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以外に会うのはあるもの

「はぁはぁはぁ、誰も……居ない」


激しい息を整えながら教室全体を一通り見回す。


しかしその中には誰一人も居なかった。


あるのはただただ無機質に差し込む夕日のみ。


「……美神」


会いたくても会えなかった人の名を輝は呟くと素直に1度教室を出た。


下校中、あるのは後悔のみだ。


(自信なんか持ちたくない……でも確かにあいつの言った通りに自信をそろそろ持つべきなのか)


今回二人の間に亀裂を作ったのは紛れもない輝だ。


だから尚頭を今までにないくらい抱えてしまっていてた。


(強情なのは俺の方か)


今できるのはただただ後悔と謝罪の思考しか生まれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次の日学校に行くと美神は普通に居た。


しかしオーラが違う。


また前に戻ってしまったような感じだ。


前の孤独を着ている見ていて切なくなるオーラである。


「美神・・・その昨日は」


「別に謝ることでは無いわ」


よそよそしい態度が輝を余計焦らせていく。


今回の件の悪は圧倒的に輝の心無い怒鳴りのせいだ。


また何か遠くに行ったのを感じる。


それがバレたのか昼休み、食堂でいつものようにご飯を食べ終わり教室に戻る時要が食堂前に居た。


とても申し訳なさそうな顔で立っている。


「輝・・・ちょっと話」


「お、おう」


要も輝も恥ずかしさか会話がどこかうぶだ。


いつもみたいに気兼ねなく話せる雰囲気では無い。


連れていかれたのは中々人の来ない階段だ。


かなり重々しい雰囲気を最初にぶち壊したのは輝だ。


「美神と何かあった?」


「・・・気づいていたのか」


こういう時の要はとても違和感察知が早く輝も沙也希も中学から一緒だが毎回驚かされている。


「そりゃ今日の輝の雰囲気だとあの二人も気づくよ、というか2人ともビビってたよ、逆にあれで冷静さを装ってたんなら1度精子からやら直せ」


「おま!・・・まぁすまん」


輝は1度頭に血が上ったがこういう時の要は毎回必ず助言を残してくれる。


要の表情もどんどん申し訳なさが倍増していている。


「・・・昨日の件は本当にごめん」


「いや、お前のせいでなない・・・結局俺のせいだ・・・」


「ということは・・・美神も聞いたという事ね」


輝は図星で少し体がビクッとしたが今の状況下だと何も言わない。


変なことで勘が鋭くなるのが要の怖いところだ。


「今日の美神を治すにはやっぱり正面切るしかないね」


「すまん・・・手伝ってくれ」


輝は必死に頭を要に下げた。


その様子に心底驚いてはいたがこういう時の要は情に厚いため裏切らない。


今回も裏切らないと顔が語っていた。


その要の顔は歴戦を生き抜いてきた戦士のような安心感がある。


「わかった・・・ロケーションは用意する・・・体育館裏で良い?」


「ありがとう・・・ここで決めるよ!」


輝はそう声を大きく決意表明をすると階段を登った。


男として生まれた以上正面切ってやらないといけないのはわかっている。


女々しいことは言ってられないそう心に強く戒めその時が来るまで待った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


遂に時は来た。


体育館裏。


陰ながらだが要と沙也希、浩史が見守っているため心境的にはかなり強い。


後は来るまで待つのみだ。


(もうみんなが見ている、この際前の自分を戒めるためにもこのこと全て話す!)


