表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/49

★番外編・フローとアルとテイマーと その2

◇潮流◇



 アリスミー殿下は生徒会室の黒板に、いきなり地図みたいなものを描きました。

 多分、地図、ですよね。

 殿下にも、苦手なものがあるのね。


「留学生のビスタフ君。挨拶は済んだ?」

「はい」


 生徒会室内のメンバーが、其々頷いているのを確認した殿下はお話を始めます。


「ビスタフのシャギアス語、上手いだろ?」


 ビスタフさんは頭を掻きます。


「だって、わたしが教えたんだもーん」

「「「「ええええ!!」」」」


「嘘クサイ……」


 ぼそっとメジオンが呟きます。


「いつ、どこで教えられたのですか?」


 恐る恐る私は訊きます。


「ふふふ。良い質問だ、フロー嬢。そのために地図まで描いたからな」


 ああ、やはり地図だったのね。


「シャギアスの領海内に、シャワラン島っていうのがある」

「アリッシーの持ち物ね」


 へええ。

 王族になると、島を保有できるのですか。


「シャギアスでは唯一、魔獣が生息する場所でな」

「え、じゃあ、シャギアスではない、別の大地から、分離した島ですか?」


 さすがヴィラさん。バリバリ理系の思考回路です。


「いや、以前アルに調べてもらったが、土壌的にはシャギアスと同じだった」


「では、自然に発生?」

「メジオン君。魔獣が自然に発生したら、コワイよ、それは」


 殿下は軽口をたたきながら、黒板に描いた地図の下方に、青い線を引きました。


「潮だ」


「「「「潮!?」」」」


「遥か遠く、西方から東へ向かって流れる潮流が、魔獣を運んで来たと、わたしは思っている」

「その根拠は?」


 ヴィラさんの質問には、ビスタフさんが答えます。


「根拠は、俺です。

俺は、子どもの頃、木の舟でシャギアスに流れ着いたんだ。遠い遠い、西の果ての国から」



 えええええ!!!

 私は心の中で叫んでいました。

 きっと、他の人たちも同じだったでしょう。


 でも、なぜ木の舟?

 遭難とか、漂流とか、そんな感じでしょうか。


「わたしは九歳の時にシャワラン島を所有し、時々一人で釣りに行っていたのだ」


 殿下が遠くを見るような目つきになりました。


「ある日、木の舟が砂浜に打ちあがっていた。見に行くと、自分と同じくらいの年齢と思われる、少年が一人、舟でのびていたのだ」


 殿下はその少年を起こし、水を飲ませたそうです。

 それが、ビスタフさんだったのですか。


「そうそう。なんか思いきり殴られたような気がしますよ、殿下。目が覚めた時、頬が腫れてましたから」


 ビスタフさんは笑います。


「気にするな、些細なことだ。ともあれ、起こしたのは良いが、言葉が全く通じなくてな」

 

 殿下は、周辺五か国の言語なら、読み書きまで出来るのでしたね。


「結局、わたしが知っている限りの、三十か国ぐらいの言葉で挨拶をしてみたら、一つだけ反応があった」

「それが西方の国の……」


 アルバスト先輩は、その頃の事情、きっと少しご存知なのですね。


「で、面倒なので、シャギアス語をたくさん教えて、ビスタフに覚えてもらった」


「でも、なんで、木の舟で、流れて来たんです?」


 メジオンの疑問、もっともです。


「命を守ろうとした、それだけです」

「舟で漂流することが? 命を、守る?」


 思わず私、声が出ました。


「ええ。俺の国は、ある日突然、滅ぼされたのですよ」


 私も、同じ室内にいた他の人も、冷たい空気を吸い込みました。


「滅ぼされた? 国が、丸ごと?」


「はい。魔獣の軍団を率いる、北の戦闘種族に」


 春の雷が、何処かに落ちました。




殿下が描いた地図(あとでパリトワが清書したもの)

挿絵(By みてみん)

縄文時代あたりでも、木のちっこい舟で、結構遠くまでたどり着いたそうです。

いつもお読みくださいまして、ありがとうございます!!

感想や評価、大変励まされています。

必ず返信いたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] えーーー!?!?!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