26話 Sayエス
―Minol Side―
「いらっしゃいませー」
休憩が終わり、暫く接客をしていると、“その時”が来た。
「ここってー、女装してるヤツらの中に本物の女がいるって話だぜ?」
「マジかよ。うーん……この子かあの子じゃね?」
入ってきた2人の男が部屋を吟味するように眺め、自分と船木を指して言った。
……取り敢えずこの話題には無視。何か反応したらそれで絡まれてしまう。
「店員さーん、店員さんって女の子なの?」
「……ここは『女装喫茶』ですが」
早速絡まれちゃったよ。
「正直言ってあの子と君、どっちが女の子なの?」
「噂はただの噂、ということですよ」
「えー?」
テキトーに流してみようとしているものの、彼等はまだその話題を引っ張ろうとしていた。
「胸触ったら分かるんじゃね?」
「おー! それは頭良い!」
頭悪いだろ。胸があろうがなかろうが、ワイヤーに引っかかるだけだと思うが。
「ちゅー訳で、胸揉んでいい?」
「ダメです。これはいかなる理由でもそうさせることは出来ません」
校内風紀維持のため、相手が男であっても胸を揉むようなことはしてはならない。男がいいのなら女でもいいのではという話にさせない為らしい。女装をしているのなら尚更だ。
校内で胸を触っていいのは医療従事者が医療行為をするとき、若しくは緊急時に心臓マッサージを行うときのいずれかだけだ。
「それってー、お前が女だからー?」
「揉ませろよー」
ウザっ。何ヘラヘラしてんだよ。
「校則ですので……」
自分でも無理やりした笑顔の口角が引きつって、コメカミがピクついているのが分かる。
「男なら別に校則も何も無いっしょ! 違う?」
「それとも女って認めんの?」
「そのような行為はこの店のサービスに含まれておりませんので。これ以上ゴネられますとつまみ出しますよ? あと、校則は男女関係無く適応されます」
本当にイライラしてきた。
「ご注文が決まりましたらまたお呼びくださ――」
「ちょっと待てよ」
もうそろそろ怒りが顔に出そうだったので切り上げるため、この席を去ろうとしたら、その言葉と共に腕を掴まれた。
「は、離してください!」
コイツ意外と力強く掴んできている。掴まれた部分の腕がめちゃくちゃ痛い。
「肌の感じとか……お前やっぱり女じゃねーのー?」
掴んできた男はヘラヘラとした顔を止めずに聞いてきた。
「こちらにはこちらの仕事がありますので!」
「オイオイ待てよー」
振り払おうとしたとき、もう1人の方の男も俺の腕を掴んできた。
「うっひょ、やっぱコイツ女じゃね?」
「や、やめっ……!」
その男も俺の肌の質感から俺が生物学的に女であることを理解し、手に握力を、俺の腕に強い痛みを与えた。
他の客やクラスメイトも流石にこれで異常を察知したのか、こちらに何人かが注目し、一部クラスメイトはこちらに来ようとしていた、そのときだった。
「ちょっと……、接客担当の腕を掴むの、止めてもらえませんか?」
その声の主は、増良だった。




