帝の物語
(全文が現存しないため省略)
以下、編者注:おそらく当時の検閲の手が入り、全文が押収・処分の憂き目を見たものと思われる。この事件に関する様々な関係者の供述書が、製本に至らず断章の形態でのみ残っているのも、そうした事情によるものであろう。
姫の噂が遠方まで響き渡り、身分を問わず様々な求婚者や夜這い者が翁の屋敷を訪れた事、特に五人の貴人からなる求婚者達が、姫から貴重な財宝や呪物を取ってくれば求婚に応じる旨の無理難題を出され、それでも財宝を求めて還らぬ人となった事。
そして、遂に帝までが姫に逢いたくなって、翁に官位をちらつかせて無理に姫に逢った夜の事が、この章に書かれていたのだと推測される。その夜に何があったのか、帝と姫の間にどのような会話があったのかは定かでは無い。
現存する関係者の供述書の断片(ほとんど紙屑と言って良い程の細切れの紙片)によれば、帝はこの夜以来、姫について一切言及していない模様である。後は、それに前後して屋敷が厳重な造りに増改築された事、翁が雇い入れた警備の物達が昼夜を問わず屋敷を警備している事が触れられている。




