22章:ヴァリアントスレイヤー(2) SIDE 由依
SIDE 由依
◇ ◆ ◇
まず声をかけたのは華鈴さんだ。
「もしもし、華鈴さん?」
『由依さんからお電話いただけるなんて珍しいですわね』
平静を装ってはいるが、嬉しそうな声だ。
「お願いがあるんだけど」
『かまいませんわ!』
「まだ何も言ってないけど!?」
私のこと好きすぎない?
ちょっと引くんだけど……。
『そ、そうですわね。なんですの?』
「カズのことなんだけど……」
『カズ……? いったいどなた……あっ! カズさん! もちろんよろしいですわ!』
「だからまだ何も言ってないってば」
華鈴さんですらカズのことを忘れかけてる?
ヴァリアントが喰った人間に関わる記憶は、人々の中から消えていく。
ヴァリアントは因果律ごと喰うからだ。
カズはまだ喰われたわけではないけれど、神域絶界に長く閉じ込められたせいで、こちらの世界の因果から切り離されかけている。
……と、双葉ちゃんの師匠が言っていたらしい。
急がなきゃ!
◇ ◆ ◇
次は鬼瓦さんに電話をかける。
クラスの電話連絡網から彼女の番号を探す。
『難波がピンチ? よくわかんないけどいいよ! なんでもする!』
彼女にはカズが、ヴァリアントについて口外できない呪いがかけられている。
そのせいもあってかはわからないけれど、まだカズのことを覚えているようだった。
「ありがと。あとで集合日時は知らせるから」
『お礼を言われるよなことなんてないって。まつりと難波の仲だしね』
「んん? なんて?」
『ひっ……』
いやだなあ、そんな怯えた声を出さなくてもいいじゃない。
ちょっと聞き返しただけなのに。
◇ ◆ ◇
声優の冷泉さんには、コンタクトを取る所から苦労した。
電話番号を知っているのはカズだけだったからだ。
仕方なく、白鳥家の力でマネージャーさんに電話をし、取り次いでもらった。
冷泉さんはかなり忙しくされているようだったけど、気にしてなんかいられない。
世界とカズがかかっているのだ。
『ええと……白鳥さん……?』
私の声にも名前にも全くピンと来ていないようだ。
たしかに直接話したりはあまりしていない。
「カズが……難波カズが大変なの!」
『難波さん……? ええと……』
カズの名前でもダメか。
ここで問答をしている暇はない。
「冷泉さん、ごめんね」
『え!? ちょっとあなたたち誰!? うっ……」
今頃冷泉さんは、白鳥家の黒服に拉致されているだろう。
ごめん、後で説明するから。
時間がないんだよ!
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