タダで兵隊を集める方法
夕食後に部屋に戻ったわたしは、プチドラを抱いたまま、ゴロンと横になった。
「今日もいろいろとあったわね」
「毎日盛り沢山だよ。退屈しなくていいけど」
「伯爵はどうするんだろう。兵隊が足りなくて補充もできない。お手上げかな」
「金がなければ何もできないからね」
「そうね。でも……」
お金をかけずに兵隊を集める方法はないわけではない。町の人たちをアジって、国民軍でも人民義勇軍でも名前はどうでもいいけど志願兵を集めれば、徴兵より士気が高く、傭兵より安い戦力をある程度整えることができる。
「どうしたの? 急に黙り込んで……」
「えっ? ああ、ちょっと考えてたの。タダで兵隊を集めるためには……、えーと……」
と、考え込みながら、わたしはいつしか眠りに落ちていた。
次の日、わたしは、ない知恵を振り絞って、志願兵募集・義勇軍編成の方法を考えていた。人々をその気にして義勇軍に志願させるためには、それなりの仕掛けが必要だ。伯爵の軍隊が混沌の軍団を軽く蹴散らしたといううわさが流れているようだし、昨日、占領地の住民の代表から申し入れもあったことだから、人々は好戦的かつ楽勝ムードになってるのではないか。もしそうなら、もう少し人々を熱狂的にさせる燃料があればいい。
そんなことを考えながら、プチドラを抱いて廊下を歩いていると、廊下を曲がったところで、
ドスン……、アイタ……
わたしは何かにぶつかって弾き飛ばされ、しりもちをついた。
「大丈夫ですか。申し訳ない。こいつが……」
「ちょっと、わたしが悪いっていうの?」
目の前にいたのは「皇帝の騎士」バーン・カニング氏と連れのエルフ女だった。いつもながら、うらやましいほど仲のいい二人だ。わたしはカニング氏に助け起こされた。
「ありがとう。でも、こちらこそ御免なさい。考え事をしながら歩いていたので……」
「考え事ですか?」
「ええ。伯爵によれば兵員が足りないということですから、どうしたものかと……」
「そうなんです。私は何度も伯爵に侵攻作戦を提言しているのですが、伯爵は兵が足りないとか雇う金がないとか言って、進言を聞き入れようとしない!」
カニング氏はにわかに感情を高ぶらせ、喋りだした。拳を振り上げ、熱狂的に、まるで演説を聴かせるかのように。自己陶酔しやすいタイプかもしれない。やがて、カニング氏は、「ウォー」と叫び声を上げ、
「もう我慢できない。もう一度、直談判してやる!」
わたしとエルフ女を残し、伯爵の執務室に向けて走り出した。




