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第23話 復元と解き放たれる力

 我はゴーレムなり!


 我が壊してしまった扉を直すために、老婆の部屋から外に飛び出した。

 そして、我は壊れた扉を直すために、駆けまわっている。でも、壊れた扉とやらは、どこにあるのだろうか? 扉が跡形もなく消えてしまっているとしたら、適当に復元していけばいいのであろうか?


 我が考えながら、タッタッタと駆けまわっていると、後ろからニューメが声をかけてきた。


「ちょっとゴーレムさん!

 待ってください! 近くの扉から順次直していった方がいいですよ!」


 我は立ち止まり、ニューメの方を向く。


『うむ、我もそう思うのだが、どの辺りに扉があったのかよくわからぬのだ。

 おぬしはどの辺りに扉があったのかわかるのか?』


「えええっ!?

 あんな勢いよく走っていたのに、特に目標がなかったんですか?

 ちなみに、今ゴーレムさんが立っている場所も、扉があった場所ですよ」


 なんと!?

 我の立っている場所にも扉があったのか。全く跡形もないから気づかなかったのだ。


 おし、そうとわかれば早速復元なのだ。

 先は長いのでがんばろう! 我がやるぞという気合いを込めて、拳を握りしめていると、ニューメが不安そうに我に質問をしてくる。


「あの、ゴーレムさん、本当に扉を直せるのですか?」


『うむ、我にかかれば、扉を直すことくらい、ちょちょいのちょいなのだ』


「うーん、本当なんですか?

 ゴーレムさんにそんな力があるなんて、ちょっと信じられないんですよね」


『ふっふっふ、まぁ、我のこの愛くるしい外見からは想像できぬかもしれぬが、我にはできるのだよ』


「いえ、別に愛くるしくはないと思いますけど」


『な、なんと!?

 この小柄なメタルボディが愛くるしくないだと。

 そんな、バカな!』


 ニューメの言葉に我が驚いていると、ニューメから「早くしてください」と催促されてしまった。

 まったく我がやろうとしていたところに声をかけてきたのはニューメなのに。


『まったく、ひどい扱いなのだ』


「自業自得です」


『なんか、我の扱いがひどくなってない?』


「ゴーレムさんには、このくらいがちょうど良いんです。

 早くしないと、このままでは何十年かかるかわかりませんよ」


『うむ、それもそうだな。

 早く直していこうではないか』


 我は両手をバッと前に突き出す。

 そんな我の様子にニューメが、ごくりとつばを飲み込み、緊張した面持ちで見つめてくる

 

 はっ!?

 ここはなんかそれらしいセリフを言いつつ直すことで、我がすごいことをやってますよアピールをした方がいいのではなかろうか!


『我、ここに消え去りし扉を元の姿に戻すべく、多大なる祈りと力を捧げる!』


 我はちらりとニューメを見る。ニューメはさらに緊張した面持ちで我を見つめてきているのだ。ふっふっふ、狙い通りなのだ。


『我の願いを叶えるべく、その姿を元に戻すなり!

 ゴーレムアーツ・復元! 扉よ、その姿を元に戻せ!』


 すると我が尽きだした手を中心にして、扉が徐々に徐々に元通りに戻り始めた。その様子を見て、ニューメは驚愕している。


「ほ、本当に扉が直りはじめています。

 うそ……信じられない」


 ふっふっふ。狙い通りなのだ。

 これでニューメも我を見直すであろう!


 しばしその状態で待つと、扉が元通りになった。


『おし! 直ったのだ!』


「す、凄いです! これは凄いことですよ!」


『ふっふっふ、我にかかればこの程度の造作もないのだ』


「壊した原因もゴーレムさんですけどね」


『ぐっ、それは仕方ないであろう! 思った以上に【万物崩壊】が強力だったのだ。

 あっ、こんなことを話している場合ではないのだ。扉の中がどうなっているのか確認せねばならんのだ!』


 我が扉をノックしようとしたところ、ニューメが「やめてください!」と大声で叫んだ。

 我はビクッとしつつ、ニューメの方を見る。


『な、なんなのだ!?

 いきなり、大きな声を出してびっくりするではないか!』


「ゴーレムさん、その扉から離れてください!

 少なくとも3メートルはすぐに離れてください」


 我は、鬼気迫る表情のニューメを見やりつつ、扉からゆっくりと3メートルほど離れた。


『こ、これでいいのか?

 なんなのだ、一体?』


「ふー、あぶなかったですよ。ゴーレムさんは、扉を直すことだけに集中してください!

