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第110話 〜悪い噂〜 朝比奈京介目線



顔を見合わせた二人は同時にやれやれとため息をついた。



「ま、お前らが織田についていきたいって言うのは予想通りだし」


「織田くんが気に入らんのは個人としての意見やからなあ。子供みたいに意地はらんと、みんなと一緒行くわ」



今更放り出しても後味悪いしなあ、と上野が呟く。

確かに、晶たちは夜たちとの戦闘スタイルというものがあるだろうし、こちらも二人に抜けられるとパーティーのバランスが崩れる。

それに二人だってここで離れても困るだけだ。


二人の返答に佐藤はホッと息をついた。



「じゃあ、あとは王女様説得するだけだね」



七瀬の言葉に頷く。

こちらがアメリア王女という人を知らない以上、和木と上野を説得するよりも難しい。

一番の難関だと思う。



「期間は晶たちが獣人族領を離れるまでかな。魔族と戦ったせいで晶も従魔も疲弊したらしいから回復には時間がかかるらしいし」



切羽詰まった状態ではない。

が、のんびりしている場合でもないようだ。



「そういえば、近々ウルクの方で祭りがあるらしいぞ。船で会った女の子が言ってた」



そういえばと思い出す。


この世界の野良猫は日本にいる野良猫よりも警戒心が強く、容易に触れさせてくれないのだが、調教師に調教された猫は別で、人間にとても懐く。

その為、和木(の猫)は女子にとても人気で、ことある事に女に囲まれているのだ。

人族領からこちらに来る船の上でも猫に触れたい女子が和木(の猫)を囲んでいた。



「祭りか……気分転換を兼ねて誘ってみるか?」



佐藤の言葉に女子二人が目を輝かせた。

細山はともかく、上野は祭りとか好きそうだ。



「でも、なんの祭りなん?」


「さぁ?なんか女の子が輝く日だって言ってたけど」



俺は首を傾げる。

女が輝く日?

コンテストでもするのだろうか。



「なんだそれ……というか、こっちの世界の祭りってどんなのなんだろうな」



七瀬が呟く。

確かに、日本では祭りといえば浴衣や屋台だが、他の国ではパレードなんかあったりするし、祭りという言葉は抽象的すぎるな。



「そ、そういえば、冒険者ギルドでもおじさんたちが話してた、よ?」



おずおずと津田が言う。


女子のような見た目のせいか、津田は冒険者ギルドでよく冒険者に絡まれていた。

……というか、冒険者を引退した爺さん連中が津田を猫可愛がりして、それを見た冒険者たちが津田に興味をそそられて……みたいな状態だ。

いつの間にかそうなっていたため、俺もきっかけは知らないが、津田に何かあればウルの冒険者たちが一斉に攻撃してくることは確かだと思う。



「なんか獣人族とか人族で一番の美女を決めるんだって。毎年開かれていて、今回は獣人族領のウルクで開催されるって言ってた」



なるほど、確かに祭りだな。

ミスコンのようなものだろうか。

やはりどの世界でもあるものなのか、それとも召喚された人が広めたのか……。

ともかく、一番を決めるためにコンテストを開くのは全世界共通らしい。



「一応男性の部もあるみたいだけど、やっぱり女性の部が人気で一番の目玉だって。そ、それと……」



途中で津田は言葉を止めた。

青い顔をしている。



「それと?」



七瀬が先を促した。



「コンテストの優勝者は毎回行方不明になってて、ぞ、臓器とか売られてるんじゃないかって……」



つまりは臓器売買か?

日本では馴染みがない物騒な言葉だけに、ここが異世界だと改めて実感する。



「どうして優勝者だけ?」



細山が津田のそばで背中を擦りながら聞く。

臓器だけになれば美女も醜女も変わらんだろうに。



「えっと、おじさんたちは、若くて美しい女の人の臓器が闇市では高値で取引されてるんだって言ってた」



この世界には警察という存在がない。

大和では新選組のような人たちが見回りをしたり治安維持に務めていたが、それも国が組織している訳ではなく、ボランティアらしい。

国は国家が脅かされるときは動くが、窃盗や殺人、誘拐くらいでは動かない。

魔物がいて、戦争がある世界だから仕方ないと思う反面、どうにかできないかと思ってしまう。


冒険者ギルドにも暗殺や復讐の依頼が入ったりするが、大抵の人は受けない。

この世界でも人を殺すことは忌避されているし、わざわざ人のために自分の手を血で染める真似はしない。

余程金に困っていなければだが。



「佐藤、どうする?」



俺の言葉に佐藤はじっと考えこむ。

さっきからなにか気になっていることがあるらしい。

佐藤は言葉を選びながら慎重に言う。



「開催される場所はウルクだったよな?……もしかして、晶とクロウさんが言っていた悪党――グラムだったっけ?が関わってるなんてことはないか?」



そういえばと思い出す。

クロウさんの復讐相手でウルクのギルドマスターだとか。



「有り得るね」



細山が苦笑する。

殺人以外の犯罪はコンプリートしているらしいし、臓器売買していても不思議ではない。



「関わってないとしても、許せることじゃねぇよな」



和木が呟く。

佐藤はそれに頷いた。



「魔物や魔族の話はまだ分からないけど、人が人を売り買いしているのは見逃せない。それに、もしグラムが関わっていればクロウさんが動くかもしれないし、クロウさんが動けば晶が動く。……祭りは楽しみたいけど、犯人を捕まえて、晶やアメリア王女様に俺たちの有用性を見せるいい機会になるんじゃないかな」



佐藤の言葉で俺たちの方針は決まった。





朝比奈京介目線が続きましたが、次は主人公、織田晶目線です。

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