78話 境変
修学旅行の前日となった。
我が校は資金が潤沢という訳ではないので修学旅行先は国外ではなく国内である。
しかしながらそれでも資金繰りを上手くしたのか、往復を飛行機で、宿泊先はそれなりに良いところであるとのこと。
国内とはいえ文化風土の異なる土地で過ごすことで異文化への理解、異文化共生について考えることを促すということをテーマ、課題にしているらしい。
「これはこの数あれば良くて……こっちの方は……」
今は修学旅行に向けて、予定や荷物の確認をしているところだ。
「……」
ふと手が止まり、考え事をしてしまう。
そう言えば学校の行事で、実と同じクラスで別行動となってしまうのは珍しいということだった。
俺と実は名字が五十音で近いこともあって、大抵クラス行事では同じグループで行動を取ることが多い。
実がTS化してから性別が理由で別々に行動することも多くなったけど、それは行事の内容からある程度想定できるものばかりだった。体育祭や身体測定などはそういったことが起こると容易に想像がつく。
そして自分にとって想定外だったのは修学旅行での別行動だった、という訳だ。
学年全体、クラス全体での行動は男女分け隔てなく団体行動であったけど、数人程度で構成されるグループ行動は男女別々だ。
学校行事で数日にわたって実とほぼほぼ合わなくなるのはいつしか以来だ。
それこそ、中学の時の宿泊学習で別クラスだったときくらいじゃないのだろうか。
……同じクラスの修学旅行で別々、考えもしてなかったな。
ここで自らの心を顧みる。
今まではこんなことを思うこともなかったけど、今の俺は実と一緒に修学旅行の大部分の時間を共にできないことを「寂しい」と強く感じている。
全く以って自分がチョロい人間なんだと強く自覚させられる。
今の実は美少女で、その美少女と行動できないから寂しい。実がTS化したときに「特別際立って何かいうこともない」なんて言っていた自分が聞いたらなんて思うのだろうか。
ここまで自分の生活の中に美少女というものが入り込んできて、それらがちょっとの間は慣れるからと言ってここまで自分が動揺してしまうとは。
彩梅ちゃんも可愛くはあるけど、学年は違うし、彼女が高校に入って同じ委員になるまで碌に話したことはなかったから、彼女とはまた違う感覚であることは明らかだったけど……。
まあ、良い機会だ。
一旦「実離れ」をして、頭を冷やそう。俺が実を異性として意識しすぎて、夏休みのころみたいにギクシャクするのなんて嫌だし、実も望んでないだろうからな。




