22章:ヴァリアントスレイヤー(6) SIDE 由依
SIDE 由依
『もう少しだ! がんばってくれ!』
はっきり聞こえる! カズの声が!
「帰ってきて! お兄ちゃん!」
魔法陣の魔力が弾けた瞬間――
バリイイイインッ!
鼓膜が破れるのではないかというほどけたたましい音とともに、空間が砕け散った。
光に目が灼かれる。
視界が戻り始めると、そこには気絶した双葉ちゃんを抱きとめるカズの姿があった。
「カズ……!」
今すぐにでも駆け寄りたいけど、体が動かない。
「由依、みんな、ドジっちまってごめんな。あと、ありがとう」
ああ……いつものカズだ。
カズが帰ってきた!
双葉ちゃんをそっと床に下ろしたカズは、膝をついている私の肩に触れた。
温かい魔力が流れ込んで来る……。
無理をした影響で体はまだ動かないけれど、少し休めばなんとかなりそうだ。
頭がはっきりしてきて気付いたが、周囲は100を超えるヴァリアントに囲まれている。
神域絶界の外で待ち構えていたということか。
「ちょっと待っててくれ」
カズはそんなヴァリアント達のことなど全く気にならないそぶりで、他のみんなの所へと向かい、順番に肩へと触れ、魔力を渡していく。
「美海、助かったよ」
「うん……こんどお部屋に行くね……」
いきなり何言ってんの!
神器の影響だとしても、ちょっとやりすぎ!
「鬼まつり、来てくれてありがとう」
「はぁはぁ……こんな時くらいちゃんと名前で呼んでくれても……」
うん、呼ばれなくていいね。
「華鈴さん、ありがとう」
「当然……ですわ……」
そこで『当然』と言える貴女だから、付き合ってるんだよ。
「青井さん。赤崎、目覚めたんだな」
「白鳥さんのおかげでな」
青井さんの優しそうな顔……いいなあ。
「冷泉さん……」
「殺して……ヒミコを……」
なんて憎悪にまみれた瞳だろう。
そんな彼女をカズは悲しそうに見つめている。
「由依、状況を教えてくれ」
カズが私の黒タイツに触れながらそう言った。
「それよりカズ……周りが……」
ヴァリアントだらけなんだけど。
「ああ……そうだな」
カズがギロりと睨みつけると、ただそれだけでヴァリアント達は紫の煙となってかき消えた。
「なんか……前より強くなってない?」
「閉じ込められている間にちょっと修行をな」
ただでさえ強かったのに、さらに強くなったってこと?
「それと、神器はちょっと整えておいた。だが、無理はするなよ」
言われてみれば、魔力の流れが以前よりさらにスムーズだ。
「ええと、カズがいなくなってからだけど――」
…………
……
私はカズがいなくなってからの出来事をかいつまんで説明した。
「なるほどな。だいたい予想通りだ……」
カズは私達の周囲に結界を張りながら、説明を聞いていた。
「世界をとりに来たか」
「やっぱりそう思う?」
「これだけおおっぴらに始めておいて、共存なんかで済ますはずがない。おおかた、食料として人間を飼育しつつ、表と裏から世界の主導権を奪っていく気だろう」
「さすがだな」
その時突然、スタジオ内にヒミコの声が響いた。
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