そう心に刻み遂に彼女は来た。


やはり雰囲気がかなり変貌している。


いつも輝と喋っていたあの雰囲気など何処吹く風だ。


異質な雰囲気に唾を飲み込むと美神が先に話しかけに来た。


「ここに呼び出して何か用があるのです?」


「・・・ここに来てもらったのは謝罪の為だ」


輝も全てを決めたのか真剣な眼差しで美神を見つめる。


美神はそれでもなお顔の表情を何一つも変えない。


「美神・・・昨日は・・・本当に申し訳ありませんでした!」


高速でいやもはや輝からしたら音速で頭を下げた。


しかし美神の対応はもうあの時の対応は無い。


あるのは余所行きスマイルだけだ。


「私もこの件には大変申し訳ないと思っております・・・ですので私から謝らせていただきます、申し訳ありませんでした!」


そう言うと美神は体育館裏から姿を消した。


輝は手を伸ばし止めようとしたが後一歩、その1歩が踏み出せず結局逃してしまった。


その1歩は輝の心の弱さを証明するにはあまりにもわかりやすすぎるものだ。


「輝・・・」


「輝・・・とりあえずジュースだ、受け取ってくれ、駄賃はいらん」


沙也希は沙也希なりの浩史は浩史なりの方法で輝を慰めた。


だが輝は顔を上げると笑顔だった。


しかしその笑顔はツギハギかつカサブタだらけの傷物の笑顔だ。


その笑顔を見ると何も口が出来なかった。


もちろん陰ながら見ていた要もそうだ。


このロケーションを組みさらに輝の心に追い討ちをかけてしまった。


その罪悪感は輝には及ばないがかなり重い。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


美神はあの後体育館裏から急いで去ったものの1つ言いそびれたことがある。


(輝に言わなくちゃ・・・本当の気持ちを)


しかし体育館裏をバレないように見ると輝のあの笑顔が見えた。


その時また人を傷つけてしまった罪悪感、彼の心を破壊した一生償う罪、そのふたつが心に生まれた。


あのツギハギの笑顔を見ると自然と涙が溢れ出てくる。


今まで大量の人を振り悲しませていたが今回はそのダメージがとても大きい。


せっかく自分を変えてくれた大切な人をこの手で壊した。


(結局私も自分勝手な意思で・・・ごめん・・・ごめん・・・ごめん)


声に出せずただただ体育の壁を背もたれにしながら涙を1人静かに流すしか出来なかった。


彼女もまた後一歩が踏み出せない人間である。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……」


「どうしたんだい……珍しく悩んでるのかい?」


輝は頭を下げながらカウンター席に座っていた。


姿からもわかるように悩んでますのオーラが身にまとっている。


そのため輝の家の下のカフェの店主である明子に話しかけられていた。


輝は両親が「ある理由」により輝と輝の妹である渚がとても幼い時に亡くしてしまったのだ。


その後その2人を拾ったのが明子である。


明子はこの老舗カフェの店主であり2人を雇うような形で住ましている。


雇うとなったのもつい最近で理由は明子の老化が原因なためだ。


こうして今の状態ができたのだ。


そして今は輝が店番中だ。


客は誰も居ない。


元々知る人ぞ知るような店なため客もだいたい同じ顔ぶれである。


そのため客が来ない時間はゆったりと店のカウンター席で座っていることが多い。


「……おばさん、これは友達の話なんだが聞いて欲しい」


「まぁ私に聞けることなら聞いてやる」


そう言うと明子は輝の隣に座り優しく輝の瞳を見た。


「……友達が……そのなんというか……女友達と喧嘩したんだ……喧嘩の理由は友達の方にあって……謝る術とか持ってない?」


話す感覚がかなり空いているため明子も長年の勘からこの話は輝の話だとわかっていた。


元々この手の話し方をすると全て輝の悩みだと長年一緒に住んでいたためわかっている。


だからとてその知っていることは未だに言っていない。


「そうだねぇ〜、素直にその謝罪の気持ちを伝えてみるしかないなぁ」


明子は少し伸ばしながら言った。


しかしやる気なさげに言ってはいるものの目は本気の目だ。


その言葉や視線にやる気が湧いたのか勇気が湧いたのかは知らないが輝も少しづつ頭を上げ立ち上がった。


(そうだよな、結局謝るしかできない……明日必ず!)


