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第141話 ~ありがとう~ アメリア・ローズクォーツ目線



「あの……アメリア様?」



恐る恐るといった風にリアが私を見てくる。

私は立ち止ったリアに合わせて止まった。



「何?」


「あ、あのすいません。先ほどの話、立ち聞きしてしまいました」



頭を下げるリアに首を振る。

そしてまた歩き出した。

私の後ろをリアが慌ててついてくる。


そんなこと、リアがあのタイミングで入ってきた時点で気づいている。

私はアキラみたいに『気配察知』のスキルは持ってないからいつからかは分からないけど、ちょうど話が途切れたあのタイミングで入ってこられるのは話を聞いていた人だけだろう。



「気にしていない。……リアはどう思った?私はアキラに無理やり連れてこられたように見える?」



リアは少し悲しそうな顔をした後、控えめだが頷いた。



「偏見かもしれませんが、勇者召喚者がエルフ族と一緒にいるとパーティーメンバーであるか、連れ出されたかとは思います。義父の場合はアメリア様の強さは知っていますので、前者であるととらえたのでしょうね」



つまりは私はパーティーメンバーとして仲間にされたと思われているらしい。

勝手に同情されているわけだ。



「も、もちろん、全員がそうであるわけではありませんよ!私はもちろん、この城の女性はみんな気づいております!」



なぜかワタワタとしているリアに首を傾げると、リアはちらりと私の左手に視線を落とした。



「その左手の薬指の"指輪"は恋仲の者同士がすると、永久に幸せであると噂の行為ですよね!アキラ様の左手の薬指にも痕がありましたし、城内でも何組か同じ痕をつけているのですぐに分かりました!」



キラキラと瞳を輝かせてリアが言う。

そんなに有名な行為だとは知らなかった。

あのときは私もアキラもどこかおかしかったから、寝て起きた後に襲ってきた痛みや、風呂に入っているときにしみることなんて頭になかった。

あれば少しは躊躇しただろうけど。



「流行っているの?」


「はい!確か、人族から流れてきた本に書かれていたんです。人族でも流行ったらしくて、獣人族領内でもたくさんの人に読まれていますよ!」



リアは読んだのだろうかと思っていると、アキラがいると思われる中庭についた。



「いいじゃねぇか!酒の一つや二つ!」


「飲めねぇと立派な大人になんねぇぞ!」


「だから、飲まねぇっつってんだろうが!!」



ガヤガヤと騒がしい中庭にはアキラと、この国の将軍が勢揃いしていた。



「あの後、アキラ様の相手をしたいという兵士が詰めかけまして、おそらくそのすべてを相手した後に来た将軍勢に酒をすすめられているようです。アキラ様気に入られていますね」



リアの解説で大体の状況は把握した。

確かアキラの国では成人しなければ酒は飲んでいけないらしい。



「つか、日没までに帰らないと野宿なんだよ。つーわけでどけ!」



兵士たちをかき分けようとしているが、如何せん数が多くてアキラが埋まっていっている。



「では、私が兵士たちの相手をするのでアメリア様はアキラ様と船へ。また明日、宿にお伺いしますね!」



そう言って、私の返事を聞かないままリアは兵士たちの方に行ってしまった。



「ザラス将軍!!今日の執務は終わったのですか?」


「げ、リア様……」



将軍たちはリアの顔を見た途端そろって顔をしかめた。



「それにシーラ将軍は奥様から禁酒令が出されているはずですが!?」


「リウラめ……リア様にチクったか」



リアが将軍たちを止めている間、アキラが兵士たちの間から抜け出してきた。



「お!リア様のお説教が始まるぞ!」


「将軍たちを怒るリア様可愛いなあ……」



リア本人は養子の身だとかなんとか言っていたが、城の人たちはリアを受け入れているようだ。

妹のような存在のリアが母親のような扱いなのは少々いただけないが。



「アキラ、早くいかないと野宿」



私が言うと、アキラはハッとして私の右手をとって走り出した。

私は右手を握っているアキラの左手の薬指に視線を落とした。

深く削ったためにその"指輪"は今でも色濃い赤色をしている。

私の左手にも同じ"指輪"がある。



「悪いアメリア、急ぐぞ!」



私はアキラの左手をきゅっと握った。





リアの名前を出せば、すでに出航の準備を整えていてくれた船に乗り込むことはできた。

アキラはソファに体を沈めて息をついている。



「結局、あんまりデートできなかったな」



ポツリとアキラが呟く。

私はそれに首を振った。



「アキラが戦う姿、見るの久しぶりだった。私アキラが戦う姿好き。今日もカッコよかった」



そう言って私が笑うと、アキラは口に手を当ててそっぽを向いてしまった。

意外とアキラは照れ屋。



「そうか。ならよかった」



私は少し意地悪がしたくてアキラの隣に座った。

そっと体を乗り出してアキラの顔を覗き込む。

顔はあまり見えなかったが、髪の隙間から見えた耳は真っ赤だった。



「私、アキラについてきて良かった。エルフ族領だったらこんなにわくわくする毎日は送ってない。おいしいご飯も食べれてないし、なによりアキラがいる。だから、私にとっては毎日がご褒美。……ありがとう。私を外に連れ出してくれて」



遊びだといわれてショックだった。

だけど、エルフ族領を出たのが私の意志であったとしても、連れ出してくれたのはアキラだ。

だから改めてお礼を言いたかった。


するとアキラは真面目な顔をして私と顔を合わせた。

まだ顔は赤いけど、真面目な話だと思ってこちらを向いてくれたらしい。



「俺は連れ出してない。俺についていきたいと願ったのも、それを選択したのもアメリアだ。アメリアは自分でやりたいことを決めたんだ。だから、礼を言うのは俺の方だろうな。家族と過ごすよりも俺をとってくれて、ありがとう」



自分で思っているよりも私はイグサム王からの言葉を気にしていたらしい。

だから、アキラの言葉は本当にうれしかった。

自分でもわかるくらい頬が緩む。



「すごい。アキラはいつも私が欲しい言葉をくれる」


「そりゃよかった。……さ、中央噴水につくぞ。降りる準備しないとな」



少し照れたような表情をしたアキラはそう言って私の手を引いて船のデッキに上がった。

ちょうど中央噴水の向こう側に沈んでいく太陽が見える。

日が暮れる前には間に合いそうで良かった。





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