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誇りと虚栄

 王都中央区にある聖ローナン大聖堂の裏口、レダの帰りを迎えるレント・カーリー司教の姿があった。


 「お帰りなさいませレダ様、例の少女は……」


 「ええ、思った通り向こうの世界からの転生者……、それも私が()()()()()()……、だったわ」


 薄暗い教会の中、歩きながら静かに語り合う2人。


 「そうですか、あの無才の()が……、で、どう致しましょう」


 「何も……、今、私たちが動いて彼女らに知られる訳にはいかないでしょう……、魔導門の書を渡せただけ良しとしましょう」

 

 「し、しかし!」


 「あら、うれし、私に口答えを?」


 「え?」


 その夜、聖ローナン大聖堂では悍ましい女性の言葉とムチの音、男の悲鳴が長時間続いた。


 パチン!


 「はっ、はーん!」




◆◇◆◇




 夜があけ、私とメアリーは早朝鍛錬に汗を流していた。

 木の影からはルークが顔を出している、最近、なにやら監視されている様だ。


 「リラ様……、ルーク様が……」


 「気が付かないフリをしてあげて、一生懸命隠れてるんだから」


 メアリーはマナコントロールのマナ吸収、マナ循環、そしてマナ放出をある程度マスターし、周囲のマナも感じ、見る事が出来る様になっていた。

 ルークの行動は私たちに筒抜けなのである。


 「うん、ちゃんと出来てる、吸収は早くなったし、循環も自然、放出はまだまだだけど、ここまで出来ればあとはメアリーの頑張り次第」


 「ほ、本当ですか?!」


 「うん、でも次の段階に行くには、この3つを完璧にマスターしたからと言って行ける境地ではないの、今後は引き継ぎマナ放出の鍛錬と、この前教えた魔法の練習をね」


 「はい!」


 メアリーには真の魔法を3つ教えた。

 火魔法と風魔法、もう1つは光魔法である。

 メアリーのマナ属性は火、魔法の練習をしていてもバレない為の火魔法、それと相性の良い風魔法、そして、万が一の為の光魔法。

 どれも事故が起きても大した事のない初級や下級魔法だ。

 まあ、メアリーの実力ならば初級や下級程度、事故を起こす事はまずない。


 ——うんうん、これで、例の計画に支障はないでしょ……フフフッ。


 私は早朝鍛錬で汗を流し1人で王城へと向かう。

 

 今日はローレンス国王にティファの病状の報告する日、完治はまだだが私の手を離れ、後はティファ次第、マナ循環も出来る様になっている、完治したと言っても過言ではないのだ。



◆◇



 「じゃ、じゃあ、もう安心しても良いのですか?!」


 王城にある王家のプライベートルーム、王妃であるフローラが私に詰め寄る。

 その場にいるローレンス国王やランス、アルフレッドも私の返答を待つ。


 「はい、もう心配ありません」


 「そうか……、リラよ、改めて礼を言う。本当に感謝する……」


 初めて見せたローレンス国王が頭を下げる姿、いつも報告の時にいたロダンさんが居なかったのは、そう言う事だったのだろう。

 改めて言われると少し小っ恥ずかしい。

 

 「い、いや、ティファは友達だし……」


 「そうか、そうだったな。

 それで、礼と言う訳ではないがリラの身分証を王家で発行する事にした」


 ローレンス国王がランスに目配せすると、1枚の用紙を私の前に置く。


 「それにサインとマナを流してくれ」


 「お、王家で発行?」


 「ああ、ワシの代では初めてになるが、国の歴史的にはそう珍しい事ではない。

 なぁに、リラ、お前の知識は貴重だ、我が国のマーキングとでも思ってくれ」


 ——マ、マーキング?!


