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【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無双する  作者: 遊野優矢


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19章:かみまい!(1)

 ■ 19章 かみまい! ■


 年越しにはろくな思い出がない。

 転生前は会社の自席で仕事をしながらインスタントそば(付け合せは栄養ドリンク)を食べるのが当たり前だったからな。

 推しVTuberの年越しライブをリアタイできなくて、咽び泣きながら働いたものだ。


 それがどうだろう。

 四人の晴れ着美少女と一緒に、年越し初詣である。

 かなりの人混みだが、誰もが振り返る集団だ。

 金髪巨乳幼馴染、しっかりモノのロリ(義妹)、引っ込み思案系むっつり、銀髪お姉さん。

 これで目立つなという方が無理な話だ。


「ほとんどお祭りね!」


 由依がキラキラした目で、境内に続く道の左右にずらっと並ぶ屋台を見つめている。


「オレも大きな神社の初詣は初めて来たけど、すごいもんだな」


 深夜だというのに、よくもまあこれだけの人が集まるものだ。

 そりゃあ、臨時列車も出るはずである。


「ねえカズ! あれなに!? あれなに!?」


 由依が指差したのは長野名物の「おやき」だ。

 小麦粉の生地に野沢菜などを入れて焼いたものである。

 北海道出身の上司が、おやきを大判焼きのことだと思って話を進め、客先とトラブルになったことを思い出す。

 なお、尻拭いはオレがした。


「屋台は帰りにしてください」


 双葉がピシャリと言う。

 しっかりした義妹である。


「でも袋に入った綿アメならじゃまにならないよね」


 そう言いながらふらふらと綿アメ屋に向かうあたり、テンションが上がっているのかもしれない。


「日本は不思議な国ね。つい先週はクリスマスをして、今日は神道」


 システィーナは興味深そうに周囲を見回している。

 まあ気持ちはわかる。

 日本で育つと、それが当たり前に感じていたが、異世界では結構戸惑ったものだ。


「あ! アニキ!」

「真田じゃないか」


 声をかけてきたのは、いつぞやのリーダーキャンプでなつかれた少年だ。

 双葉のクラスメイトだったはずである。


 となりには両親らしき男女がいる。


「あけましておめでとう」

「お、おう」


 一方の若い二人はそっけない挨拶である。

 双葉は義務をはたしたという感じだが、真田は照れまくりだ。

 両親と一緒の時に、クラスの女子と会うのって恥ずかしいよな。


「あら双葉ちゃんじゃない。またテストトップだったんて? うちの子に勉強教えてやってくれない?」

「か、かーちゃん、よけなこと言うなよ!」


 真田君のお顔は真っ赤である。

 世の母親ってみんなこうなんだろうか。


 双葉はそんなクラスメイトを静かに、そしてかすかに羨ましそうに眺めている。


「あけましておめでとうございます。双葉の兄です。真田君にはいつも双葉がお世話になっております」


 オレは保護者の務めを果たしておく。


「こちらこそお世話になってます。しっかりしたお兄さんですね」


 そう答えたのは父親の方だ。

 優しそうなオヤジさんである。


「双葉の義姐です。うちの双葉がお世話になってます」


 そう言い出したのは由依だ。


「「え?」」


 ほら! 向こうのご両親が困ってるだろ。


「ちょっと由依さん、変なこと言わないでください。あなたの義妹になった覚えはありません」

「いいじゃない。既成事実よ」

「言葉の使い方まちがってませんか」

「やめろやめろ。話がややこしくなる。すみません、ちょっと家庭の事情か複雑で」


 オレの苦しい言い訳に、真田夫妻は苦笑いするしかなかった。


「そういやさっき、山田に会ったぞ。アイツ普段はあんななのに、親とはぐれて半べそかいてたんだぜ」

「助けてあげたの?」

「い、いや……」


 真田はがんばって話題を振ったようだが、見事に空振りをしていた。

 こりゃ双葉の気を引ける日は遠そうだ。


「それじゃあ失礼します。ほらいくよ」


 両親につれていかれる真田は、ほっとしたような名残惜しいような微妙な表情をしていた。

 どうやらまだ双葉のことが好きらしい。

 青春だねえ。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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