そう心に固く決意をした、しかし出会いはいつも意外だ。


「あれ……」


輝の目の前に現れたのは薄紫色の髪がよく輝く年相応の可愛さを持ち揃えているあの方が来てしまった。


「え……」


その時彼女も声を漏らす。


そう紛れもない来たのは氷川美神だ。


美神の顔は以外そのものだ。


少し輝はニヤつきそうになるが明子に何言われるかわかったものでは無いのでとりあえず普通に接客をしようとしたが長年生きている明子の目は見逃せないようだ。


「え、まさかだと思うけど2人知り合い?」


年齢が高齢者とは思えないくらい早い反応速度だ。


輝はその時顔を歪めたが美神は普通に頭を下げ


「輝の同級生の氷川美神です、いつもお世話になってます」


美神の一言を聞いた時の明子の顔はとても笑顔そのもの。


しかしそれを対比するかのように輝は顔を曇らせていく。


「あ、で、ご、ご注文は……」


「ご注文は……」


「少しおばさんとお話しない?駄賃は無料にするから」


速攻美神のことを気に入ったのか明子は興味津々の目で美神を見つめている。


きっと自分のことを根掘り葉掘り聞かれるのだろうと覚悟したのか輝は頭を抱えてバックヤードこと自分の部屋に戻ろうとした。


しかしその野望も目の前で崩れさる。


「輝、少し話」


目が真面目に怒っている時の顔だ。


輝は生唾を飲み込むとこくりと頷く。


「ひとまず外で話すか」


「話がわかるじゃない」


「多少はな」


そういうと2人は外へ出ていった。


外へ出る前の明子の不貞腐れた様子に多少罪悪感を覚えたが今回は許してくれと心の中で叫んだ。


今回ほどテレパシーが欲しくなったことは無い。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


時期的は5月


まだまだ5月とは言えども温かさは来ておらず中々寒い。


そのため2人とも風邪をひかないためにも輝は高速で話を終わらせるため動いた。


「今日は本当にすまない!俺のせいだ!」


しかし美神の反応は輝の思っていた180度真逆だ。


「いえ、私こそ今回は・・・あなたの余計な領域に勝手に踏み込んでしまい・・・大変申し訳ありません」


美神の謝罪はどこかいつものツンツンしてるオーラがなく言っちゃ悪いがかなり不気味さ身にまとっていた。


そのためか顔が引きつっていたらしく美神はそのひきつりを見ていたようだ。


「こんな謝罪しかできなくて申し訳ありません」


ここまで頭を下げられてもと輝は思う。


今回の原因はほとんど輝のせいだと輝は思っているためここで2人を元の関係性に戻すための策を練った。


「頭上げてくれ・・・今回は俺のせいだ」


「いえ、元々こんなことを聞かなければ……」


「お願いだ!今回は俺の謝罪を飲み込んでくれ、後凄く自分勝手で申し訳ない、俺はまた……美神と前の関係性に戻りたい、そして嫌なことがあるのならなんでも言ってくれ・・全て受け入れる」


輝は真剣な眼差しでじっと見つめた。


その言葉を聞いた時美神の目がいつも学校で見る時の目に戻る。


「わかった、今回は甘んじて受け取る……でも次変なことしたら!許さないんだから!」


「良かった、ありがとう、言いたいことは無いのか?」


「無いよ」


輝はいつもの美神に戻り安堵と安心が一気に襲いかかってきた。


よく美神の顔を見ると泣き跡が見えた。


しかし顔は喜びに満ちているためあまり深追いはしないことを決意する。


美神は輝に言うことを言うとまたカフェに姿を消した。


その後ろ姿はいつも見慣れている少し怖がりで精神面は弱いくせに何故か強情かつ強気であり弱い面をたまに吐露する美神の姿だ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


カフェに入ると席を3人がけに変えていた。


この時間帯に客があまり来ないとは言えども中々大胆な行動だ。


「おばさん、さすがに人が来ないからってこれは大胆すぎない?」


「あらヤダわなんでわざわざ3人がけにしたと思うの」


少し性格悪めの婦人のような声真似をすると輝を見つめた。


それが意味するのは逃げれないぞといった意味だ。


「美神さんだっけ?ここに座りなよ」


明子がノリノリで席を指指した。


その席の構造は2人が向かい合わせになるような構造でその2人の隣になるように明子が座るという簡易会議みたいな構図だ。


(果たしてどうなるのやら)


輝は他人事のように考えるが自分の状態を考えるとこんな呑気なこと言ってる場合ではなかった。

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