 6歳になると身分証を持つ義務が課せられる、そしてこの身分証には様々な役割があった。

 身分を示す物であるのと他に、預金をクレジットとして使う事が出来、国としては民の管理がしやすく、犯罪の抑止力にもなっている。

 身分証には大きく分けギルド発行、貴族院発行、国から発行が認められた名家発行の3つ、そして、それぞれに種類もあった。


 「持ち歩く身分証カードには発行元は記載されんし、内容が確認出来る機関には守秘義務を課してある、問題なかろう?」


 「は、はあ……、それなら……」


 私はあまり気が進まないが、それにサインし、マナを流す。


 「では、このカードにも……」


 こうして私は身分証を手に入れ、この瞬間、名実ともにこの国、ロンフェロー公国の国民となった。

 



 話も終わり、城内を闊歩し今日はティファの部屋、ではなく訓練場へ向かう、招待状と称しクラークに呼び出されているのだ。

 城内の闊歩はもう、慣れたもの、行き交う使用人たちには愛想を振り撒き、騎士たちに挨拶を振り撒き、それは私だけでは無い、皆の通常となっていた。


 訓練場に着くと流石は公国騎士、技術もさることながら、持久戦も想定された厳しい訓練が目に飛び込む。

 その訓練の指揮を取っていたのが、第四公国騎士団、副団長クラーク・ディーボルトだった。


 「また腕が下がってきているぞ! 戦場まで数週間、いきなりの戦闘も考えられる、そんな事では公国騎士は務まらんぞ!」


 私はそんな光景を眺めていた。

 反復訓練により皆、基本的な強さを持ち、デローグ、ましてやアデルなど足元にも及ばない実力を1人1人が持っている。

 そんな光景を眺めていた私の背後に気配を感じ目を向けた。

 

 「おい嬢ちゃん、ここはお前さんが来る様な所じゃねぇーぞ」


 そこにはつるっぱげたオッサン、ガタイが良く上等な軍服を着た軍人が不機嫌そうに私を見下す。

 城内にいる子供は少ない、ましてや私の様な庶民も着る様な服を着ているのは住み込みで働いている使用人の子供くらいしかいなかった。


 このオッサンはそんな子供の1人とでも思ったのだろう。

 

 私はこのオッサンを知っている、魔物大進行(スタンピード)の時、東門の先でゴブリンジェネラルと戦っていた……。


 「そうですか、お邪魔しました……」


 (かん)に触るオッサンだが好都合、と思いその場にを離れようとするも、オッサンに気が付いたクラークが駆け寄って来る。


 「ランスタッチ団長!」


 「おう、書類の山がやんなってな、どうだ久々に俺と一本やらねぇーか?」


 「はい、お相手致します……ん?」


 こっそりフェードアウトを試みた私にクラークが気がつく。


 「ほう、逃げずに来たか」


 「ん? クラーク、知り合いか?」


 チッ……。

 

 クラークは今までの経緯をランスタッチに話す。


 「ほぉう、賢者や副団長と言う肩書きは虚栄(きょえい)か……、で? 虚栄でものを言うなと、じゃあなにか? 俺は騎士団長だがそれも虚栄か?」


 「そうですね」


 「な、なんだと! この野郎!! 騎士団長と言う地位はそんな軽いもんじゃねぇー! いや、騎士と言う地位がそもそも軽いもんじゃねぇーんだ!」


 「だ、団長!」


 ランスタッチの怒りが爆発し、クラークが止めるもそれは治らない。


 「ガキだからって言っちゃならねぇ事がある! はなせクラー……」


 「オッサン歳いくつよ?」


 「あぁん?! テ、テメー!!」


 私の言葉がランスタッチを更に激昂させる。

 騎士には騎士の矜持があるのだろう、それは私も理解している。

 ただこう言う(やから)は本当の矜持と言う物を理解していない。

 

 「見た感じ40代……、半ばって所かな。

 知ってる? 職人さんの業界では40代でやっと一人前て呼ばれてるんだよ?

 匠って呼ばれるまでに苦労や努力があるかわかる?」


 「あぁん?! だからなんだって言うんだ!」


 「わからない? 騎士見習いも騎士団長も同じ騎士、匠と言われようが職人は職人、肩書きなんてそれ界隈(かいわい)の人とっては尊敬すべき人なんだろうけと、以外にはただの虚栄!

 もしそれでも認めてほしいなら……。

 全てに敬意を払え! 肩書きに負けない結果を見せろ! 話はそれからなんだよ! 小僧が!!!」

 

 


 

 読んで頂きありがとうございます。


 次回投稿は1月3(月)の予定です。

 

 多くの皆様に読んで頂ける様、精進して参ります。


 応援宜しくお願いします。

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