ティファvsメアリー
ティファの登場により、大事がより大事になり、それを止めに入る。
「ティ、ティファ、もう、その辺でいいんじゃないかなぁ、ランスもルークもドン引きしてるし……」
「何をおっしゃるのですかリラお姉様、そろそろはっきりさせておいた方が良いのです!」
——はっきり? 何を……。
私がティファの治療をした事により、崇拝に近い感情を持っている事は知っていた。
時折、重くも感じたが、それはそれで嬉しかった……、のだが、今日のティファは暴走気味だった。
——はっきり? 何を……?
「リラお姉様の偉大さを知らしめるべきです!」
「姫さまの言う通り! リラ師範の知識こそ国宝、賢者と呼ぶにふさわしいお方!
今すぐ国内外にその偉大さを広く広め、多くの者にわからせなければなりません!」
——え?! 1人増えた!! そもそもさっき秘密は守るとかぬかしてなかった?!
「イズール、良く言いました! 貴方は物事の本質が見えている様子、それは素晴らしい事です。
いいでしょう、貴方にリラお姉様の二番弟子たる私を姉と慕う事を許しましょう!」
——はい?! 弟子見習いだし、そもそもメアリーのだし! まあ百歩譲っても姉じゃなくて姉弟子でしょ!
「ほ、本当でございますか?! ありがとうございます、ティファレンスお姉様!」
——はいぃ?! コ、コイツあっさり乗っちゃったよ!
「ティファ、これからはティファお姉様と、そして、メアリーお姉様の元で鍛錬し、真の弟弟子となれる様、精進しなさい」
「はい! メアリー師匠の元で一生懸命鍛錬に励み、必ずやティファお姉様の真の弟弟子となってみせます!」
「「「……」」」
満足げな少女ティファレンス、そして嬉しそうな20代後半のイズール……、誰か止めて。
私はランスにアイコンタクトを送るが、焦点があっておらず、ルークにそれを向けると即、目線を外され、メアリーに至っては、既にルークの影より高速で首を横にふっていた。
仕方がない……、私がこの場を収めるしかないか……。
「じゃっ、そう言う事でよろしく」
当然、そんな言葉でこの場が収まる事などなく……、ランスが問う。
「ま、待てリラ! そう言う事がそもそも意味がわからん!」
この空気が答えだろ、空気読めよ! 意味? それは私が知りたい。
「イズール伯爵、先程、古代魔法を一から学ぶと言っていたが、それはメアリー嬢からで間違いないのか?」
「はい、間違いございません」
「「……」」
ランスは疑問を投げかけ、イズールの返答にランスもルークも驚きの表情を見せ沈黙する。
程なく更なる疑問を口にする。
「で、では、其方の知識よりメアリー嬢の知識の方が優る……と?」
「はい、恥ずかしながら私は基礎すら知ってはいなかったのです、優る劣るの問題ではありません。
言葉の通り一から学ぶのです」
「「……」」
「それをメアリー嬢が知っている、と言う事か?」
「はい、実際目にして確信しております」
「「……」」
「そうか……、わかった、私も必要と判断出来るものならメアリー嬢に教えを乞おう」
「「ランス様!」ロット殿下!」」
ランスの決断に驚くルークとメアリー、メアリーの弟子にと思っていた私もランスの突然の決断に多少の驚きを感じた。
「でも、まずは古代魔法と言うものを見ない事には何とも言えないな、そもそも古代魔法は古代に存在していた魔法、現在使われていない理由があるはずなんだ。
研究と実際使うとでは違う……。
研究は古代の文明にふれ歴史を学び、それを現代に生かす事を目的としている、どちらかと言えば学問に近い、実用性があるのかと言う話ではないんだよ。
この目で見るまでは、その判断は出来ない」
珍しくまともな事を言うランス、私も気にはなっていた。
古代魔法、私の知る魔法が存在していたのであれば、何故、それが途絶えたのか。
魔法の媒体を作る事、高度な物は別だが、簡単な物であれば、特殊ではあれど難しい事ではない。
魔法は便利だ、威力、効果は魔術に比べ劣るにしても自由度、速度は十分実用性がある、そんな技術が全く跡形もなく消えるのは不自然……。
——まあ、魔法を見せるなら、アレかなぁ。
「魔法を見せるのは良いんだけど、ここで打っても大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ、ここにはかなり強めの結界が貼ってある」
それならば大丈夫か、私はメアリーとティファに目で合図を送ると、2人は打ち合わせたかの様に前へ出る。
「メアリー、ティファ、中級強化魔法を許可します、戦闘で使う魔法は下級まで、いつもの模擬戦と違い魔法を主体に戦ってもらいます」
「「はい!」」
ハキハキと返事をする2人、そして、早くも邪魔が入る。
「ちょ、ちょっと待て! ティファを戦わせるのか?!」
「そ、そうです! メアリーも怪我をしたらどうするのです!」
メアリーとティファの魔法での実力はほぼ拮抗している、下級の攻撃魔法が中級の強化魔法を撃ち抜く事はまずない。
したがって物理での攻撃でもしない限り怪我をする事はないのだ。
「大丈夫、いつもやってるから、それに怪我をしたとしても問題ないから、まあ、見てなさいって」
ランスとルーク、2人を軽くあしらいメアリーとティファの間に立つ。
「2人とも、もう一度言うけど、今回は魔法主体よ、今までの成果を存分に発揮しなさい」
「はい!」
「では、初め!」
合図と共に距離を取る両者、先手はティファだった。
6つの水の矢を出現させるとそれをメアリーに向かい放つ。
「メアリーお姉様、今日は魔法での勝負! それなら私にも勝機があります! アクアアロー!」
メアリーは放たれた5つ矢を交わすと最後の1つを拳で粉砕する。
「ティファ様、魔法主体であって格闘術が禁じられた訳ではありませんよ?」
「ず、ずるい〜!」
「「「……」」」
2人のファーストコンタクトで既に私を除く3人は言葉を失い、それを知らぬティファとメアリーはギアを上げていく。
徐々にその動きを加速させて行く2人。
やっと目で追えるほどのスピードで、いくつもの、いく十もの魔法を放ち善戦する。
ランスにルーク、そしてイズールまでもがドン引きし……、私もドン引きしてた。
水を得た魚の如くぶっ放しまくる。
火風水土光闇、6属性の魔法が飛び交い、やかで2人はハイになって行く。
「格闘の才がある分、私が有利と思ったのですが流石はティファ様」
「メアリーお姉様だって」
「「フフフフッ」」
時間にして十数分、強固な結界で守られていた試合場はその効力を失い、所々に破損箇所がみられ、それらを気にせず暴れる。
——こりゃ、怪我するかもな……。
そんな戦いに終止符を打ったのは。
「待て待て! ちょっと待て!」
少し我に帰ったランスだった。
無詠唱で、しかも無尽蔵に放たれる魔法、マナ属性を無視した多彩な属性、そして、あり得ないほど早い2人の動き。
ランスの疑問が爆発し、ルークもそれに加わった。
「先ほどの答え『それが古代魔法だから』で、納得出来る訳がないだろう!」
「そうですよ! それにこの惨状、2人に何てもん教えてるんですか!」
「え? いや、それ私悪くないでしょ?! ランスが大丈夫って言ったじゃん!」
その後、話し合いは一進一退の攻防が繰り広げられ、国の見解が出るまで、古代魔法は第三者の前での使用を固く禁じられ、更に緘口令も敷かれ、そして明日……、錚々たるメンバーとの話し合いが決定した。




