お婆ちゃん異世界へ行く。
メインを書きながら、ふと思い付いたので書きましたw
私には息子が一人おります。
ぬぼうとしておる息子ですが、優しい息子ですじゃ……。
有り難い事に、そんな息子にも嫁御が出来て、孫も三人産まれました。
しかし、村には食糧が少ねぇんです。
昨日。一番上の子供が冷たくなっとりました。
老い先短い私が生きて、老い先長い子供が亡くなるちゅうのは、見ていて耐えかねる物があります。
だからどうか、山神様よう……。私の命と引き換えに……どうか、子供の命だけでも救ってはやって貰えませんでしょうか?
私の命に何の価値も無いのは重々と承知しとりますが、どうかおねげぇしますだ。
息子も嫁御も優しいんです。
……だから、どうかよろしくおねげぇします……。
今は乳母捨て山などと呼ばれてはおりますが、私はあなた様の元々のお名前を知っております。
地母神様……。どうか私の願いを聞き届け下さいませ……。
私はここでこのまま草木の糧と為りましょう。だからその代わりに、どうか子供達にあなた様の慈愛をどうか……どうか……。
……………………。私がそう願ったのは、ひと月程前の事じゃった。
『主の願いは聞き届けた……。その代わりに其方の願った事を、其方も同様に生涯を掛けて行う様に……』
そう声が聞こえたと思ったら、次に目が覚めた時には、見た事も無い場所へと来ておった。
石作りの高い家達に、石の道。人を乗せた荷車を引く馬車馬が、堂々と行き交っておる。噂に聞くお江戸か?とも思うたが……。マゲをゆっておらぬ者達が大通りを闊歩しているのじゃ。
そして、髪の毛色が、摩訶不思議にも赤青黄色と色々と華々しい。そして着物もまた、摩訶不思議。袖の長い者はおらず。身軽な足軽ともまた違う格好をしておる。刀は差しておらぬが、似た様な刃物は持っておる。
どうやら私はお江戸では無く、遠い異国の地へと来た様じゃった。
黒船になど乗った覚えはありゃあせんが、あれに乗って来た者達は、こお言う所で暮らしておるんだろうのう……。私はそう思ったのじゃった。
それはそうとして、私の姿は他人には見えぬらしく。どうやら、化けておるらしい。それはそうだろう。私は空腹の末に死んだのだから当然じゃ。腹も減らぬし、夜も眠れぬ。
それは別に良いのじゃが、人に見えぬのは困った物。地母神様には、同じ事をしろと言われたのだ。
地母神様は願いを聞き届けてくれたのじゃから、私も受けた命を果たさなければ為らぬと言うもの。されど姿が見えぬとどうしようも為らぬ、どうしたものか……?
化け物が出るのは丑三つ時じゃが、化けて出た所で逃げられるから意味が無い。一度やっては見たが、見事逃げられてしもうて話も出来んかった。
食うに困っとる小童達の前に化けても、驚かすだけ。それはあまりにも可哀想じゃからのう……。お手上げじゃ……。
……しかし、じゃからと言って諦める訳にもいかん……。
「お婆ちゃん……。死んじゃった人?」
「……おや、お嬢ちゃん……私が見えるのけ?」
「うん」
「あ~。そうかい、そうかい!良かった!神様は私を見捨ててはおらなんだな!」
「……神様何かいないよ……」
「何じゃ、お前さんは神様を信じとらんのか?」
「うん。いたら私達の様な、苦しむ人はいないでしょう?」
「お主は神様に会いには行ったのか?」
「え?会うって……何処で?」
「何処でって神様のお家じゃよ……。お家に行かんと会える訳が無かろう?」
「でも、神様は……」
「全知全能とか言い出すんじゃあるまいな?……神様は毎日忙しいんじゃ。お散歩などする時間等あるはずが無かろう?それに、用事があるならなら自分の足で、お願いをしに行くのが当たり前じゃろうて……」
「それは……そうだけど……」
「神頼みは神様が居る所でせんと意味が無いぞ?」
