172 白猫の採血で
私、短編が苦手なんだけど、今、書いている。
淡々とした淡い恋のお話。気ままに書く小説は蜜の味だ。
白猫が今、私の机に乗って、私の顔の15センチ右側で私をガン見しているのも、喉をゴロゴロ鳴らしているのも幸せ。
この1ヶ月ほど白猫の食欲が落ちていて、心配で病院に連れて行ったら大先生が不在だった。ベテランの助手さんが採血してくれたんだけど、これが……五回も刺し直したのよ。白猫が注射針で刺されるたびにピクッと動くのが可哀想で可哀想で。
もう、すんでのところで「もういいです。注射代は払いますから、やめてください」と言いそうになるのを、奥歯を噛みしめて我慢したわ。
「ごめんね。もうあんな目には遭わせないから」
帰りの車内で、本当に悲しくて泣きそうになった。
動物に対して、私はなんでこうも感情的になるのか。
血液検査の結果は異状なし。体重も減っていない。
夏の暑い時に口の周りにたくさんのニキビができたのを思い出して、(これが9歳ってことか)と思った。
長生きしてくれよ、白猫。
9年前の夏。次男に「俺が全部世話をする! 俺が飼うから! お願い、あの子猫を助けてよお母さん!」と懇願されて、私が店のお客さんに頼んで捕獲機を借りて捕まえた白猫。
そうかな、とは思ったけど、次男はトイレの掃除をすることもなく可愛がるだけだった。まあ、私が世話を楽しんでいるからいいんだけど。
子供には何も期待しないというのが私の信条だから、それでいいの。死にそうな子猫を助けたいという心があっただけでOKよ。私は白猫に膨大な量の幸せをもらってるし。
さて、蜜の味の続きは明日にして、やるべき仕事をしなければ。




