男子会。女子は立入禁止。
男子会のお話です。
下品だったら、ごめんなさい。
side メジオン
学園でのパーティは、アクシデントがあったものの、盛況のうちに終了した。
と、俺は思う。
貴族階級のパーティは、どうやったら収益が出るのかを試算しながら俺は参加した。
そもそも、うっすい爵位はあるものの、俺の家は元々平民。しかし、商売人の誇り高き一族だ。
俺もその血が濃い。
学園に入った目的は、人脈作りだ。
俺には縁がないと思っていた、生徒会の執行部員になぜか抜擢され、中等部と高等部のハイソなメンバーと顔を合わせる機会が増えた。
女子もいるので、それなりに楽しい。
今、俺はその生徒会室にいる。
パーティが終わってお疲れさんの慰労会をやっている。
男三人で。
俺以外の二人は有名人かつ、国内でも最上位の身分の持ち主だ。
一人は第一王子。
もう一人は公爵子息。
普通に市井だけで生活していたら、滅多に顔を見ることもなかっただろう人たち。
「はあ、よっこいしょっと」
王子が変な掛け声と共に、生徒会室の机の上に座りこむ。
真面目な表情をしていると、王家特有の美形な王子なんだが……。
王子とか殿下って呼ぶと、嫌がるんだ、この人。
しかし、アリスミー様と呼ぶのも不敬じゃないかな。
「おや、こんなところに揚げた鳥肉が!」
「余ったものを、こっそり持ってきました」
「さすが、メジオン!」
そう言うと、王子は素手で、パーティ会場の余りものを食べ始めた。
流石に食べ方は綺麗だが、しかし素手で掴むか、王子が。
王子の横に立つ公爵子息も、黙々と野菜スティックを食べている。
黙っていれば超イケメンの、アルバスト公爵子息。
その実体は、単なる虫オタクだと知った時は俺も驚いた。
「アル、お前、肉より野菜ばっか食べてて、なんでそんなに背が高いの?」
王子は肉を頬張りながら、アル先輩に訊く。
「さあ? 父もだけど、母は女性としては、身長高いからじゃない? あ、肉も食べてるよ、それなりに」
「そうか。やはり妃は、子孫のことまで考えて選ばないといかんな。身長重要! 長い脚ステキ!」
「この前は胸って言ってたじゃん」
「それはデフォ」
幼馴染だという二人は仲がいい。
この二人と、王子の婚約者のパリトワ様が、生徒会を握っている。
「いやあ、男だけってのは、気楽でいいなあ」
「女人禁制のバー作ったの、メジオンの父上だったよね」
「あはは、そうですよ」
アル先輩の問いに答えながら、『父上』ってガラじゃない親父の顔を思い出す。
「よく、貴族の方々に頼まれたそうですよ。女性の目を気にせず、馬鹿話が出来る店はないかって」
「なるほど。気持ちは分かるな。メジオン。今度、わたしも連れていってくれ、」
俺は内心「うげっ」となったが、そこは商売人なので「喜んで」と答える。
「ドロート子爵も、メジオンの店の常連なんだよね」
「はい。ひと月に一回か二回は、立ち寄っているそうです」
「で、メジオンが接待したんだっけ」
「注文取って、グラスを出しただけですよ」
「どんな感じだった?」
訊いてくるアル先輩の目は真剣だ。
そもそも今回の計画は、アル先輩がドロート子爵夫人から、お嬢さんであるフローナのことを頼まれたことから始まった。
自己肯定感がやや低いフローナ嬢は、実の父親のドロート子爵から、誉められたり可愛がられたりした体験が少ない(というか、ない)そうだ。
その代わりというか、子爵はご自分の妹と、その娘を溺愛している。
子爵の妹さんは、かつては「妖精姫」と讃えられるほどの美女だった。
しかし、今は見る影もない。
だが、子爵の目には、妹さんは、今も妖精のように映っているようだ。
その子爵の、認知の歪みを糺すために、生徒会役員が一肌脱いだ。
まずは、俺の父の店を使い、子爵が来店したら貸し切り状態にする。
そして、「昔の美人も加齢により劣化する」ことを、やんわりと第三者から伝える。
ここまでが第一弾。
店内で子爵に声をかける第三者の役は、俺の親父にやってもらった。
「店では大人しくしていました。知らない相手からの情報は、割と素直に聞いたみたいです」
そして表彰式とパーティに、子爵とその妹が来ることは分かっていたので、パーティ会場で次の矢を放つことになった。
前提として、フローナが今までよりずっと、美しく見えること。
でも、フローナってよく見ると整った顔してるし、プロポーション悪くないから、俺は心配してなかった。
結構好みなんだけどね、彼女。頭良いし。
まあ、アル先輩に悪いから黙っているけど。
アル先輩はいつもフローナの後姿を目で追っている。
その場に虫がいなければ。
予想通り、高位貴族のお姉さまたちが用意した、上質なドレスを着たフローナは、いつにも増して愛らしかった。
ドレスに魅入られたように現れたフローナの叔母は、妖精ではなく妖怪みたいだった。
ここで、トドメの妖精召喚。
生徒会のラリア先輩がドロート子爵に近づく。『妖精姫』という存在が、子爵の中で上書きされれば、子爵の妹を見る目の曇りが晴れるかもしれない。
「上手くいったかな。子爵がフローに優しくなってると良いけど」
アル先輩は、根菜のスティックをパリパリ齧りながら心配顔だ。
なんとなく、馬みたい。
「子爵だと、陛下や王妃に直で会うことって少ないからな。わたしも今まで、名前しか知らなかったし。ああ、子爵の妹御の配偶者であるグロリアス伯爵は、宮殿内でたまに見かけるが」
そういうセリフを聞くと、ああ、この人は王族なんだなという気になる。
「フローが領地に戻って落ち着いた頃、俺行ってみるよ。プラウディ子爵領と西側の国境付近の見分も必要だし」
「そうだったな。では、アルへの景気づけに一発!」
躊躇うことなく、王子は放屁した。
一発の意味、違うじゃん。
そして掌で炎を作ると、それを尻にかざす。
「見よ! 屁は燃やすと、青い炎になるのだ!」
大丈夫か。この国の未来は。
ドロート領でのフローナとステアは、今どうしているのでしょう。
アルバスト先輩は、何を調べているのでしょうか。
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