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60話 フロート・バイ・リビドー

 去年は海だったので、今年は川だ。


 といってもそこまで単純な考えで決めたわけではなく、実にどこが良いか聞いて帰って来たのが川だった。まあ2年連続海っていうのもどうなんだ、みたいな気持ちもあったし、そういう意図を込めた聞き方はしたけれども。


 市内の田舎側に向かって自転車で数十分から1時間前後で着ける場所。


 特段観光地みたいな扱いではないものの、時折どこかの家庭がBBQしていたり、近くの学校の児童から学生まで遊びに来るような場所。海程人が集まってくるような場所でもないので、自由なものだ。ま、最近の環境問題に行政が形だけのポーズを取る様にしている為以前よりゴミは減ったけど、それでも流れの上下を見渡せば、どこかにゴミがあるという程度のもの。


 ただ、そうは言っても綺麗な川だし、夏場で訪れる人も多くなる。そこまで人がいる場所ではないところを選んだつもりではあるけど、ここから見えるところにまあまあ人はいる。


「実、まだかな?」


 水着を用意してきたとはいえ、今回は遊びに来たというの真意ではなく、実が大会の二って宙に起こした失禁したことに対しての何と言うか……意識のリフレッシュが主な目的だ。


 集合時間に設定した時間丁度を過ぎた。いつもなら多少なりとも茶化すくらいはするけれど、今回の目的はあくまで実の気持ちのリフレッシュ。多少は大目に見てやるか。


「ゴメン、ちょっと遅れちゃった。待ったよね……?」


「5分ぐらいだし、全然大丈夫――」


 振り返ってみると、実がいた。


「ん? どうかした? なんか……変なところとかある?」


「いや……ない、けど……」


 現れた実は、学校指定の水着を着ていて、その上からパーカーを羽織っていた姿だった。


 その姿を見て、思い出す。


 俺、実が女の身体になってから、こんな間近で水着姿を見たことが無かったということを。


「……」


 思わず見とれてしまう。そして喉を鳴らしそうになったことにギリギリ気が付き、それを抑えた。


「……何? やっぱり変?」


「スクール水着で変に着こなす方が難しいだろ。実の身体がそうなってから水着姿を見たことなかったなって思っただけ。変じゃない」


「そっか。じゃあ良かった」


 どうにか普通の話題で乗り切れたと思う。若干早口で無駄口を叩いてしまった感はあったから、自覚したときは少しドキリとしたけど。


「まー君は水着にならないの?」


「あー、そっか、俺も水着になるか」


 俺は中に水着を着てきているので、早速上の服を脱ぐ。


「……? どうした実? 向こうに何かあるの?」


「いやっ……別に……」


「ふーん」


 なんだろう、気になるな。時間が経ったらまた聞いてみようかな?


「何か遊べるモノとか持って来てるの?」


「一応釣り糸だけは持ってきた。釣り竿とかになると流石にかさばるからな」


 残りはタオルや飲み物、最低限のお金だけ入れた財布くらいなものだ。


「じゃあ最初は釣りから?」


「泳いだりするのは後でも良いかなって思ってるだけで、水切りでも良いとは思ってるけど、釣りの方が良い?」


「んー……釣りからにしよっか」


「おっけ」


 今日は実のリフレッシュが真の目的なんだし、断る理由は無かった。


 そういう訳で釣りを始めてから数十分から1時間程が経った。


「釣れない……」


「釣れないね……」


 まあ2人とも素人だから仕方ないとはいえ、ここまで釣れないとは。


「別のヤツやるか……」


「そだね……」


 何をするかと訊けば水を浴びたいとのことで、上着を脱いで川に入ることとなった。


 水切りで疲れるよりも先に泳いだりしたいらしいとのこと。


 ……1つ気になるのはコチラからの視線に気づかれてしまうのかどうかのところだ。


 今の実は出るとこ出ていて締まるとこが引き締まっていて、尚且つ顔も良いので視線が男の欲望のままに向いてしまう。実には気にせずリフレッシュして欲しいこともあるし、変に気を遣わせたくないけど……大丈夫かな?

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