26 実はぶちキレていた話
読者さんのコメントで暴言吐かれるのは、実はそれほど傷つかないんです。
例えば「この作者頭おかしい」「こんな内容だったら死人続出だ」「現代の○○を開発した人たちの苦労を何だと思っている」「事実にそぐわない内容を、他の作家は魔法を使ってつじつまを合わせてるんだよ」「今までは我慢して読んでたけどこれは酷すぎる、この作者頭おかしい」
これはとある人の1回で吐き出された言葉ね。
初めての洗礼だったので、「あらー」と驚いたのでよく覚えていますが、怒りはべつに湧きませんでした。小説を書き始めたばかりで、なろうの他の作者さんが何を書いているのかもわからない頃だったし。まあ、運営にはご相談しましたけど。
この人は現実と異世界小説をごちゃまぜにして読んでいるんだなあ、なろうの作品を読むのがすごい楽しみなんだなあ。すぐ興奮してこうやって他人にぶつけちゃう性格なんだなあ、これじゃ学校や会社で苦労するだろうなあ。と思うくらい。
あと、「頭おかしい」がこの人の最高レベルの侮辱なんだなあ、私ならもっとぐさぐさ刺さる言葉を使うのになあと思いながら読みました。なにせ私は文字書き中毒だから実際に誰か個人に向かって書くことはないけど心の中のその手の語彙は豊富ですから。
匿名だからと実際に個人攻撃でこういうことやったら自分の負けだと思っているからやりませんけど。
そんな私がある日、自分でも引くぐらい腹を立てたのは、漢字の選択についてコメントされたときです。
私はある時期、常用漢字かどうかにこだわって、かなりの手間かけてチェックしながら小説を書いていました。
その漢字についてなにかコメントされたので(そこは忘れた。なんでも忘れる)、「常用漢字かどうかを確認して書いているんです」とお返事したら「それは校正がやってくれることだからあなたは気にしなくていい」的なコメントを書かれたときにね、ここからもう、自分でも笑っちゃうんだけど、瞬間的にぶちキレたのです。
「私がどの漢字を使ってどの漢字を使わないか、好きにさせてよ。なんで趣味の投稿サイトで私が書く小説の漢字について、あなたの指示を受けなきゃならないの」
怒りが瞬時に天井に届く勢いだったものの、もちろんそんなレスは書き込まず、大人の対応をしたのだけど、少し時間を置いたら『私、なんでこんなにキレた?』って自分で驚いたし笑っちゃって。
冷静になって考えたら、気づきました。
当時は「小説は趣味」と思って書いてましたから。趣味のことで人に「ああしろこうしろ」言われるのが本当に嫌だったみたい。
なろうに書くのは趣味であって、書籍化作業からが仕事だと思っていたんです。
普段学校や職場やご近所付き合いでは、主義主張を振り回したら波風立って余計に面倒なことになるから、笑顔でなんでもハイハイ言って協調性があるふりして動いてますけど、本心では指示されるいわれのない人に指示されるのが嫌だったわけ。
本当の本音はこういうときにいきなり顔を出すんだなって、おかしくなっちゃって、一人で感想欄を眺めながら長いことくすくす笑いましたっけ。
自分でも気づかない本音ってあるんだなあと思ったことがいつまでも忘れられず、「そういう自分でも自覚しない本音を読み取ってしまう人がいたら、どんな人生になるかしら」と思いました。
そこから『人の心を読める人の話』をあれこれメモしました。
そのときはまだ小説には書かずにメモだけして、半年以上放置していました。
後日、戦争のニュースが毎日続くようになってから、「そうだ、こんなときだからこそ優しい話を書こう。癒される話がいい」とオリビアを書き始めたのです。人の心を読めるからこそ、人と関わるのが怖くなる優しい心の持ち主が主人公の話。
人が触れられたくない本音を読んでしまう子供はどんなふうに育つだろうって思ったら怒涛のように物語が浮かんできて、文字にするのが追い付きませんでした。
今となってはあのコメントに感謝しています、と書いたらいい話っぽく終わるけど、それはないですw
同じようなコメントを書かれたら今でもきっと瞬間的にはキレると思う。あはは。




