第63話 山本凛の誤算(主人公+山本先輩視点)
side山本先輩
『凛様。プライベートジェットの準備が整ったと連絡が入りました』
あら、思ったより早かったわね。
『二葉様もすでに格納庫までは運び込んでありますが……いかがなさいますか?』
「二葉ちゃんか……そうね、乗せておいて、向こうで役に立たなければ脂ぎった親父にでも売れば多少は役に立つでしょう」
『ではそう連絡いれておきます』
「じゃあ、後ろの聖一くんとはそろそろお別れね。モニターに映してくれるかしら」
『はい。三番モニター、少々画像は荒いのですが映します。それと、あと五分少々でヘリポート上空百メートルに到着いたしますので、どうぞお楽しみください』
「ありがとう」
三番モニターね。別に楽しむ訳じゃないけど、最後の姿くらいは見ておいてあげないと、可哀想じゃない。
痛っ、はあ、痛み止めか何かないかしら。……まああと少しの辛抱ね。飛行機に乗りさえすれば医療品もあるだろうし、あとで聞けばいいか。
えっと、三番モニターは……正面の操縦席背後にあるモニター、それの上側だったわね。
下の二番モニターはヘリの進行方向を映し出しているし。
三番モニターをタップすると後部の部屋のようすと、音声もヘッドフォンから聞こえてきた。
『キヒヒヒヒヒヒヒ! オラオラオラオラ! もっといやらしいい声で鳴きやがれ! イクぞ! 孕ませてやるからな! 受け取れ!』
『痛いぃぃいいいい! いやぁぁぁぁぁあ! 中はやめて! お願いだからぁあああ! 熱っ! もうやだぁぁぁ! あ、ああ……入ってきたぁ……また入ってきたぁぁぁぁぁぁあっ――』
『クソ女ぁ! そこは気持ちいいだろーがよ! オラ、まだまだガチガチだからしっかり俺様のチ○ポをシメやがれ! ……あん? 気絶しやがったか……』
無茶苦茶ね。それに追加のかくりよも自分で投与したみたいだわ。また目の色がゴブリンみたいに真っ赤になってるし。
あら? ふふ、女にも使う気なのね、あと、五分も無いから間に合うかな。あ、そういえば聖一くんは早漏って言ってたわね。なら大丈夫かな。
気絶した全裸の女を、すでに気絶して床に寝そべる女の上に放り捨て、部屋の隅で震えている三人目女に向かう聖一くん。その手には無針注射器が握られている。
あーあ、打たれちゃったわ、可哀想に。その薬は凄く気持ちよくなるけど、それは聖一くん用で濃縮してあるから確実に死んじゃうのよね。
『え? あぁ? な に こ れ き も ち い い あはは あははははは』
へえ。十秒足らずで効くんだ。速効性も性能上がってるわね、あとは後遺症がでないようにすれば大ヒット間違いなしよ。
男性は年齢で役に立たなくなった物にも効くし、不感症の女性も、ただ単に楽しみたい者たちだって顧客になるわ。
手始めに東アジアで市場調査を始めればいいかな。ほぼ容姿は変えなくてもいくらでも紛れ込めるだろうし。
『うおぉぉおおお! 連続二発目食らいやがれ!』
え? もう二発目なの? ……二葉ちゃん、よくこんなので満足してたわね。まあ、経験のない私ではよくわからないけど。
『アガガガガガガガ――イグッイグッイグッイグッイグッ』
あーあ。完全にキマっちゃってるわ。まあ苦しまず、気持ちいいまま逝けるでしょうから許してあげてね。
『ヘリポート上空に到着しまします』
「あらそう。なら、さっさと下ろして差し上げなさい。ちょうど二人とも絶頂しているみたいだし」
立ち上がったまま女性のひざ裏に手を回して持ち上げ、まるでおもちゃか何かのように上下にふっている。
『ではカウント始めます……3 2 1 投下』
ガタンとヘリが揺れ、ゴーと風の音がヘッドフォンから聞こえてきた。
ふふっ。じゃあね、聖一くん。
『投下完了。ハッチが閉まるまで少々揺れますがお許しを。このまま格納庫へ急ぎます。一分で着陸。五分後には滑走路に向けて移動します』
「そうなのね、じゃあ走らないと駄目ね、骨折しているからあまり走りたくはないんだけど」
『それでしたら痛み止めが座席の下にある救急箱に麻酔薬があるはずです』
座席の下……コレ、かな? というかあるなら乗ってすぐに言いなさいよ。
このパイロットの子は二葉ちゃんが駄目だった時、一緒に売り払ってやるわ。
座席の下から箱を引っ張り出すと、赤十字のマークが入っていた。
これね。包帯、消毒液、これは使いましょう。これは酔い止め……か、必要ないわ。
消毒液を肩の怪我にふりかけながら、無針注射器タイプの【麻酔薬】と書かれた者を見つけた。
『ありましたでしょうか? あと、三十秒で着陸いたします』
「あったわ。こんなのあるなら早か言いなさいよ! 今からすぐ射つから事故の無いように着陸しなさい! いいわね!」
『……はい』
無針注射器の入った個梱包を破って開け、折れた右腕の肩に押し付けて注射を射った。
あれ? そういえば、さっきの女性たち、どこか見覚えがあるような……っ!
え? 嘘っ、最初に倒れていた子も、二番目の子も、それに最後にヤられていた子は幹部に上げてあげると言った子よね……。なぜ?
「ちょっろ! ろうゆうこちょよ! せちゅめい……」
あ、れ、舌が……それ、に、クラクラ、す、る、コレ、麻酔、効き、す……ぎよ、ね……む…………。
『成瀬聖一及び山本凛の共犯三名のヘリポート上空での投下完了。確保願います。山本凛が麻酔薬を打ち寝たのを確認いたしました。小牧基地に戻ります』
『ご苦労。ヘリポートは我々と高橋様が待機しているから安心しろ』
な……に…………うそ……だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
sideレイ
高橋さんが持つ無線機から――
『ではカウント始めます……3 2 1 投下』
――と、聞こえた。ヘリがゆっくりと低い高度でこちらに飛んできて、エアクッションの少し手前でハッチを開けた。
「来ますよ! クッションで受け止めますから女性三名はみんなで確保! 成瀬聖一くんは、任せていいんだねレイくん!」
ヘリポートについた時。自衛隊がすでに大きなエアクッションが設置して、聖一と山本先輩二人の捕縛のために集まっていた。
エアクッションに聖一を落とし、俺たちが取り押さえる作戦だ。
「はい! 任せて下さい!」
読んでいただきありがとうございます。
ブクマや★★★★★で応援よろしくお願いいたします。




