まさに瞬殺
第四公国騎士団団長ボーバール・ランスタッチ、対するは幼き少女リラ・トゥカーナ。
今、とある重要な模擬戦の審判をしている。
私は第四公国騎士団副団長クラーク・ディーボルト、騎士団総長を父に持つエリート中のエリートである。
誰しもが結果の見えた試合、しかし、知る者は知る! コレはそんな生易しいものではないと……。
私の任務は重要だ、一歩間違えれば地獄……、失敗は許されない。
緊張の一瞬、そして、遂にその時が来る。
「初め!」
「参りまし……」
「勝者リラ君!!!」
「「「……」」」
シーン……。
私と団長の見事なコンビプレー、周りは何が起きたのかわかっていないだろう……、私は、私はこの任務を成功させたのだ。
「ゆ、指輪は?! 発動などしておらんだろうな!」
「うん、大丈夫」
団長の言葉に少女が答える。
ふぅ、最悪の事態はまぬがれた様だ、あんな物が発動すれば自宅が滅びかねない。
俺はフッと胸を撫で下ろし……。
「でも、今後暴発する可能性がなくはないかな?」
「ま、待って下さい! 約束が違うじゃないですか!」
俺は一瞬我を失い少女に詰め寄る。
再度言うが、あんな物が発動すれば自宅が滅びかねないのだ。
「解除するのは危険な方法、わりかし安全な方法、超安全な方法があるけど」
「「超安全で!!」」
私は騎士、何を犠牲にしてでも安全は確保しなくてはならない、勿論、団長も同意の上、俺たちは少女の話を必死に聞く、これこそ失敗は許されないのだ。
超安全な方法、それは指輪を持つ妻に宝石の付いた指輪を送る……。
そうすれば、例の指輪を渡して来るのだとか……、疑問に思い問うと、そう言う魔法がかかっているのだとか……、眉唾ものだが私たちに猶予はない。
荒れるその場を収め隊長と共にアクセサリーショップに激走した。
◆◇
何が起こったのか理解しないまま模擬戦が終わり、第四公国騎士団、団長、副団長共に血相を変えその場から消えた。
——リ、リラお嬢様は、何を……。
「ルーク、何が起こったんだ、私には全く見えなかった……、まさかリラは、あの一瞬でボーバール卿に一撃を与えたのか?」
ランス様は真剣な表情で私に問う。
私も何が起こったのか理解していない。
それにクラーク殿の様子もおかしかった、ジャッジが早すぎる、クラーク殿には何かが見えていた?
変わった事と言えば、模擬戦開始直前、リラお嬢様は何かを見せる様に手を前に突き出した、そして……。
——リラお嬢様は笑った……、そう、笑ったのだ!
「ランス様、おそらくリラ様は何もしておりません、ボーバール殿とクラーク殿は……、もうリラ様の毒牙に侵されています」
「え?」
「模擬戦をするまでもなく勝敗は既に決まっていたと言う事です、間違いありません、あの2人はリラ様に秘密を握られた……」
そんな話をしている最中、私はリラ様と話しているイズール殿に気がつく。
イズール殿も我々に気が付いた様で、足早に駆け寄って来る。
直後、私は背中の方に気配を感じ振り返ると、そこには身を隠す様な素振りを見せるメアリーさん……。
——ん? ああ、イズール殿は伯爵と言う爵位を持つ身でありながら最近しつこくトゥカーナの屋敷にやって来た、メアリーさんが苦手意識持つのも無理はない。
「ランスロット殿下お久しぶりでございます、ギルドの闘技場ではお見かけしたのですが挨拶もなく失礼いたしました」
「珍しいなレイナード伯爵、研究室より滅多に出ない有名な其方に外で、しかもこんな所で合うとはな」
イズール殿はランス様のおっしゃった通り、自宅に古代魔法の研究室を設け、滅多に外に出る事のないお方。
登城、もしくは古代魔法学の講義以外で会う事など少ない。
しかしそんなイズール殿は最近、研究室にあまり顔を出してないと聞く。
「はい最近、私の古代魔法学が未熟である事を痛感させられまして、一から学び直そうと、ランスロット殿下、それにルーク殿、これからよろしくお願いします……、あれ?」
——こ、これからよろしくお願いします?
イズール殿はそう言うと辺りをキョロキョロとしだす。
そして、私の後ろに隠れているメアリーさんを見つけると。
「メアリー師匠!」
——メ、メアリー、師匠……?
「し、師匠と呼ばないで下さい!」
「ではこれからは先生と!」
「せ、先生もやめて下さい!」
「それはいけません! これから教えを乞うのです、そこははっきりさせませんと」
これは……、どう言う事でしょう、古代魔法の第一人者である賢者イズール・レイナード殿が教えを乞う?
——何の?
私は訳も分からずリラお嬢様に目を向けると、リラお嬢様は親指を立てニカッと笑う。そして察した。
「レイナード伯爵……、教えを乞うと言うのは……」
ランス様も理解していないご様子、普通に考えて意味がわかりません。
「古代魔法ですよ! ランスロット殿下もお人が悪い」
「ん? どう言う……、言っている意味が全くわからないのだが……」
「そんなしらを切っても私は騙されませんよ! 騎士爵の娘、そのメイド、ランスロット殿下が仲良くされるのには変です、不自然過ぎます。
そして、ギルド闘技場で見た通常の魔法でない魔法……、私はピーンと来ました、秘密があると」
——え? この人何言っちゃってるの……?
「そして連日、トゥカーナの屋敷に通い詰め遂にその真相がわかったのです!
2人の少女は古代魔法の秘密を知っている、そして、それはランスロット殿下、いえ! 陛下もご存じなのでしょう!
密かに2人を囲い、他国への情報漏洩を防ぎ、更には古代魔法の教えを乞う為、メアリー先生の弟子見習いとなった……、大丈夫! 秘密は当然守りますし、リラ師範の推薦も頂きました」
——リ、リラ師範?
「「……」」
「共に古代魔法の真相に近づこうじゃありませんか!」
そう言うと私たちの前に握手を求める様に手を差し出す。
何事か整理もつかないまま、その話を影で聞いていた少女が現れる。
「流石は賢者イズール・レイナード! リラお姉様の偉大さに気が付き、メアリーお姉様の実力に気が付くとは、流石、只者ではありませんね!」
何事が整理もつかないまま、その話を影で聞いていたティファランス王女が現れる、そして、私とランス様を蚊帳の外に、その寸劇は更には続く。
「あ、貴女様は!」
「私はティファレンス・フォン・ロンフェロー! 第一王女にしてリラお姉様の偉大さにいち早くきがついた者! そして!」
ティファレンス王女は何故か指にはめられた指輪を見せる様に高々を手を上げる。
「そ、それは! まさか!」
「そう! 知る人ぞ知るリラお姉様の弟子の証!」
「お、王女様! な、なんと、羨ましい!!」
「そうでしょう、そうでしょう、しかしイズール、貴方は1つ間違えています!
リラお姉様の偉大さは魔法の知識だけにあらず! 医術の知識に加え様々な学術!
古代魔法だけを学ぶつもりであるならば弟子入りの件、辞退しなさい、我が逆天・無双流はそんなぬるい所ではありません!」
——な、何があっ始まったのでしょう……、古代魔法? リラ師範? 弟子の証? 逆天・無双流?
理解が出来ない状況、いえ、リラ様が関わる事にすんなり理解出来る状況などなかったか。
私とランス様は呆ける事しか出来なかった。
読んで頂きありがとうございます。
次回投稿は1月17(月)の予定です。
多くの皆様に読んで頂ける様、精進して参ります。
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