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底辺歯車探索者 ~人生を決める大事な場面でよろけたら、希少な(強いとは言ってない)スキルを押しつけられました~  作者: 日之浦 拓
第四章 歯車男と試練の塔

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三人寄っても謎は謎

「うぅ、申し訳なかったのじゃ……」


 その後、ローズはすぐに目を覚ました。加えてちょっとはしゃいでいた時の記憶もしっかり残っているらしく、俺達の前でこれ以上ないほどしょんぼりと肩を落として謝罪の言葉を口にする。


「大丈夫デスよローズ! ゴレミのボディは安心安全の一〇〇年保証なので、あのくらい何てことないのデス!」


「一〇〇年はスゲーな……まあそれはともかく、どうしてあんなことになってたんだ?」


 心から反省している子供を更に詰めるような趣味はねーが、それでもパーティとして探索者をやっていくなら、流石に原因を聞かないわけにはいかない。故に問う俺に、しかしローズは困ったような顔で首を傾げる。


「それが妾にもよくわからぬのじゃ。どうにかしてウィスプの攻撃を防いでやろうと妾の魔法にこれでもかと魔力を込めたのは覚えておるのじゃが、その途中でこう、妾の腹の底からカッと熱がのぼってきて、それが頭まで届いてボーッとし始めたというか……一番近い感覚は、風呂でのぼせた感じじゃろうか?」


「のぼせた感じ、ねぇ……それって今までもなったことあるのか? それとも魔力を過剰に込めると、魔法士ってのはそんな感じになったりするのか?」


 俺自身にはまともな魔法は使えないので、その感覚はどうにもわかりかねる。なので重ねてローズに問いかけたが、ローズの方もまた困り顔を崩すことなく、ただ首を横に振る。


「わからぬ。少なくとも妾は今までこんなことになったことはないのじゃ。魔力が枯渇しかけると酷い頭痛に見舞われるという話は聞いたことあるのじゃが……」


「ローズの魔力は尽きねーだろうなぁ……四万くらいあるんだし」


 超一流と呼ばれる魔法士の七、八〇倍の魔力となれば、使い果たす方が難しいだろう。しかしそうなると本当に原因がわからん。


「でも、そうか。ならその辺も少し調べといた方がいいな。ローズにはちょっと負担がかかるかも知れねーけど、同じ感じで何度か魔法を使ってみて、どのくらいで調子が変わってくるのかを試してみてくれ。


 ゴレミはいざって時にローズを押さえ込む役を頼む。多少強引でも無理矢理気絶させねーとヤバい状況とかあるかも知れねーからな。俺は周囲を警戒するから」


「わかったデス! ゴレミのテクでローズをメロメロにNTRしてやるデス! マスターの脳が破壊されるデス!」


「こえーよ!? 何だよ脳破壊って!? 普通に守れよ! ったく……」


「うぅ、本当に申し訳ないのじゃ……」


 訳がわからないがやたら物騒なことを口にするゴレミに突っ込みを入れるも、ローズのしょんぼり具合はどんどん酷くなっていく。うーん、これは……お、そうだ!


「おいおいローズ、そう落ち込むなって。もうちょっと行けば、お前が楽しみにしてたアレがあるぞ」


「む? アレ?」


「そうそう。ほら、移動しようぜ」


 促す俺に二人が追従し、俺達は移動を再開する。すると程なくして突き当たった壁には、遂に待望のアレが存在していた。


「おぉぉ!? クルトよ、ボタンが! ボタンがあるのじゃ! しかも押されてないボタンなのじゃ!」


「だな。よかったじゃねーか」


 一見すれば行き止まり。だがその横の壁には、赤い光の線が入った四角い出っ張りがいい感じに自己主張している。どうやらここの仕掛けは解除前だったようだ。


「ではお嬢様? どうぞ押してみてください」


「わ、妾でよいのか!? 妾が押してしまっても、本当によいのか!?」


「勿論。で、そっちにあるボタンはゴレミが押してくれ」


「任されたのデス!」


 反対側の壁にあるボタンに視線を向けつつ言うと、ゴレミがビシッとポーズを決めながら元気に返事をする。ここの仕掛けは極めて単純で、左右の壁にあるボタンを同時に押すと、正面の行き止まりの壁が動き、通路になるというものだ。


 奥にお宝があるというわけでもなく、開くショートカットは階段へ繋がる通路に出るものなので、俺達みたいにわざわざ脇道に逸れない限り、これを解除する意味はない。ならばこそまだ残っていたのだろうが……うむ、よかった。これでここが解除済みだったら、ローズの気分転換にならなかったしな。


