体育祭編 (プロローグ)
体育祭の準備期間
各々が自分たちのできることをしている、誰しも青春というのを手に入れやすい時間。
この期間に馳せる想いは…
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ついに始まった体育祭準備期間。
体育祭と言ったら旗
ということで輝は放課後に要達に呼ばれ空き教室で作業していた。
来ていたのは要と美神だけだった。
浩史は家の都合、沙也希はクラブなので都合がどうにも合わず3人だけになっていたのだ。
「だいぶやってくれてるんだな」
「さすが先陣切ってる人、綺麗に塗られているね」
輝と要は前の当番の人達がやってくれた旗を見ながらその塗りの綺麗さに驚きを隠せなかった。
塗りムラのなさ、綺麗な塗り分け、圧巻するしか出来ない。
青色ベースの旗に白や黒など色々な色を載せている最中。
だがその姿も美しく完成したあとはさらに美しくなるだろう、そう考えるとモチベーションが上がってきた。
「さぁ、早く塗って帰るわよ」
美神がそう言うと先陣を切りペンキと刷毛を持ち旗に向かった。
張り切っている様子の美神に輝と要は無言で従うように輝と要が使うであろう刷毛の用意を始めた。
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「じゃあ私はここからやるわ、輝達はどこからやる?」
美神はまだ比較的塗れてない所を所望した。
先の人がやってくれたとはいえまだまだ濡れてないところは沢山ある。
そのため輝と要の仕事は少なからずないわけが無い。
輝はそんな旗の状態を見て
「じゃあここ、俺と要とならここは終わらせれるよ、終わったらそっちに応援もするから」
「確かにいい選択だね」
輝の選んだところはちょうど2人で完成しそうなぐらい塗られていた箇所だ。
少し気持ち悪い感じに完成されていた場所なので塗り終わったあと全体を見返すとかなり気持ちが良くなりそうだ。
「じゃあ決まりね・・・作業開始」
「うい!」
「おーけー!」
美神の合図と共に輝と要はまだ塗れていない箇所に刷毛で色を付けていった。
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辺りの陽が傾きつつある時刻。
3人は集中の絶頂まで達していた頃。
あたりはペンキの匂いで染み付いておりその匂いはこの仕事の苦労を物語るには十分なものだろう。
「5時になりました、作業をしている生徒は片付けを始め速やかに下校をしてください」
3人が塗り作業の集中から覚めたのは帰りを促す放送だった。
その放送により輝達はハッとし、辺りを見回した。
気がつくと辺りは夕日の赤に染っている。
鳥も鳴き時間をどこか感じさせる。
「けっこう経っちゃったね」
要がぼーっとした表情で呟いた。
疲れからかその声に生気がない。
「たしかにな」
輝も同じく生気のない声で要の言葉を返した。
終わりを迎えると初めて疲れが身体にのしかかってくる。
先程まで四つん這いでの塗り作業などが多かったせいで腰がとても痛い。
今、輝は三角座りで座っているが立とうとすると腰の痛みで少しふらつく自信がある。
「んじゃ、帰るか・・・」
だがそんなことすら考えれなかった輝は何も考えることなく立ち上がりそして案の定腰を痛めていたためおじいちゃんのように腰に手をつけながら刷毛やバケツなどを持った。
「ははは!おじいちゃんみたい!」
要が笑いながら輝をバカにしているが要も輝も同じく四つん這いでの作業を良くしていた人間だ。
もしかしなくても腰は輝と同じ運命だろう。
「そんなになるまでやるから・・・痛!」
「ははは!お前もじゃねぇか!ははは!」
要もやはり腰をやられてしまっていた。
腰に手をかけ輝のやっていた所謂おじいちゃんポーズを結局自分もすることになった、皮肉と言えば皮肉だ。
「結局お前もやられてるなぁ!ははは!」
「なーにー!輝と違ってこっちはずっとずっとずーっと!四つん這いだったの!」
「んなもん関係ない!」
「輝!そういうところ!」
「うふふ」
「「ふぇ!」」
2人の口喧嘩?が始まり徐々にヒートアップしていく中美神が笑を零した。
その笑みは純粋な、哀れみを含んでいる笑みでは無い。
「あ、ごめんなさい、私・・・こういうことしたこと無かったから・・・つい」
美神は申し訳なくなったのか恥ずかしさから顔を赤く染め急に頭を下げて謝りだした。
「いや大丈夫大丈夫、私達もこういうの憧れてたんだ」
「まぁ、これは無意識だったがな」
そう輝と要は言うとまた笑い始めた。
その光景はどこか美神が追い求めていた「青春」と合致している箇所がある。
青春。
それは美神がどこか心の奥底で追い求めていた思い出の形。
体育祭編。
美神の体育祭の目標は1位?クラスでの1位?
そんなものは上っ面での目標。
真の目標は思いの形を具現化だけだ。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




