意外な訪問客の迷惑な親友
メアリーと一緒に応接の間に入ると、その場の目線が私たちに集まる。
沈黙の中、まず口を開いたのはイズールだった。
「君たち、闘技場で面白い魔法を使ってたね、アレはどう言う仕組みなんだい?」
——はあ? 挨拶も無しに何言ってんだ?コイツ。
そもそもミーシア側にいた人間にペラペラと話す訳がない。
「さぁ? どう言う仕組みなんですかね、ご自分で考えたらいいんじゃないですか?」
「「「!!!」」」
一同が凍りつく。
私は家にいる時は、極力言葉を選び無礼な奴らを撃退して来た。
上級貴族だからなのか余裕があり、尚且つ上から目線、なんかコイツは鼻に付く。
百歩譲ってアイツの家ならまだ許そう、でもここは私の家、私のテリトリー、ここでそんな態度を取るなら容赦しない以前の問題……。
「リ、リラ!」
母様が驚いた様子で声をあらげるが、今回はスルーする。
「礼儀には礼儀を持って答えましょう、しかし、無礼な人とは話す価値もありません。
伯爵だか何だか知らないけど馬鹿にするにも程があるわ、メアリー、この人の相手はしなくても構わないわ、行きましょう」
「し、しかし……、は、はい」
私はメアリーを連れ不機嫌そうに応接の間を後にする。
《トト、彼を見張って》
「キ、キミ! ちょっと待って!」
応接の間に取り残された3人は居た堪れない表情を見せ、目が会い変な空気が流れた。
「娘が申し訳ありませんでした」
母様がイズールに頭を下げると、たまに見せるカッコいいルークが姿を表す。
「ミラ様、謝る必要はありません、リラお嬢様は何一つ悪くはないのですから」
ルークの言葉にイズールとミラは驚く。
「リラお嬢様は幼少の頃より、周りから無才と蔑まれて来ました。
才に恵まれぬ者たちがどう扱われて来たか、貴方も少なからず見て来たはずです。
しかし、それにめげる事なく多くの書物を読み漁り、学び場に通う前にも関わらず既に魔法を習得され、下町でリラお嬢様を無才と馬鹿にする者はいません。
そして、今日、また更に多くの人たちがリラお嬢様の実力を認識したでしょう。
それは全てリラお嬢様の努力によるもの、そんなリラお嬢様に貴方は敬意すら見せず、教えを乞うでも無く……、お怒りになるのは当然の事。
この場にミラ様がおいでで無かったら、とうに私が追い出している所です」
——ル、ルーク! アンタたまには良い事言うじゃないか!
沈黙する2人、イズールは先程話した内容を思い出してか徐々に申し訳無さそうにする。
「ぼ、僕はただ、あの娘が使った魔法が気になって……」
——ぼ、ぼく?! まあまあな歳だよ?!
「好奇心は良い事です、その好奇心が貴方を偉大な賢者へと導いたのでしょう。
しかし、その好奇心や現在に至る努力を知らぬ者に先程、貴方が言った言葉を貴方自身に投げかけられたなら、素直にお答えになりますか?
