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第83話 〜“鶯亭”にて〜 佐藤司目線

大変長らくおまたせしました!


小説も無事発売され、学年末テスト(悪夢)も終わり、これでじゃんじゃん更新することが出来ます!






「それで?最終目標は魔王を倒すことだとして、これからどうするんだ?」



人族の大陸、大和の国で留まっていた勇者一行はそろそろ重い腰を上げようとしていた。



「……聞いたところによると、先代の勇者パーティは魔王の元にたどり着く前に魔族や魔物たちによって勇者と獣人族代表以外は倒れてしまったらしい」



それがおよそ百年前。

先代の勇者は雪辱を果たすことができずに寿命で亡くなったそうだ。

今の魔王とその時の魔王は代替わりしていないはずだが、そもそも魔族の寿命がどれくらいなのか誰も知らない。



「それだけ、魔王だけじゃなくて手下も強いってことだよね」



細山さんの言葉に頷いた。



「先代の勇者パーティの実力がどれくらいのものなのかは分からないけど、三大陸から腕利きの者が集められたのは間違いない」


「今の俺たちより強いのは確実だな」



静かに話を聞いていた朝比奈君が呟く。

この数日、冒険者ギルドに登録して依頼を受けていた。


もっとも、迷宮のない大和では受けることができる依頼が限られている上に、冒険者がなかなか立ち寄らないため、弱いが非戦闘民では倒せないような魔物の討伐依頼が山ほどあった。

それを片端から手分けして片付けて、ようやく一息つけるようになった。

だが、ミノタウロスのときみたいに危機に陥るような実力の魔物はここら辺には居ないようだ。


はっきり言って、サランさんやジールさんと比べるとかなり物足りない。

カンティネン迷宮の上層辺りの魔物と同じくらいだ。



「やからって基礎を疎かにするのはあかんよな」



上野さんが腕を組んでうんうんと悩む。

見ると、俺と朝比奈君以外全員が腕を組んで悩んでいた。



「冒険者ランクは今日で黄色に上がった。やっぱり迷宮がないからか、ここは魔物のレベルが低すぎて相手にならない。……なら、するべきことは一つじゃないか?」



たしかに基礎は大切にしなければならないが、ここを離れても学ぶことは沢山ある。



「また日本食が恋しくなるなぁ」


「まあ、そこは津田が頑張るよ」


「やっぱり僕?」



勇者パーティの料理担当、津田友也(つだともや)君がぼやく。

一応女子二人も料理のスキルは持っているが、家で料理担当だという彼が一番スキルレベルが高く、美味しかったので職業が騎士(ナイト)にも関わらずメンバーの母親のような位置づけとなっている。


ちなみに、勇者パーティの残り一人は最近「生きててよかった」が口癖の和木大輔(わきだいすけ)君。

職業は調教師。

彼は今のところ、森で出会った小さな猿のような動物と、街でみつけた野良猫を調教(テイム)している。

彼は全体的に軽い。

彼が入ると、真面目な会話も真面目でなくなってしまうのだから不思議だ。

これでも家族の中では長男らしい。


魔物は基本的に意思疎通が出来ないため、調教することは出来ない。

数百年に一人ほど魔物に名を与えて飼う“魔物を従えし者”なんて人間が出てくるらしいが、人間に害しか与えない魔物を飼うなんて物好きが居たものだ。



「言っとくけど、作ったことがあるものしか作れないからね?しかもこっちはあっちより調味料が少ないんだから作れるものも限られているし」



勇者パーティの盾、料理及び末っ子担当の津田君が口を尖らせると、七瀬君がその肩をぽんぽんと叩いた。


彼――七瀬麟太郎(ななせりんたろう)君はあのひねくれた性格の晶と会話出来ることからも分かるが、かなりコミュニケーション能力が高い。

おまけに、ほとんど喋らない朝比奈君とアニメの話で盛り上がったことがあるという伝説の持ち主である。

パーティでの位置づけは次男といったところか。



「まあまあ、それだけ友也の料理が美味いってことだよ。たしかにこっちの世界の食料で和食を作るのが難しいのは俺でもわかるけど、味付けを日本風にしたりとか出来ない?」


「……それなら出来るかも」


「お!マジで!?なら頼むわー」


「うちも食べてみたいー!」



軽く頼む和木君に便乗するのは上野さん。

とにかく元気。

たまに彼女が太陽に見えることがある。

和木君と上野さんが真面目になるときは世界の終わりと覚悟しておいたほうがいいかもしれない。



「私は辛ければなんでもいいわ」



おっとりとした顔で少しズレたことを言うのが細山栞(ほそやましおり)さん。

辛党で食べ物にはなんでも赤いふりかけをかけないと気がすまないらしい。

あっちではこんな事があると知らなかったから、隠していたのだろうか。



「おいおい、それよりこれからどうするかだろ?」



脱線した話をどうにか戻した。

みんなはっとして表情を引き締めた。

俺は何か意見がないかと全員の顔を見回す。



「武器がいる」



壁にもたれかかって腕を組んでいる朝比奈君がぽつりと呟いた。

やはり、こういう場では彼の意見が一番役に立つな。



「たしかに、俺は城で受け取った聖剣があるからいいとして、津田君の剣はもうボロボロだったな」


「お金もほどよくあるし、ここらで全部揃えるのもいいかもしれないね」


「あ、なら私も悠希ちゃんも護身用になにか武器を持っていたほうがいいかも。昨日結構危ないところがあったから」



俺たちの基本的な陣形は、前衛に俺と朝比奈君と津田君、後衛に風魔法師の七瀬君と上野さんと細山さんとなっている。

がこの場合、後ろからの敵にはほぼ無防備だ。

全員が気配察知のスキルを取得したが、いかんせんスキルレベルがまだ低い。

ある程度まで接近されないと気づかないレベルには。



「あ、それなら、世界一の腕を持つ鍛冶師が獣人族領にいるって聞いたことがあるかも」



全員が七瀬君に視線を向けた。



「あ、でも噂だぜ?確証はないけど、なんでも先代の勇者パーティで生き残った獣人族代表がその人だとかで、今港町のウルにいるらしい」


「……たしかウルには獣人族領の迷宮があったな」



とどめとばかりに朝比奈君が言えば、行き先はもう決まったのと同じだ。



「よし、じゃあ明日の船でウルに武器を調達に行こう。出来ればその世界一の鍛冶師に打ってもらいたいが、無理は言わない。自分に合った武器を見つけることが重要だ」



おおー!と元気よく拳をあげるみんなに、ほっと息をついた。


これでどうにか前に進むことが出来る。




『報告』


発売から、わずか四日で重版が決定したこと、とても嬉しく思います。

書籍を買っていただいた方、手にとっていただいた方、本当にありがとうございました。



更新が落ち着き次第、書籍の設定をこちらにも反映していきたいと思いますが、最初の方はん?と感じる所もあると思います。

が、気長に待っていてください。


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