表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
商店街の稲荷神社に奉職しました【BL・なろう版】  作者: 鳴神楓
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/32

コタツと猫

短いですが猫の日の時に便乗で書いたもの。

茶トラ猫姿のノリさん視点。

 この地域を守護する神の神使として、たまに猫の姿で町内の見回りをすることにしている。

 猫の姿なら動物たちの話も聞きやすいし、人の目線では見えないものが見える場合もあるからだ。

 今晩も猫の姿で見回りを終えて神社に戻ると、自宅の方の庭先に回り居間の前で「にゃー」と鳴く。

 するとすぐにサッシが開いて、拓也が「おかえりなさい」と出迎えてくれた。


「見回りお疲れ様でした。

 今日はどうでしたか」

「ええ、いつもと変わらず、平和なものでしたよ」

「そうですか。それはよかったです」


 拓也が猫の姿の俺に敬語で話しかけているのは、猫の時の俺が宮司の時と同じ、老人の声で話しているからだ。

 別に若い男の声で話しても構わないのだが、最初にこの姿で拓也と話した時が宮司の声だったので、なんとなくそのままになっている。

 まあ、猫に向かって敬語で話しかける拓也はちょっと笑えるし可愛いので、このままでもいいかと思う。


 自分で足を拭いた俺がそのままコタツ布団の角で丸くなると、拓也は不思議そうな顔になった。


「人間に戻らないんですか?」

「ええ、たまにはいいでしょう?

 冬と言えば、コタツに猫ですから」


 俺がそう言うと、拓也はちょっと笑った。


「確かにそうですね。

 それじゃあ、僕も失礼して」


 そう言って拓也もコタツに入ってきたので、俺は我が物顔で拓也の膝の上に乗る。

 拓也の太ももの上で安定するところを探して丸くなると、拓也は俺の体を撫で始めた。


 拓也は猫好きで、よく近所の猫を可愛がっていたらしく、猫を撫でるのがうまい。

 猫の姿は仮の姿だが、それでも変身すると自然と体質や習性も猫のものになるので、のどを絶妙な力加減でくすぐられると、ゴロゴロとのどを鳴らしてしまう。


 撫でている方の拓也も機嫌がよさそうだ。

 人の姿の俺と一緒にいる時には見せないようなとろけ切ったような顔をしているので、俺としてはちょっと複雑な気分だ。


「重くはないですか?」

「ええ、ちっとも。

 むしろ、あったかくて気持ちがいいですよ」


 それもむしろ、人の姿で事後に添い寝した時にでも言わせたいセリフだ。

 けど、拓也は照れ屋なところがあるから、俺が人の姿の時はきっとそんなことは言わないだろう。

 だからたまにはこんなふうに猫の姿になって、いつもと違う拓也を見るのも悪くないと思う。


 拓也の上には毎晩のように乗っているけれども、こんなふうに猫の姿で乗るのは、人の姿の時とは違う気持ちよさがある。

 あったかくて、安心できて、ここが俺の居場所だという、そんな気持ちよさが。


 たまには神使や拓也の恋人を休んで、拓也の飼い猫でいるのも悪くないかもな。


 そんなことを考えた俺は、少しだけ、と思いながら、拓也の膝の上で目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