかでは答えられない質問である。
「なんでこんなことをしたんだ?」
輝は学校では普通の人間だ。
特に目立った点は・・・美神やこいし、生徒会の件を除いてはなく、なんならこいしと生徒会に関しては人目がないところで関わっているため滅多なことがない限りバレることはない。
なら理由は?と考えたのだ。
「お、俺は・・・お前が許せなかった・・・」
「やっぱりか」
最初から予測はついていた。
こんな手の込んだイタズラにしてみればかなりタチの悪いイタズラは普通しない。
男は見た目こそは真面目だからそれだけはないと思っていた、なら何が原因なのか、それが分からない。
そのことを汲み取ったのか男はまた話しだした。
「お前は・・・美神さんと・・・美神さんと仲が良い・・・許せなかったんだよ、俺は」
「・・・」
どうやら理由はとてもしょうもなかった。
その心情が漏れたのかつい100パーセント呆れでできたため息をこぼしてしまった。
「そのためにこいしを使ったのか?・・・こいしが他人と会話が慣れてない、その弱さを使って!」
理由がわかった後はこいしの件だ。
こいしは人とのコミュニケーション能力がとてもあるとは言えない、そのため焦りや嫌われたくないという心理が入ってしまいつい嫌なことでも引き受けてしまう性格をこいしはしている。
きっとその性格を悪用したに違いない。
「・・・」
「最初からわかっていた、さっきは聞けなかったが、こいしの頬に拳の跡ができていたこと・・・そのことについて少し教えてもらいたい?」
そう言われると男は諦めたのか
「はははは!バレたか・・・全部!」
とち狂ってついに笑い声をあげてしまった。
「なら全て言うよ!クソッタレ!」
言動や言葉遣いに先程の冷静な様子などなく多分この性格こそこの男の真の性格なのだろう。
だが真の性格はとても汚く見るに堪えない性格だ。
「俺はな・・・こいしを恐怖で支配させたんだよ!あはははははは!」
どうやらこの男はとてつもないクズのようだ。
もう治療不可能だろう・・・
「そうか・・・」
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




