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11話 力への意思

 さて。高校最初の中間考査も終わり、その結果も恐らく全て返って来て、6月頭に行われる体育祭も迫ってきた。


「うだー」


 そんな季節頃、机に突っ伏して唸り声を上げる元男子、現女子生徒が約一名。


「どうしたんだよ」


 やや面倒ではあったが、今は一応女子であり、知り合いでもある人間をこのままウザ煩い状態で置いておくのは躊躇われたので聞いてみた。


「テストの点数が……」


「仕方ないだろ。結構休んでたのと、他の人に比べて勉強の他にやることがあったんだし」


「点数そのもの自体はそこまで悪くはなかったんだけど……」


「じゃあ、どうしたよ?」


 どうやらテストの点ではないところに、コイツが騒音を発生させる要因があったようだ。


「サッカー同好会の俺以外の会員も点数があんまり良くなくてさ。追試で更に赤点とったら体育祭まで活動停止、体育祭後の生活態度とかの評価が悪かったら次の試験まで停止だとさ」


「他の部員もどれだけ悪かったんだよ……」


「いや、全員似たようなもんだったんだよ。得意な教科は良い点で、普通な教科は赤点ギリギリ、苦手な教科はギリギリ赤点、ってな感じで」


「『点数自体はそこまで悪くない』ってなんだったんだよ。……それで、一人当たりの平均赤点科目数は?」


「う~ん……1.3から1.4ぐらい?」


「基本1人1科目、誰かが2科目赤点取ったって感じか」


「何で分かるんだよ!?」


「いや、分かるだろ。会員少なかったよな? 少ないから同好会なんだろうし」


「あ、それもそうか」


 コイツ、転換して少しアホになってないか? 少し心配になるくらいだ。


 一応、注釈を入れておくと、俺たちの学校では数が少ないと同好会、一定数の部員を揃えられると部に昇格できるというシステムを採用している。


 閑話休題。


「で、お前は何が赤点だったんだ?」


「化学……」


「あれは簡単な方だっただろ……」


 数Aや古典、新しく覚えることの多かった生物よりかはかなり簡単な部類だと個人的には思う。殆どパズルみたいな組み合わせのあっただけの四則演算のようなものだったし。


「何が分からなかったんだよ」


「モル数全般と酸化還元全部」


「テスト範囲全部だろそれ」


「……だから赤点取った」


「だろうな。最後の大問の酸化還元の式とか、そのあたりで解けてないのは兎も角、モル数なんて四則演算さえできりゃ躓かない基礎ばっかだぞ?」


「……」


「あー……、悪かったよ」


 実があまりにもシュンとした顔をして落ち込んでしまったため、一先ず謝ってみる。実が男だったときならここで落ち込むこともなくヘラついて、俺もそれに乗って追撃して弄る、と言った感じだった気がするけど……。なんか、“こう”なってしまって、変な距離感が出来てしまった気がする。


「じゃあ、何が悪かったか勉強会でもするか」


「……助かる」


 そして放課後になって早速、実の家へと向かった。


「じゃ、どこが分からないか調べてみるか……」


「お願いします……」


 調べるために何問か解き、実の学習の傾向を掴もうと思ったが……。


「解け……た?」


「理解できてるよな。なんで本番で出来なかったんだ?」


「それは……分かんない」


 ……どういうことだろう。


「他の分からないって思ってるところも見て、理解力がどうなってるかを一応、見てみるか」


「うす」


数分後。


「うーん……」


「えぇっと……、出来ました」


 出来てしまったか。これは……。


「増良の教え方が上手いってこと?」


「お前が授業、テストに集中できてないってだけだろ」


 “ただの偶然”で済ますことも出来るが、中学時代からこんなことは無かったと考えると……、そうだな。


「実、お前なんかまた悩んでることでもあんの?」


「え? いや……無いけど」


 実の瞳に真っ直ぐと目を向けて尋ねるが、逸らされてしまった。


「俺は別にあったとしても、実が聞いて欲しくないってんなら聞かないけど……本当に無い?」


「……無い。……ことも、無い」


「で、俺にはあんまり知られたくない、と」


「……ん」


「なるほどなー……」


 実は今年、いや、おそらく人生で一番の重大な転換点に直面していてそれに動揺しているには明らかだ。するべきことと言えば……。


「明日の放課後、少し“あそこ”を覗いてみるか」


「???」


 実自身、その辺りのことについて疎いことも多そうだし。

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