「よーし二人共、準備はいいかー?」


「ばっちりなのじゃ!」


「ぽっちりなのデス!」


「何だよぽっちりって……んじゃいくぞ。三! 二! 一! 押せ!」


「ふぬっ!」


「ポチッとな! デス!」


 俺のかけ声に合わせて、ゴレミとローズがボタンを押し込む。すると突き当たりの壁がゴゴゴッと音を立てて動き、そこに新たな通路が出現した。


「壁が動いたのじゃ! おぉぉ……感動なのじゃ!」


「確かにこれは、ちょっと楽しいデス」


「どうだ? 満足したか?」


「うむ! しかし仕掛けというには、些か簡単過ぎるのじゃ。妾としては、もうちょっと大がかりな仕掛けも解除してみたいのじゃ」


「気持ちはわかるけど、一層にそんな大がかりな仕掛けはねーよ。それにこれだって、言うほど簡単じゃねーぞ?」


「何故じゃ? 左右の壁にあるボタンを同時に押すだけじゃぞ?」


 納得いかないと首を傾げるローズに、俺は思わず苦笑しながら答える。


「そりゃ二人以上で行動してるなら簡単さ。でもこれ、自分一人だったらと考えてみな? もしゴレミに出会う前の俺が<底なし穴(アンダーアビス)>でこの仕掛けを見つけたら、絶望して涙を流してるところだぜ」


 通路の横幅は、およそ三メートル。俺が思いきり両手を広げても、左右の壁に同時に触れるにはちょいと距離がありすぎる。


「た、確かに! 妾が一人でこれを解くのは、絶対に無理なのじゃ……っ」


「ぼっちに優しくないダンジョンデス。リア充格差はダンジョンにまで広がっているのデス! でもゴレミはマスターとラブラブなので問題ないのデス!」


「ま、進行に絶対に必要な箇所は一人でも解けるようになってるらしいけどな。さて、それじゃ検証も兼ねて、もうちょっと歩くか」


「はわっ!? 華麗にスルーされたデス!?」


「む? せっかく開いた通路は通らぬのじゃ?」


 ゴレミの戯言を無視しつつ出来たばかりの隠し通路に背を向ける俺に、ローズがそんな声を上げる。が、俺の答えが変わることはない。


「そりゃ通らねーよ。そっちに行ったら階段に続く道に戻っちまうし。ローズの暴走の検証も兼ねるなら、もうちょっと一層で戦闘しといた方がいいだろ」


「それはまあ、そうじゃの。というか、妾はまた暴走するのが確定なのじゃ?」


「うーん、それはローズ次第だな。『あ、暴走しそうだな?』って感じが自覚できるならそこで辞めればいいけど、そうじゃねーならそれがわかるまでは、何回かあんな感じになってもらうしかねーだろ」


「うぅぅ……我がことながら、あれはちょっと恥ずかしいのじゃ。出来れば二度とああはなりたくないのじゃ……」


「ならそのためにも、ちゃんと加減を練習しとかねーとな」


「そうデス。もしガーベラやフラムの前であんな感じになったらどうするつもりデス?」


「ひょわっ!? ね、姉様や兄様の前であんな醜態を晒したら……!?」


 ゴレミの指摘に、ローズの顔色が真っ青になる。


「そ、そんなことになったらこの世の終わりなのじゃ! もはや泣くしかないのじゃ!」


「ならやっぱり、練習は必要なのデス。回数を重ねるためにも、作戦はガンガンいこうぜ、なのデス!」


「それは作戦っていうか、方針じゃねーか?」


「細かいことを気にしてはいけないのデス! 効かない相手に即死魔法を連発して魔力が尽きてもご愛敬なのデス!」


「それは明らかにやっては駄目な失敗ではないのじゃ? というか、そんな恐ろしい魔法が使えるほどの魔法士が、何故そんな愚かな選択を……?」


「それは勿論、AI(アイ)故にデス!」


「意味がわからん……」


 あまりにもいつも通りすぎるゴレミに、ローズが纏っていた暗い雰囲気はすっかり吹き飛んでしまっている。俺は内心で感謝しつつも表面上では苦笑して、頼りになる相棒と共に次の一歩を踏み出していった。

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>「それは勿論、AIアイ故にデス!」 うまい! ゴレミちゃんに座布団二枚あげてー
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