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【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無双する  作者: 遊野優矢


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15章:赤のフォーク(4)

◇ ◆ ◇


 パーティでの約束通り、由依、双葉、そしてオレの三人は、六条華鈴の経営する果樹園にやってきた。


「すごい広さ……」


 舗装されていない道に似合わぬリムジンの窓から外を眺めている双葉が、目をきらきらさせている。

 シティガールっぽい雰囲気の妹だが、意外にこういうの好きなんだよな。

 双葉が小さい頃、サクランボ狩りに行った時のことを思い出す。

 木に登って直接サクランボを食べたりしていたな。



「ふふふ。貴女、パーティーの時から思っていましたが、なかなか見る目がありますわね」

「これなら毎日好きな果物が食べられますね」


 こんなに喜ぶなら、ぶどう狩りなんかにも連れてってやればよかったな。


「今日は好きなだけ持ち帰って頂いてかまいませんわ。楽しんで下さいましね」

「わーい! ありがとうございます!」

「あらあら毎日でも来てもらってかまいませんのよ。いっそうちの娘になってもかまいませんわ」


 華鈴さんが双葉の手をぎゅっと握った。

 双葉のヤツ、わざとやってるな。

 由依のライバルになりそうな華鈴さんと仲良くなって、ひっかき回そうというのだろう。


「ちょっと華鈴さん、双葉ちゃんは私の義妹になるのよ?」


 また由依が妙なことを言い出した。


「なりませんよ!?」


 まなじりを釣り上げた双葉がぎゅっとオレの腕に抱きついてくる。


「あらあら、カズを頼っても、お兄ちゃんにくっついてウチにくるのだから無駄よ?」

「お兄ちゃんいつのまにそこまで進んでたの!?」

「落ち着け。からかわれてるだけだ」


 やはり由依の方が一枚上手だ。


「あなた達、本当に仲が良いですわね。羨ましいですわ……」


 華鈴さんがふいに逸らせた瞳には、悲哀が浮かんでいた。

 家族関係では、金持ちなりの苦労があろうのだろう。

 そういえば、パーティーでまともに家族と話すのを見た覚えがない。


 そんな会話をしているうち、土埃だらけになったリムジンは、ログハウスへと到着した。

 ログハウスには、収穫した果実を出荷用に梱包する工場や、トラックを始めとした機材を格納するための巨大な倉庫がある。


「ワインも作っていますのよ」


 さらに工場から少し離れたログハウスには、ワイン工場まであった。


「みなさんが成人されましたらぜひ飲んで頂きたいですわ」


 ワイン工場には、製品のサンプルも置かれている。

 来客用なのであろうサンプル置き場のスペースは、ちょっとした観光地のお土産屋さんのような雰囲気だ。

 そこには、『私がぶどうを踏みました』という文字と共に、ブドウを踏む華鈴さんの写真が飾られていた。


「「「えぇ……」」」


 三人そろって嫌そうな顔で華鈴さんを見る。


「なんですのその顔!? カズさんくらいは喜んでくれてもよろしいんじゃなくて!?」

「なんでさらっとカズのことを名前で呼んでるんですか!」


 おい由依! ツッコムのそこかよ!

 オレが変態扱いされてるのはスルーかな?


「由依さんはいつからそんなツッコミ体質になったんですの!? 兄妹でいらしてるんですからしょうがないでしょう!?」


 友達というのは少し違うのかもしれないが、二人の間には不思議な絆のようなものを感じる。


「なんだかんだ仲良いんだな」

「まあね」

「え……? そん……? あららぁ……? そこは冷たく否定するところではないんですの? やっぱり由依さん、まるで別人ですわ……」


 オレのセリフをすかさず肯定した由依に、華鈴さんは目を白黒させるのだった。

 もしかして、冷たくされたい性癖の人かな?



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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