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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
2006年9月

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創作活動から学ぶ経営

 美空が書いた詩のノートを預かっていた僕は、それに合わせて彼女から支給された五線譜ノートにメロディーを書き起こした。軽音楽部用のバラードとダンス部用のポップをそれぞれ1曲ずつとの要望で、素人ながらもそれなりに頑張ったつもり。


 美空は海風になびきページをめくりづらい五線譜ノートを、玩具や獲物にちょっかいを出すネコのような手振りで押さえながら読み込み、持参したハーモニカで暗記したそのメロディーラインを一度もつかえずスラスラ辿った。すごい。変な子だけれどやはり能力は高い。自分が作った曲を演奏されるのはなんだか気恥ずかしくて、胸や頭がムズムズする。


 しかし演奏が難しいハーモニカを持参するとは。出先で鍵盤楽器が使えないとしたら僕は迷わずコンパクトで演奏しやすいソプラノリコーダーを選ぶ。学校でお馴染みのそれも、上手に吹けばなかなかさまになるものだ。


「うん、不自然な感じはしないね。良曲をありがとう」


 やはり近ごろ美空の口調は少々弾み、清らかになってきている。従来のフラットな口調ではこの先通用しないぞと、誰かに注意されたのだろうか。


「どういたしまして。あとは編曲だけど、それはボランティア部のひとがやってくれるんだっけ?」


「うん。編曲はその子に丸投げして、完成したら軽音楽部に納品するだけだよ」


「そっか」


 丸投げか。軽音楽部から委託され、ボランティア部が請け負い、ピンチになって他校の僕が孫請けになる。まるで大企業のような水平分業と外部発注だ。水平分業というけれど、下請け、孫請けと立場が弱くなるにつれて報酬は安くなる……。


 今回の場合はボランティア部の活動ということで、第一次下請けの美空たちにも報酬はないそうだが。


 なるほど、エリートたちはこうして効率的な経営戦略を身に付け、社会人になるころには僕ら下々の者をこき使えるようになるのか。


 続いてダンス部用のポップも美空に演奏してもらい、こちらも一発オーケーをもらえた。熱が入ってプロアイドル並みの難易度に仕上げたため、音楽を嗜んでいる者ならまだしも、中学生が演奏し踊るにはかなりハードだろう。もちろんディスクに音源を収録して踊るのだとは思うけれど、演奏は音楽担当の職員がやるのだろうか。


 泣いても笑っても残り2週間弱。よりによって美空が仕切るボランティア部に自らの楽曲を委ねた見知らぬ女学生たちにはベストを尽くしてほしい。


 リテイクを食らわずに済み、今回の創作活動における僕の役目は意外とあっさり終わった。再来週、見ず知らずの女子学生たちが僕らの楽曲を演奏し、踊るのを観るのが楽しみだ。

 お読みいただき誠にありがとうございます。また、更新まで長らくお待たせしてしまい大変恐縮です。


 企画作品準備のため3週間ぶりの更新となりました。


 企画作品につきましては一通り物語が完成し、現在調整中でございます。公開の際はぜひお読みいただければ幸いです!

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