62話 ランディング
―Minol Side―
「じゃあここに一旦座って……いや熱いな。水掛けてみるか」
まー君は目の前の岩を触ってから、そう言って数度川の水を掛けていた。
屈み直すときにバランスを整えるために再び近づいてしまう。感じられる体温が、直射日光や岩盤の熱さとは違うベクトルで身体を熱くした。
「これで大丈夫か。ほら」
「……ありがと」
湿った岩に腰掛けて、一息ついた。
「足は大丈夫? 切ったりしてない?」
「大丈夫だと思うけど……」
「見てみないと分からないだろ。本当はもっと酷かったり、切ってたりしたら病院に行かないといけないし」
「それは……確かに」
納得して足を見てみることにした。
「うーん……アザも切った跡もないし、大丈夫かな」
「そか、そりゃ良かった」
確認して足を川に戻した。痛みを水が洗い流してくれているようで、気持ちがいい。
「それにしても、ここちょっと暑いな。この岩も熱かったし」
「日当たり良いもんね、ここ」
まー君を意識し過ぎているからなのか、それとも単純に暑いからなのか、ぼーっとしてしまう。
「実、大丈夫か?」
「……ん? 何が?」
「顔赤くない? 熱中症?」
「チュウし……? あっいやっ、えぇっとその、問題ないんじゃないかなぁっ!?」
私の頭沸いてんじゃないの!? 本当になんて聞き間違いをっ!!!?
「本当に?」
テンパっていると、私の熱を確認するように、まー君は私の額に手を当ててきた。
「わわっ……」
「んー……? 熱くはないけど熱っぽさはちょっとあるかな? 飲み物と荷物持ってくるからちょっと待ってて。実の荷物も持ってきた方が良い?」
「あ、うん……」
確認し終えたまー君は足早に置いて来た荷物の方へ向かって行った。彼が去っていった後も頭に熱が残っていたので確かに熱中症なのかもしれないと思った。でも足の浸かっている水の流れはより一層冷たいものに感じられた。
「おまたせ、はい」
「ありがとう……」
「あと日除けにタオルいる?」
「もらう……」
「貸すだけだぞ?」
「うっす……」
揚げ足を取ったような軽口で、やっぱりまー君は私のコトをあくまで「友人」として見ているということを改めて感じさせられた。
ドキドキはしてもしかしたらなんて思っていたけど、やっぱりそういう目線では見られてないんだなということを自覚させられる。胸とかを見ていたのは気になるからで、明確に異性として好きかどうかとは違うというのは男だったから分かる。
思って気落ちしている気持ちを払拭するためにまー君が持ってきた飲み物を開けようとした。
「これ……飲み止し?」
「来るときに開けたから腐っては無いと思うけど……気になる?」
「きっ、気にするはず無いじゃん! 何言ってんの!?」
「だから今日暑かったから腐ってるのかどうかを気にしてるのかとか思ったんだけど」
普通に墓穴を掘ってしまった気がする。
「~~~~~~っ……、ンクッ、ンクッ、ンクッ、ッぷはぁ……」
「……そんな一気に飲んで身体、大丈夫か? 冷たくはないけど、熱中症になりかけでそんなに飲んだら気持ち悪くなったりしない?」
「大丈夫……うん……」
だからそれをなんとかかき消すために一気に飲み込んだ。話題を逸らすことには成功したけど、それとは別に気遣い以外のなんらかの意識をこちらに集中させてしまった気がする。
そして勢いでやってしまったけど、間接キス……、……。
「どうした? やっぱ腐ってた?」
「腐ってないから、大丈夫……」
俯いてるのに顔なんて近づけるなよ、顔が火照ってるのがバレそう……。
改めて性的な対象として意識し直してしまった今、この距離感は近すぎるのかなとも思えてしまう。
普通にまー君を対象に“シテ”しまってるもんなぁ……。
やっぱり、もっと距離を置いた方が……というか、自分自身落ち着きを持って接することが出来たらいいのにな……。
出来る気はあまりしないけど……。




