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【NTR+裏切り≠ぼっち】捨てられた俺は、騙され搾取されていた君と、友達から始めました。  作者: いな@
第二章

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第86話 Aランクダンジョンは……

「ほええええええ! お姉ちゃんコレ凄いのです!」


「は、はは……、そりゃ、見てのお楽しみって言うわけだよ」


「でしょ? 今日はサバンナのようですね。ほら、あそこにシマウマがいますよ」


 Sランク候補の子を見たあと、学園内にあるAランクダンジョンにやって来た。


 階段を下りて一階層に足を踏み入れて見えてきたのはフィールドタイプのダンジョンだった。


「ここは世界的にも珍しいとされるダンジョンで日によって様相がガラリと変わります」


 言った通り、一階層だけらしいけど、今日のサバンナであったり、万里の長城やナイアガラの滝だったりするそうだ。


「シオリ、あのシマウマとか野生の動物は襲ってくるのか?」


「いえ、アレは生きてません。いわゆるダンジョンの置物と言ったらいいのでしょうか、触ることもできますし、暖かさも感じますが、それだけです」


「ダンジョンの置物、か。見た感じは本物にしか見えないのにな」


「レイ! お姉ちゃん! こんな子いたのです!」


 いつのまに離れていたのか、シオンがなにかを抱えて走ってくる。


「なっ!」


 そのシオンの後ろからたぶんチーターの親らしきものが追いかけて来てる。


「シオン! その子を返して上げなさい!」


「ぬ? ぬおっ! 追いかけてきてるですよ!」


「当たり前だろ! 返してやるんだ!」


 言ってる間に、ズザザと俺たちの真ん前にシオンが帰ってきてしまった。


「シオン、危ないから貸して。俺が返すから」


 チーターの子をシオンから受け取り、そ~っとしゃがむ。


『みゃう?』


 子チーターはなんだ? って顔で鳴く。チーターって猫と同じ鳴き声なんだ……ってか可愛いしふわふわだぞ……。


 っ! だ、駄目だ! 返さなきゃ駄目だろ!


「ごめんな、返すから怒らないでくれよ……」


 ゆっくりと子チーターを地面におろし、そ~っと脇に通していた手を抜いて手を引っ込める。


 コテっと首をかしげたあと、俺と親チーターの顔を交互に見てから、ちょこちょこと親チーターのところに戻っていった。


 ほっ、毛繕いしてる。怒ってはなさそうだ……え? その場でおっぱいあげるの?


「おお~、木にもたれておっぱいあげるのですよ」


「他に子供がいないのかもしれませね。普段でしたらこんなに近くで見れるなんてありませんわ」


 三メートルも離れていないところで親チーターは横になり、チビちゃんがお腹に突っ込んでいく。


「はは。俺たちのことはまったく気になってないみたいだな」


「ええ。ここの一階層にもモンスターは出るのですが、戦ってる真横でゆったりと草を食べるシマウマもいますから、そういうものかも知れませんね」


「ほへ~、美味しいのです? わたしにも飲ませて――ぐえっ」


「止めておこうな」


 四つん這いになり、チーターのおっぱいに向かおうとしていたシオンの襟首を掴み、止めておく。


 そりゃ俺もちょっと気にはなるけど、今はそれどころじゃない。


「ほらシオン。オークがこっちに向かってらから、戦闘準備をしような」


 まだ距離的に余裕はあるけど、向こうもこちらに気がついているようだし、気持ちを切りかえなきゃな。


 シオンの脇に手を入れて立たせる……力を抜いてぶら~んとうなだれてる……。


「ぶー」


「ぶーじゃありません。今日から三日でここを攻略する予定なんですからね」


「そうだぞ。今日は五十階層まで行くんだからな。ほら、ちゃんと立って。Aランクダンジョンの一匹目はシオンが倒していいからさ」


「仕方がないのです。楽しみを邪魔するオークはほーむらんでぶっ飛ばすですよ」


 チーターの子を抱っこするために、魔法の鞄にしまってあったであろうフレイルを取り出すシオン。


 ……ダンジョン内はしまっちゃ駄目だろ……後で説教だな。


「とりあえず一匹か? いや、あっちからも来そうだな、って来るみたいだ」


「ええ。フィールドタイプのダンジョンはそれがあるので、警戒は全方位に気を遣わなくては駄目ですからね」


 別の方向からもオークが近づいてくる。シオンが迎え撃つ方が断然近くまで来ているからこっちは俺がもらおうかな。


「なあシオリ――」


「ふふ、レイが倒していいですわよ。私はここのダンジョンで何度も倒していますから」


「ありがとう。よっし。さっさと倒してしまうか!」


「私も行くですよ! こっの、おじゃま虫!」


 腰から剣を引き抜き、迎え撃つ。シオンはすでに打撃の姿勢に入った――


「ほーむらん! なのです!」


 ドゴン――と、振り下ろされるこん棒より早く間合いに入り込み、フレイルを振り切った。


 オークは体をくの字に曲げて吹き飛び、落ちる前に黒い煙に変わった。


 視界の端でシオンの戦いを見ながら俺も横薙に振ってきたこん棒をワンハンドソードで上方向に受け流し――


 ギャリ――


「はっ!」


 ザシュ! と胴体を上下に分ける勢いで切り裂くと、ドサリと落ちた上半身。下半身は数歩歩いたあと一緒に黒い煙になって消えていった。


「よし。問題ないな。ドロップは魔石だけか」


「こっちも魔石だけなのです。おじゃま虫なのにお肉も落とさないとか、ダメダメなのです」


「ほらほらシオン。ここはしばらくオークも出ますから、そのうち出ますわよ」


「スーパーで焼肉のたれも買ったんだから、頑張って倒していこう」


「焼き肉食べ放題のためにお姉ちゃん。……どっちに向かえばいいのです?」


「六十三階層まではスマホのマップがあるでしょ? 方角もわかるんだからやってみなさい」


「あ、それ、俺がやってもいいか? 試験のときは二人でやってただろ?」


「やってたのです。だから案内係はレイに任せるですよ」


「じゃあ道案内はお願いしますわ」


「ありがとう。え~っと、ここが入口だから方角は……あっちだな。体をあたためるために軽く走りながら行こうか」


「ええ。次は私の番ですから、そうしましょう」


「走るです!」


 サバンナの風景を楽しみながら、俺たちのAランクダンジョン攻略が始まった。

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