しかも、相手は6歳に満たなく無才と蔑まれた子供ですよ?」
伯爵位を持つイズールに対し一介の執事、しかも若く、騎士爵の執事が意見を言う、普通では考えられない事だが、イズールは黙ってそれを聞いた。
きっとルークが他国の要人である事を彼も知っているのだろう。
イズールはルークの話を真剣に聞き、深く反省している様だった。
それから数日……。
イズールは毎日私に会いに来た、当然、簡単には許すつもりはない。
私は会う事を拒み続けていた。
「リラお姉様〜!」
恒例となった王城での鍛錬、私が城入るとティファが出迎える。
ティファの病状もほぼ完治し、そんな光景も日常となっていた。
「おはよー、ティファ」
「私の出発が1週間後に決まりました……、リラお姉様とメアリーお姉様は何時ファストーロに向かわれるのですか?」
ファストーロにはロンフェロー公国王家の別邸がある、一陣としてティファ専属の使用人たちが既に旅立ち、準備が整い次第ティファも旅立つと聞いていた。
ファストーロ王家にはロンフェロー王家の親族も少なくない、先んじ挨拶まわりするのだとか。
「私は2週間くらい後になるみたい、それとメアリーはここに残る事になったの」
「え?!」
「メアリーは国立ロンド学術校の高等学園に進学してもらう事にしたわ、それにこっちでお願いしたい事もあるし」
「その事なのですが考え直して下さい! 私もリラ様のお供を!」
メアリーは納得していなかったが母様と話、今後の事を考え、そう言う決断になった。
私は国王が認めたティファの友人、今はティファと仲良くする事に意義を唱える者は少ない、しかし、今後は違う、ティファが社交界に行く様になれば、他国との交友もあり、そこに貴族でもない中等学園卒の者を連れ歩く私は問題になって来る。
メアリーには侍女か文官の資格を取ってもらわなければならないと結論に至った。
それはローレンス国王の意向でもあった。
「メアリー、3年だけ我慢して頂戴、そうすれば国王のお墨付きがもらえる、そしたら気にする事なく、また3人で会える様になるから」
「わかりました……、必ず侍女の資格を取りリラ様の元へ馳せ参じます!」
——うんうん、頑張ってメアリー。
「3年……、では3年待てばメアリーお姉様は名実共に私のお姉様になると言う事ですね!」
——ん? ティファそれは違う……。
ティファの部屋へ向かう最中、そんな話をしていると、大声が聞こえてくる。
「それは母親たる貴女が取り持つべき事でしょう! イズールは独立した伯爵なのですよ!」
——ん? 母様と……だれ?
母様が困り顔を浮かべながら、男性に言い寄られていた。
深い青色の髪に赤いコルカロリの花と剣がモチーフの紋章付けた軍服、公国騎士団の騎士、老けて見えるが若そうでもある、男性だった。
「クラーク、大声が遠くまで響いています、ここは王城内ですよ」
それに気が付いたティファが割って入り、母様を仕事場に戻る様促した。
言い争いと言うか、このクラークと言う人物が一方的に話していた内容は、親友であり学友であるイズールをとある家の娘が拒絶している事への抗議。
そう、モロ私の事だ……。
そして、私が当の本人だと知ったクラークは怒りにも近い眼差しを向けた。
「お前がミラ殿の娘か、イズールを何故拒絶する! 彼は世界も認める偉大な賢者なのだぞ!」
——何故拒絶すると言われても……。
「拒絶する事に肩書きは必要ないと思いますが?」
「な、なんだと?! お前は知らないだろうが私は第四公国騎士団副団長で、父は騎士団総長を務めているのだぞ、子供と言えど発言には気をつけた方がいい」
——ああああ! なんなんコイツ!! 面倒くさい、とても面倒くさいけど、売られたら買うのが私のポリシー!
「ご忠告ありがとうございます、ではお礼に私からも、親御さんの意を借りる発言はお気をつけになった方がよろしいですよ、凄く小物に聞こえます」
「なっ、なんだと「お父上が引退されたら、父は元騎士団総長だったご発言するおつもりですか? ご自身が引退されたら?
大事なのはご自身がなしえた結果のみ、虚栄など時がたてば綻び、壊れ、無に帰ります。
まあ、しかし、虚栄を張るもの同士であれば意味を成すのかも知れませんね、側から見れば滑稽でしかありませんが、では失礼、行きましょう」
私たちのこの後は日常だった。
ティファの部屋で談笑し、マナコントロールの鍛錬し、庭に出て武術の鍛錬、そしてまた談笑し、帰路へとついた。
しかし、帰宅した私を待っていたのはクラーク・ディーボルトからの招待状であった。
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次回投稿は12月27日(月)の予定です。
多くの皆様に読んで頂ける様、精進して参ります。
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