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【NTR+裏切り≠ぼっち】捨てられた俺は、騙され搾取されていた君と、友達から始めました。  作者: いな@
第一章

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第35話 決着

 sideシオン


「早く! 早く行くです!」


「待ちなさいシオンちゃん。まずはお姉さんにこれを飲ませないと駄目でしょ?」


「うぅー、お姉ちゃん早く飲んで! キングとクイーンが!」


 岡間室長さんが、持ってきてくれた上級回復薬の瓶に口をつけて一気に飲み干すお姉ちゃん。


 研究所に戻ったら届いてたらしいけど、今はそれより急がないと駄目なのです。


 真っ黒スーツのおじさんたちがダンジョンから逃げ出てきたところを捕まえた。わたしが!


 それで問題が満載なのです。


 凄く大きなゴブリン。キングとクイーンが出たって言うんです。タマちゃんどころかレイも大ピンチなのですよ。


 急いでダンジョンに向かおうとしたわたしをお姉ちゃんに止められている時、岡間室長さんや、アパートの管理人さんが来たのです。


 なんだかんだでその後に駄菓子屋の襲撃で見た、えっと、高橋のおじさんが来て、静かだったダンジョン前が一気に賑やかすぎです。


「ふふ、ちゃんと動きますわ! これなら一方的に足を引っ張ることもありませんのよ! シオン! 行きますわよ!」


「はいです! さっきからずっと待ってたのです!」


「ちょっ! 待ちなさいあなたたち! 状況を説明――」


 後ろで誰かが呼ぶ声……気のせいです。


「こらシオン! 下ろしなさい! 私も走れますから!」


「駄目です! わたしの方が速いのです。お姉ちゃんは大人しくわたしに抱っこされてればいいの! 行くですよ! 身体凶化!」


「ひっ! ひやぁああああああー! 速っ! 速っ! 速すぎですわぁあああああ!」


 うるさいお姉ちゃんですね。今はそれどころじゃないって言うのに、困ったお姉ちゃんです。







「階段ですわ!」


「お姉ちゃん、しっかり掴まっておくですよ! 階段飛ばし、記録に挑戦するのです!」


「へ?」


「たあ!」


 最高記録、五段飛ばしを余裕で越え、たぶん十段は抜かせた。でもまだまだ行けるのです。


「ほい!」


「ひい!」


 斜め下に向かって、階段の立ち上がり部分を蹴る。お姉ちゃんが強く掴まってくるから少し苦しいですが、五歩で――


「三階層! に! 到着! です!」


 着地も十点満点。……大きい狐さんが大きいゴブリンさんと戦ってます。レイは? タマちゃんは?


「レイ! いたです! お姉ちゃん邪魔!」


「ひい!」


 急に邪魔に思えてきたお姉ちゃんを投げ捨て、緑の大きな手の下にいるレイのことろに到着です。


「レイ! この手、邪魔! ふんぬ! レイ!」




 ち、血まみれなのです……レイ……そうです! 十万円の回復薬!


 ウエストポーチから体力の回復薬を取り出して蓋を投げ捨てレイの口に持っていったのに、飲んでくれない!


「レイ! 回復薬飲むです! 口開けて! 死んじゃうのですよ!」


「バカシオン! なにするのですか! それに怪我してるのにそんなに揺すっちゃ駄目ですわ!」


「でもでも飲んで……そうです! あの手が使えるのです! んくっ」


 行くですよレイ! 飲むです!





 sideレイ


「かはっ!」


 息が吸える。


 肺に新鮮な空気が満たされる。


 痛みが引き潮のように引いていく。


 痺れが消え去り、体の上にのし掛かっている聖一の手の感触が無くなっているのがわかる。


「ひゅー、はぁー」


 こぶしを握る力も戻ってきた。


「すぅ……んむっ!」


 それに柔らかいものが口に当たってる。なんだろう。凄く幸せな気持ちに……ずっとこのままいたくなる。


 …………ん? うっすら目が開いたのに、目の前が肌色だ。それに少し汗の匂い。最近かいだあの懐かしくも優しい匂いだ。


 シオンの匂い。……これ、……シオン? 目の前がシオンで、口に柔らかい物? 俺に何をっ!


「ぷはー。もー一本行くですよ!」


 シオンがキス……でもこの味は回復薬の味。そうか、口移しで……。キ、キスしちゃったよ!


「ま、待ちなさいシオン! つ、次は私が!」


 え? シオンが取り出した回復をお姉さんが取りあげてどうするつもりですか! もしかしてお姉さんも俺にキス!


「あ、目が開いたです。お姉ちゃん残念でしたね。レイ?……気がついたですか? 心配したですよ?」


「あ、ああごめん、心配かけちゃったね」


 よい――しょっ――。


 よし、起きあがれた。どこも……折れてもないし、曲がってない。体もちょっと血が足りないからか、怠さがあるけど戦える。


「ありがとう二人とも」


「どういたしましてです。それよりタマちゃんが――」


 そうだ。タマちゃんがまだ戦っている。


 ちゃんと最後まで受け持った役割を果たさなきゃ!


「もう油断なんかしない。タマちゃんごめん! 聖一。行くぞ! 身体強化! ダブル!」


 素早く立ち上がり、タマちゃんと戦ってる聖一に向け、床を思い切り蹴った。






 それからはあっけなかった。まず右腕を肩の付け根から切り飛ばし、返す勢いのまま、右足の付け根を切り飛ばした。


 倒れる聖一に追い討ちをかけ、左腕の二の腕付近を魔法で吹き飛ばすタマちゃん。


 最後は左足も俺が膝下を切り飛ばした。


「ふう。よくやったのじゃ。レイ、こやつの手足は体から離しておくのじゃ。まかり間違ってくっつかれては難儀なのでな」


「うん。そうだね。元に戻す直前にくっつければいいように、まとめて置いておくよ」


 あっ、聖一の左腕が無いや……、でも元に戻れるんだからそこは許してもらおう。

 読んでいただきありがとうございます。


 ブクマや★★★★★で応援よろしくお願いいたします。

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