「それもそっか……」
「して、お前の名前は何じゃ?」
「チャル。お婆ちゃんは?」
「タエじゃ」
「タエさん……」
「カカカ。お婆ちゃんで良い……家はあるのか?」
「無いよ……。お父さんもお母さんもいないよ」
「そうかい……。チャル。お腹は空いたかい?」
「うん!……でもお金無いの」
「カカカ。ついておいで……。良い所がある……」
薄暗い家々の間の細道で私に声を掛けて来たチャルは、まだ七つにも為っていない童じゃった。
目玉のクリッとしためんこい顔付きだったのじゃが、地母神様の様な金色の美しい髪なのに、長い間洗っておらない様子で、ボサボサ。身体もヒョロッとしいて、肌も良く黒ずんでおった。
そして、それはチャルに限った話では無く、そんな童がゴロゴロろ小石の様に、そこら辺に転がっておった。
私はそんな子供達を救う為に、ここへと地母神様から使わせられたのだろうと思ったのじゃった。
私は、もしもこう言う事が起きた場合に備えて、事前に町の外の森や川や山を見て回っておった。
するとどうじゃ、たまげた事に、そこは手つかずの食い物だらけじゃった。
村一つ一年は十分に暮らせる程の果実や山菜がそこら中にあったのじゃ。そして野ウサギや猪や鹿等の動物も住み着いているから。狩りをすれば、更に食糧が増える。ウサギであれば、子供でも十分捕まえられるのじゃからな。
その時は、子供達が食うに困る意味が解らぬかった。
しかし……。チャルと道中話して見てやっとその意味が解ったのじゃ。
「狩りって……。どうするの?」
「え!草を食べるの!?」
「お魚ってどうやって捕るの?」
「えぇ!この木の実って食べられるんだ!うわぁ!甘くて美味しい!」
子供達は、何も知らぬのだ。
親が無ければ、捨て猫同然。
物が無ければ盗む。物でも知識でも何でも盗む。生きる為に必死に働くそして何をしてでも飯を食う……。
その中には、自然と生きる。と言う選択肢が無いのじゃった。
「どうじゃ、これで腹の心配はせんで良くなったのう?」
「うん!ありがとうお婆ちゃん!お婆ちゃんは私の神様だわ!」
「や、やめれい!バチが当たるわ!私はただのババアだよ!」
「アハハ!でも、本当にありがとう!お婆ちゃん!」
「カカカ。どういたしまして……」
それから、しばらくは二人で過ごした。
チャルに狩りを教え、釣りを教え、山菜や果実の取り方や、動物の捌き方、食べ方などを教え暮らした。
「さてとそろそろ、小屋でも建てようかね……」
深い森の中とは言っても、雨が降れば大きな木の下にいても多少は濡れる。私は大丈夫だが、チャルには厳しいと思ったのじゃ。
「小屋!?……それって建てられるの!?」
「勿論じゃ……。しかし人手がいるんじゃが……」
「解った!町の皆を呼んで来るね!」
森の野営地を飛び出したチャルは、一目散に森を飛び出し、町へと走って行った。
そして、町から親の無い小童達を呼んで来おった。
その数総勢二十人。大小、男女あれども皆が十歳程度の小童じゃった。
その小童達に、チャルが私の指示通りに食事を与え、そして小屋を造る手伝いをさせた。
ノコギリや釘などは、町のゴミ箱で拾った物や、町で山菜や果実を売って作った金で買い揃えた。
食事を与えたお陰か、小童達の働きは良く一週間程で、五つの小屋が建った。
床は砂利の上に板を引いただけの物じゃが、雨風凌げれば良い。その内山菜や果実を売った金で布団等を買えば良いじゃろう。こうして、子供達の村が森の中に出来たのじゃ。
そして、小屋を建ててしまえば、そこからは早かった。
果実や山菜。動物の肉や魚を町で売り。小屋を家に増築した。
時々野党に村が襲われたが、木刀を使った戦術を真面目に習得していた小童達は、怯む事無く立ち向かい毎度毎度勝利していた。
