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やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので竜と無双します  作者: 菊池 快晴@書籍化決定


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閑話:第一回、クライン・ロイクが最強過ぎる件について

「それでは、僭越ながら私、ミリシアがまとめさせていただきます」


 王城の一室。

 普段は勉強部屋に使われている場所、ミリシアがホワイトボードのような前に立っていた。

 右手には、黒い筆ペンを持っている。


 テーブルを囲っているのは、宮廷付きの試験を合格した面々だ。


 ルージュ、プラタ、アクリル、エウリ、そして、最後に少しだけワイバーン退治に貢献したナルシストのエヴィ。


「魔印が五本なのは言わずもがな。一番ヤバイのは度胸だと思うんだ。あいつ、どんな魔物にもビビらねえもん」


 まずはルージュが手を上げた。

 続いて、プラタも頷きながら答える。


「確かにそうよね。私の吸収(ドレイン)にも恐れることなく突っ込んでくる。一体、どういう人生を歩んだのか気になるわ」

「私の水壁の圧力にも対抗するからな。エウリはどう思ってるんだ?」


 アクリルの問いかけに、エウリが静かに口を開く。


「……信念だと思います」

「信念?」

「はい。絶対に合格するんだ、という気概が感じられました」

「ふむ、でも確かに最初に組んだとき意思は強かったかもな。ルージュとミリシアは何か聞いてないのか?」

「どうだろうな。でも、家族のことをいつも話してるぜ。好きだって」

「アクリルさんとエウリさんの言う通り、私もクラインから信念を感じる。でも、具体的にはわからないかも」


 これは、クラインに置いて行かれまいと誰かが言い出した勉強会だ。

 これから宮廷付きになる以上、ライバルではなく仲間となる。


 より理解したいという現れでもあった。

 そのとき、ナルシストのエヴィが、金髪を揺らしながら言う。


「僕のように強くなりたいんじゃないかな。みんな、そういうところがあるからさ」

「プラタ、こいつの全てを吸収(ドレイン)して街の外に捨ててくんね?」

「アクリルさん、それはできないの。だから、命だけでいいかしら?」

「……賛成です」


 とんでもない事を言い放ったアクリルに、プラタとエウリが同意。

 エヴィは、思わず光結界で自らを囲む。


 ホッと一息するも、ルージュが静かに魔滅で光結界を解除した。


「ひ、ひぃ」

「エヴィの言葉はともかく、強くなりたいってのは間違いないだろうな。みんな知ってるだろ? 俺たちの魔獣は、従者の性格を表す。俺のポリンは、力が欲しくて怪力タイプになった。ミリシアのリリは?」

「私は元々争いごとがそんなに好きじゃなかった。でも、魔法は好きだった。だから、戦闘系じゃない魔獣が生まれたんだろうね。でも、おもちは違う。絶対的な力を持っている。そう考えると、彼はがなぜそこまで強くなりたいのか、興味あるね」


 話し合いは遅くまでに及んだ。

 時折、エヴィがナルシスト全開なことを言うので、誰かに怒られながら。


 しかし最後、エヴィがいつもとは違う悲し気な表情を浮かべて、本音を話した。


「僕は幼い頃、よく虐められてたんだ」

「わかる気がするぜ」

「ルージュ……」

「冗談だよ。続けてくれ」

「それで、強くなりたいと願った。スポットライトを浴びたかったんだ。誰からも褒めてもらいたくてがんばっていたら、光結界を使えるようになった。光滅も、そして光強も。ああ、凄い、なんて僕は凄いんだ」

「プラタ、やっぱり吸収(ドレイン)してくれ」

「わかったわ」

「じょ、冗談はここまでだ。――けど、クラインには僕と同じように感じる。別に彼を否定するわけでも、決めつけるわけでもない。強くなりたいと願うまでの何かがあったんだ。それは、間違いないだろう」


 最後のエヴィの言葉で、全員が今までの事を思い返していた。

 そのとき、扉が開く。


 現れたのは、クラインだった。


「え、み、みんな何してるの?」


 ホワイトボードは既に消されている。

 だが、ミシリアが――。


「教えてクライン」

「え? な、なに!?」

「あなたは、どうしてそんなに強いの? どうして、そんなに強くなりたいと願ったの?」


 クラインは、何の集まりなの!? という言葉を押し殺して、ミリシアの質問を答えようとした。

 苦しい過去、常に抑制されていた元の世界の記憶。


 だけど、メアリーとリルド、更には世界を超えて共に頑張ってくれているおもちのために生きている。


 しかし、もう一つ。


 確かなものがあった。


「……みんなのおかげだよ。俺が強いのは魔印のおかげだ。それは否定しないし、嬉しい事だと思ってる。けど、強くなりたいと思ったり、頑張られるのは、皆と出会ったからだ。宮廷付きになれたのもそうだよ。これが何の集まりかわからないけど……俺も呼んでほしかった……」


 クラインの落ち込んでいる肩に、ルージュがぽんっと叩く。


「ハッ、お前をどうやって倒すか考えてたんだよ。呼べないだろうが」

「え、えええ!?」

「嘘よ。クライン、私たちはあなたを理解したかっただけ。でも、やっぱりわからなかった。よかったら、みんなでもう少しお話しましょう。これから私たちは同期なんだから」


 ミリシアの言葉に、全員が頷く。

 それから夜通しみんなで話し合った。


 クラインは元の世界の事を話すことはなかったが、エヴィの気持ちがわかると言って、二人には固い絆が出来ていた。


「ああクライン、君は僕を超えられるかもしれないな!」

「もう超えてるよ」

「ルージュ、そんなこと言わないの」


 宮廷付きになると研修期間に入り、任務をこなすことになる。

 これはまだスタート、でも、頑張ったね俺たち、とクラインが言って、みんなは笑顔で気を引き締めたのだった。

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