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【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無双する  作者: 遊野優矢


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12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(17)

「ぬらりひょんよ、『様』はどうした?」


 ヒミコの一言で、その場にいるヴァリアント全員に緊張が走る。

 ぬらりひょんを含めた数名だけが、ヒミコの視線を正面から受け止めた。


「貴女の考えには賛同できんということだ」


 ぬらりひょんはこちらに視線を向ける。


「うぬがナンバカズか。ヒミコと手を組んだということだな」

「そんなつもりはねえよ」


 たしかにヒミコとぬらりひょんの距離より、ヒミコとオレの距離は近い。

 オレは意思表示のため、ゆっくりヒミコから離れる。

 オレ、ぬらりひょん、ヒミコで正三角形を作る形だ。


「そんなにこの人間が怖いか?」


 ヒミコの静かな言葉に、ぬらりひょんの目がギラリと光った。


「その男が多くのヴァリアントを殺しているのは事実。問題の芽は早めに摘んでおくに限る」

「人間ごとき、放っておいてもたいした問題ではないと思わぬか?」

「これほどの大群を出してまで、その人間をかばう貴女が言うことか」

「その方が結果として被害が少なくなると踏んだまで」

「ナンバカズを恐れているのは貴女の方ではないのか?」

「いいや、評価をしているのだよ」

「詭弁だ」

「平行線であるな」


 ヒミコとぬらりひょんの間に魔力が迸る。

 しかし、ヒミコはおもむろに、その身から発していた大量の魔力を収めた。

 ぬらりひょんが眉を潜める。


「ナンバカズよ、妾の誘いを断った以上、お主を助けもせぬ。よいな?」


 なるほどな……。

 やはりしたたかなヤツだ。

 先日の登場は、最初からオレが断ることを見越していたのだろう。

 そうしておけば、戦いに協力せず、オレの敵でもないとアピールできて一石二鳥だ。

 大群を用意したのも、やる気があることのパフォーマンスだろう。

 もしオレが負けた時の残党刈り要員でもあるか。

 

「最初からヴァリアントと取り引きするつもりはない!」


 そう宣言すると同時にオレは、この戦闘区域全体に、不可視の足場を作った。

 無人島でのマラソンで作ったのと同じ原理だ。

 あの時は少し先の足場だけだったが、今回は広大な平面である。

 由依と美海は地上戦の方が得意だからだ。

 空中戦も不可能ではない由依だが、この方が強いのも確かだ。


 オレ達が空中を踏みしめるのを見たヴァリアントの2割近くが、浮遊魔法の加護を自ら離れ、恐る恐るそこへ着地する。


 地上戦が得意なのかもしれないが、敵の作った足場を使うとは、なめてるのか?


 着地したぬらりひょん側のヴァリアント達の足場に、ちょうど通れる程度の穴をあけた。

 そのほとんどが低鬼である。


「「「があぁっ!?」」」


 驚きの声をあげながら落ちた低鬼達は、見えない穴の縁にしがみついている。

 すぐにオレは穴を閉じた。


「「「ぎぇやぁっ!」」」


 悲鳴を上げた低鬼達は、その体を上下に両断された。


「愚かな。所詮は低鬼か」


 ぬらりひょんはそんな低鬼達に一瞥をくれただけだ。

 使い捨ての雑兵程度程度のつもりだったのだろう。


 残りには低鬼もまだいるが、それ以外の連中は自らヒミコに反抗しようという考えとそれなりの能力を持った者達だ。

 ここからが本番である。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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