 扉の中の安全確認はしなくて良いですから。安全確認は他の人に任せるので、ゴーレムさんは直した扉に関わってはダメです!」


『なっ、そんな中途半端な仕事を我にしろというのか!』


「中途半端じゃないです。ゴーレムさん、役割分担ですよ。

 安全確認は誰にでも出来ますが、扉を直すのはゴーレムさんしかできないんです。だから、ゴーレムさんは扉を直すことにだけ集中してください!」


 我は、ニューメの主張に驚く。たしかに、安全確認は誰にでもできる!

 扉を直すのは我にしかできないのであれば、我は扉を直すことに集中すべきであろう!


『ニューメよ! たしかにおぬしの言うとおりなのだ!

 我は扉を直すことに集中するよ!』


「わかってくれましたか、ゴーレムさん。

 私も、これ以上やっかい事を増やされては困るのです」


『えっ?』


「いえ、なんでもありません。

 さぁ、ゴーレムさん! 扉を直していきましょう!」


 我はニューメに任せておけと、自分の胸をどんと叩いてアピールした。ニューメの指示に従い、次の消え去った扉がある場所に移動し、【復元】をする。


 うむ、やはり、扉を直すのは少しばかり時間がかかるのだ。

 我がそんなことを考えていると、ニューメが質問をしてきた。


「あの、ゴーレムさん、質問なんですけど、呪文を唱えなくても直せるのですか?」


 我は扉を【復元】しながら、ニューメの方を見る。


『呪文? ああ、さっきのね。それらしいことを言った方が、雰囲気が出るかと思って、適当にしゃべっただけなのだ』


「えっ、なんでそんなことを?」


『いや、だから、雰囲気が出るかと思って』


「えっ」


 おし、きちんとこの扉も直ったのだ!

 まだまだ直さねば鳴らぬ扉があるから休んでいる暇はないのである。


『ニューメよ、次の扉が会った場所まで案内して欲しいのだ!』


「あ、はい。すぐそこです」


 我はニューメの指示に従って、ドンドンと扉を直していった。



 ◆ ◆ ◆



 ネンマー・ジャンツ・ボ・ラクジタカは、管理者達を動員し、ゴーレムのいた世界につながる扉を探していた。トウアクイテの占いに従うことによって、発見は時間の問題だと思われていたが、大きな壁が立ちはだかることになる。


 ゴーレムのいた世界につながる扉にはないわーポーチがかけられていたのであった。



 ◆



 ゴーレムのいた世界につながる扉を探していた管理者AとBは、おかしな扉を発見した。

 正確には、おかしな扉ではなく、とても変な柄のないわーって思えるポーチがその扉にはかけられていたのだ。


「おいおいおい、見てみろよ。

 おかしなポーチがかかってるぞ?」


 管理者Aはおかしなポーチを見ながら、管理者Bに声をかけた。


「おかしなポーチ? なんだよ、そりゃ。

 なんだ、これ? ほんとうに変なポーチだな?

 趣味が悪いってレベルじゃないぞ。誰がこんなの使ってるんだよ」


「ははは、たしかにな!

 だからこそ、こんなところに捨てられてるんだろ。

 しかし、ゴーレムのいた世界って言われてもどこの扉かさっぱりわからないな」


「あぁ、しかし、その扉が見つかるまで非常事態宣言は解除されないそうだから、見つけるしかないぞ」


 ないわーポーチは、管理者AとBに認識されることによって、今まで抑えられていた呪いが徐々に解き放たれ始めた。この空間でゴーレムの他に誰にも認識されなかったからこそ、ゴーレムはないわーポーチを簡単に取り外すことができたのだが、そのことを知る者は誰もいなかった。


 管理者AとBによって、認識され、さげすまれたことにより、ないわーポーチの能力が解き放たれることになる。ゴーレムが長い間、身につけていたことによって、強化されてしまった能力が解き放たれた。


 ないわーポーチから徐々に黒いオーラが立ち上がり始めたとき、ようやく管理者AとBは、その異変に気がついたが、その時にはもう遅かった。


「おい! 変なポーチから、黒いオーラがでているぞ!」

「なんだって!? うわ、本当だ!? なんだ、何が起こっている」


 ないわーポーチから放たれる黒いオーラは爆発的な勢いで広がって、ないわーポーチ中心に黒い空間を形成した。ないわーフィールド。管理者AとBは、即座にその扉から離れようとしたが、ないわーフィールドの中に呑み込まれたのであった。

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