小童達は、自然の中で熊や猪を追い掛けるのじゃから、勝って当然と言えば当然じゃったんじゃ、そこらの野党になど負ける訳が無かったんじゃな。
そしてたまげた事に、一飛びで木の枝に飛び乗る小童までおった。
そうだ、あれにもたまげたな……。チャルが手から火の玉を出したんじゃ。目が飛び出るかと思ったわい。
魔法と言う力らしいが、私はそれを妖術か何かの類いの物だと理解した。
しかし、魔法とは凄く面白い物でな!火も出るし、水も出るし、風も土も出る。格好の遊び道具じゃった。
戦いで使う物らしかったが、生活に魔法を使う方が便利じゃったな。
たき火も、水浴びも、家の土台作りも、洗濯物や髪の毛の乾かしも、全部魔法で出来るんじゃからのう。面白かったぞ。
そして、チャルと出会ってから、数年が過ぎると、小屋の集まりだった村は、大人の浮浪人達も集まり。立派な村へと変わった。
町のリーダーは、勿論。チャルじゃった。
「名前はね、タエノ村にするんだ!」
「や、やめれい!そりゃ恥ずかしい!」
「やだよ!お婆ちゃんがいたから出来た村なんだから!」
恥ずかしかったが、嬉しかったぞ……。
小童達や、村の人々達の笑顔を見ていたら、地母神様の命を果たせたと思えた。
心残りがあるとすれば……チャルにお別れを出来ん事じゃったな……。
「……嘘くさい話じゃっけど、それを見ると信じるしか無いかのう……。取り敢えずもう二度とあの山に一人で行かないでくれよ!母ちゃん!」
「そうですよお母さん……。私達はお母さんを乳母捨て山になんかやりたくありませんからね……。食物は、無いけれど……一緒に乗り越えましょう……」
「そうじゃな……。すまなんだな……。一緒に乗り越えようやな……」
本当に私の息子は、良い嫁御に恵まれた物だ。
私が意識を失って夢を見ておったのは三日程だったらしい。目が覚めたら家の中じゃった。
しかし楽しい夢じゃった。
そうそう、目が覚めたら、チャルが使っておった魔法と言う妖術が使える様になっておったので、都に向かい、私は旅芸人として金を稼いだのじゃ。いっつも満員御礼でな、毎日米を買って、篭で村へと戻れる程じゃった。
それもそのはず、たまげた事に私の姿も小童の時の姿に戻っておったのじゃからな!私の小さな頃は、お主に負けぬ程に愛くるしい物じゃったのだぞ?カカカ。
白粉を塗ってチョイっと紅を塗れば、そこらの男などイチコロじゃったわ。
そいでな、その後は、その稼いだ金を使い。村を立て直したんじゃ。
カカカ。私の魔法と美貌を見る為に、殿様がワザワザ江戸から来る程に、私の人気は凄かったんじゃぞ?凄いじゃろ?村にそのまま住む人間もおってな、どんどんと村は豊かになったんじゃ。
「チャルは元気にしとるか?……私は元気にしとるぞ……」
乳母捨て山には、嫁と息子から一人で行くなと言われたけどさ……。やっぱり来てしまうよ……。
チャル。そっちはどう?そろそろ、村から町になった?それとも国にでもなった?こっちは飛脚も何もかも無くなって、車が空を飛んでるよ。人の代わりにロボットが街を歩いているわ。
地母神様……。願いを叶えてもらっておいて、何なんだけどさ……。チクッと私の人生……長すぎやしませんかね?
子供達を救おうにも……子供どころか……もうすぐ人間自体が居なくなりそうです……。
代償も無しに願いを叶えてくれる神様がいると良いですねw
お婆ちゃんは生涯をかけて、子供達を救ったのでしょうが、結果……。乳母捨て山に行く度に彼女は何を思ったのでしょうね?
少しは神様の気持ちが解ったのでは無いのでしょうか?w
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。
『★★★★★』で……ダビマンが喜び頑張りますw




