嘘時々大根役者
ジングルベールジングルベール
すずがーなるー
そしてワイはクリぼっち☆
「どうかしたの輝?」
輝の目の前の席で対面して座っていた美神がわざわざ顔を近づけて聞いてきた。
どうやら輝の焦りが見えたようだ。
「...茜を探してる人がいる」
輝はそう呟きまた沙也希と一緒に感じを続けだした。
しかし徐々にだが茜を探している男たちが輝の居るフードコートに近づいてきているのがわかってきたのだ。
服装も逃走中のハンターのような服装なためすぐ分かる。
探しに来ているのに服装でバレるというのはとても皮肉なものだ。
まだ近くの店などを探しているがあと5分もしたらきっとフードコート内に来るだろう。
(これはまずいな...あいつら気づいているのか?)
輝が思い浮かべた人物は美神と沙也希だ。
もしかするとこの事実に知っているのは輝だけなのかもしれない。
(ここでバレたらかなりマズイ!)
先程までは暑くて冷房が効いているとはいえ未だに暑さでしんどく重たかった輝の体は今はそんなことを考える余裕すらない。
「...沙也希、美神、ごめんトイレについてきてくれないか?」
輝がとった策は顔バレてしているであろう輝含めた3人をこの場から少しの間だけ席を外すことだ。
もちろん4人とも顔が固まっている。
沙也希だけならまだしも美神も連れて行くなんておかしい。
「輝っちよ、なんで美神も連れていくんだい?変なこと...やだー!」
「俺はそんなことするつもりはねぇよ!」
要は予測通り子供がおもちゃを買ってもらったぐらい笑顔で聞いてきた。
もちろん輝はそんなことを考えてないため否定する。
「...いや、変なことはしないよ?少しトイレ行くがてら近くの店とか見せてあげたいし」
「いや私は良いよ...」
その場で考えた嘘なだけに火力が低い。
そのため美神はどこか警戒した様子で拒否した。
こうなるとまた最初からとは行かずかなり面倒な状態からスタートとなる。
「...沙也希すまん着いてきてくれるよな?」
「まぁその程度なら良いけど」
「ヤッター!」
普段連れションなどしない輝が今日突然誘いに来たので沙也希は特に警戒することなく成功した。
だが少し反応がぎこちない。
どこか何かあったのだろうと察しついてきているのが分かる反応が見られる。
「...ごめん美神少し生徒会での話思い出したから耳貸して?」
「まぁその程度なら...」
最近の美神は優しい。
というかどこか輝に心許す場面が増えたと言うべきなのだろう。
きっとこの耳貸しも少し前だと拒否されていたであろう事だが許してくれた。
輝は美神が信頼してきてくれて淡い喜びを胸にそっと呟いた。
「...茜を探している人があともう少しで来る...あと保って(もって)5分」
「...わかった」
先程まで少し赤く染っていた美神の顔がその一言を境に急に真面目ムードに戻った。
と思ったのも束の間。
「ゴメンナサイ、カナメサン、ワタシスコシ、キニナルミセガアルッテイウカラスコシミテクルワ」
(何だこの大根役者!)
美神がとった策は先程の輝の提案に乗ると言った作戦だ。
作戦自体は悪いものでは無いが美神にはその作戦を上回るほどの大根役者ぶり!
あまり嘘などはついたことがないためか、というか度々本音が口から漏れるほど本当は嘘が苦手な美神だからなのか演技がとんでもないほど下手だ。
この人類史上稀に見る大根役者を見て輝と輝の心理がわかっている沙也希は2人とも暑さとは違うベクトルで汗をかき始めた。
だが要と浩史は...
「確かにね、言ってきたら、私はこの坊主と一緒に居るから」
「誰がハゲだこら!」
「ハゲって言ってない!」
(馬鹿で助かったー!)
輝は要との付き合いは長い。
そのため要がなんでも真に受けやすいと言うことも知っている。
そして会って短いが浩史も要と同じ性格だ。
だから女子が苦手な浩史でも普通に話せているのだろう。
「じゃ、じゃあ行ってくるね」
「気をつけてね、あ、間違って変な真似はしてはいないよ」
「するかよ」
輝がそう言うと少し遠回りをしてフードコートから出ていく用意を始めた。
相変わらずだが要はからかいに来ている。
そんな要を軽くツッコミ輝は次に茜を探している者たちの位置確認を始めた。
(まだ間に合う...今がチャンスだ!)
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果たしてバレるのか?
バレないのか?
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




