195 ヒーリング・バック・ペイン
子供が小さいころ、仕事をすることを歓迎されていなかった私は「ならば家事は全部一人で完璧にこなせば文句は言われない」と思ったんですよ。社畜ならぬ家畜の考えです。話し合って折り合いをつけることより、全て自分が動けばいいっていう、間違った考えに陥ったのです。
朝早く起きて白米派の家族の食事とパン派の家族の朝食を作り分け、洗濯物を干し、八時前に保育園へ子供を送り、仕事をして、買い物をして家に帰って、風呂の用意やら、夕食作りやら食器洗いやらをこなし、夜の11時にやっと座れる、みたいな生活をしていました。
そんな生活が続くわけもなく、何年かしたら背中や左のお尻の奥の痛みが少しずつ強くなり、坐骨神経痛だと思ってあれこれやっていたんですけど効果がなく、ある朝、首を動かしても背中の左側に激痛が走るようになり、トイレどころか起き上がることもできずに救急車で運ばれました。
入院先で何をどう調べても異常がなく、でもうっかり身動きすると背中に焼けた鉄の棒を突っ込まれたみたいな激痛が走ると言う謎の状態になりました。起き上がれないから食事もとれず。
1週間導尿されて、おむつをされて、自主的に絶食してw、ベッドで寝てるしかなく、「詰んだ」と思いましたっけ。
絶食したのは食べたらおむつに用を足さねばならないのが恐ろしくて水分しか口にしなかったんですけど。わがままで食べない困った患者と思われたみたい。
1週間後、見かねた先生がなんとかっていう強力な痛み止めを背中と坐骨神経の出口辺りに打ってくれて「これは依存性があるから何度もは打てません」と言われたんだけど、劇的に痛みが取れて、退院しました。
あの痛みの原因はたぶんストレス。
あんなに頻繁に腰痛を起こしていた私が、楽な仕事に転職したら1度も腰痛が出なくなりました。中堅として山ほど仕事を回され、家ではワンオペもいいとこな生活でしたので、体が悲鳴を上げたんでしょうね。
見かねた友人が「ヒーリング・バック・ペイン」という本をくれました。
酷い腰痛持ちの人は高い割合で強いストレスを抱えているそうですよ。
人間は強いストレスを長期間抱えていると、体の背面に痛みが出る、という考えの本でした。
私は背骨の何番目だかに棘突起(本当に棘みたいな骨の出っ張り)ができているし、背骨の間隔が詰まっている部分が1か所あり、お医者さんはそれが痛みの原因だとおっしゃっていましたけど、今は全く痛みがないです。棘突起は変わらずあるし詰まっている背骨もそのまま。でも痛みは全くない。
人間の体って、理屈通りじゃなく、心の在りようで、あんな激痛になるんだなってのは経験して知りました。今も背面の痛みはないです。
ヒーリング・バック・ペインを入院先のベッドで読み終えた私は、退院後に頻繁に出かけることにしました。ピアスの穴を開けたのも大型バイクの免許を取ったのもその頃。
「またいつ寝たきりになるかもしれない」と思ったら、やりたいことをやっておかなくては、と思うようになりました。
『背部痛が全てストレスから』とは思わないけど、ストレスは思いがけない形で「休め」って主張して来るなとは思いましたね。
そんな経験があるので、今はストレスが溜まるようなことから逃げられる限り逃げるようにしています。
あんな痛みと寝たきりに見合う報酬なんて、この世にはないので。




