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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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対決

 翌朝、大隊長達ともう一度坑道図を見て、どこかに違和感がないか確認をする。


「坑道は入り組んでいるが、道を間違えたとは思えんな」


「そうですね。それに、魔物だらけの坑道を行き来するのも変なんですよね」


「確かにな」


 ここを拠点にしているのならば、もっと楽に外に出られるようにしているだろうとの結論に至った。


「隠し部屋か」


 と、オルターネンが呟く。


「ねーねー、マーギン。前みたいな仕掛けがあるんじゃない?」


 カタリーナは謎解きが好きなのか、マーギンの横から坑道図を覗き込みながら、ふむふむと何か分かったような顔をする。


「謎はすべて解けたわ!」


 どこでそんなセリフを覚えたんだ?


「ここだけ坑道がないのって、変よね。きっとここが隠し部屋なのよ」


 坑道は入り口からまっすぐ奥に向かって、途中からいくつかに分岐している。マーギン達は一番奥まで続いている道を選んで進んだのだ。


「そこって、サラマンダーが出たポイントより入り口に近いじゃないか」


「そうよ。ここまでなら、魔物が出なかったじゃない」


「確かにそうだけどさ」


「壁とかもっとよく見て探せばいいじゃない。どうせ奥に行くにしても通り道なんだし」


 ということで、壁に何か仕掛がないか探しながら進むことにした。


 ぺたくたぺたくた。


 あちこちを触りながら進むカタリーナ。バネッサとカザフは天井を見ながら進む。


「あっ……」


 壁を触っていたカタリーナが声を上げた。


「どうした?」


「ここ触ってみて」


 と、カタリーナが言うので、マーギンが確かめる。


「なんか変なのか?」


「他の所より少し温かいの」


「えっ?」


 一箇所だけ触ってると気づかないほどの差だが、他の所と触り比べると確かに少し温度が高い気がする。


「本当だな」


 だが、何か仕掛があるようには見えない。


「ちょっと静かにしててー」


 と、トルクが地獄耳を使い、壁に耳を当てる。


「音が聞こえる」


 マーギンも地獄耳を使って壁に耳を当てた。


「モーター音かなんかだなこれ。カタリーナ。ビンゴだ」


 そうマーギンが言うと、とても満足そうな顔をした。しかし、隠し部屋に入るための方法が分からない。


「壊すぞ」


 ドゴッ。


 マーギンが思案する間もなく、大隊長がヴィコーレで壁をぶち抜いた。何か仕掛があったらどうすんだよ? とマーギンは突っ込みかけたが、特に仕掛はなかったようだ。


 もうもうと舞い上がった土煙が収まると、パチパチパチパチと、拍手の音が聞こえた。


「よくたどり着きましたね、ノウブシルク王」


 壁の向こうは機械がたくさんある近代的な部屋になっており、机に座る男が拍手をしていた。


「お前は、第一王子だな?」


「元、と言った方が正しいですね」


 元第一王子は慌てる素振りも見せない。それにこいつは……と、マーギンは固まった。


「どうされましたノウブシルク王? 私に用があったのではないですか?」


 マーギンが目にした男の髪は長く、後でくくっているがフワフワのくせっ毛。しかもこの顔立ち。


「お前、トルクの父親か?」


「ほう。私の子はトルクと名付けられたのですか。無事に成長したようで何より。では、トルク。こちらに来なさい」


「誰がお前の元になんかっ!」


 そうマーギンは叫んだが、トルクの様子がおかしい。フラフラと男の元へと歩いて行こうとする。


「トルクっ、どうした」


 目の光が消えたトルクがマーギンの顔を見た。


 ぎゅっ。


「ぐっ、お前何を……」 


 トルクが見えない手でマーギンの首を掴んだ。


「いいですよ。実に素晴らしい。やはりお前は私の最高傑作だ」


 その様子を見た元第一王子が手を叩いてトルクを褒める。


「何やってやがんだっ!」


 バネッサがトルクに向かってオスクリタを投げた。


 ぎゅっ。


「てっ、てめぇ……」


 オスクリタを見えない手で掴み、そしてバネッサの首も絞める。それを見た大隊長とオルターネンがトルクを止めようとしたときに、全員が見えない手で掴まれた。


 トルクのやつ、これだけ同時に見えない手を出せるのか……


 首を掴まれているマーギンはトルクの本来の力を初めて知る。


「そのまま殺しなさい」


 そう指示されたトルクの見えない手に力が入る。しかし、トルクに攻撃ができないマーギンは身体強化で絞め落とされないようにするのが精一杯だ。


 《シャラ……ンラン》


 そのとき、カタリーナが振り絞るような声でシャランランを唱えた。


 フッ。


 一瞬、見えない手の力が緩んだ。


「目を覚ませ馬鹿野郎っ!」


 ビタンっ!


 マーギンは見えない手から逃れ、トルクにビンタをした。そのことで全員を掴んでいた見えない手が消えた。


「トルクっ、俺だ。マーギンだっ。分かるか!」


 トルクの肩を激しく揺さぶるマーギン。


「ま、マーギン……」


 トルクの目に光が戻る。


「死ねいっ!」


 大隊長とオルターネンがその隙を突いて、元第一王子に斬りかかった。


 ガキンっ。


「なんだと?」


 ヒュンヒュン。


 バネッサのオスクリタも攻撃を仕掛けたが、すべて弾かれる。


「無駄ですよ」


「プロテクションか?」


「御名答。いや、実に便利ですねこの魔法は」


 プロテクションを使った元第一王子をすぐさま鑑定するマーギン。しかし、光属性の適性はない。


「お前、魔導具でプロテクションを出したのか」 


 マーギンが眉を顰めて睨みつける。


「御名答。さすがノウブシルク王になられただけのことはありますね。実に聡明だ。あの無能な王よりずっとノウブシルク王に相応しい」


「実の父親を無能呼ばわりするのか?」


「それが何か?」


 と、微笑んだ。こいつは何を考えてやがる……と、マーギンは理解ができない。


「トルク、こっちに来なさい」


 と、命令されるとまた目から光が消える。


 ドゴッ。


 マーギンはトルクの腹を殴って気絶させた。


「おや、子供には甘いと伺ってましたが、随分と酷いことをなさる。あー、そう言えばトルクはもう成人する年齢でしたか」


「きさま……」


 マーギンから怒りの魔力が溢れ出す。


「では、こちらはどうですか?」


 ズガガガガ。


 《プロテクション!》


 ストーンバレットが無数に撃ち込まれたが、咄嗟にプロテクションを出して防いだ。ストーンバレットを撃ったのは、他の部屋から出てきた子供達。


 ズガガガガ、ズガガガガと、プロテクションで防がれようがお構いなしに撃ってくる。


「さ、どうしますか、ノウブシルク王。このまま撃ち続けると、子供達は魔力切れで死んでしまいますよ」


 自分の意思ではなく、命令によって撃たされているストーンバレット。恐らく、本当に魔力が尽きるまで撃ち続けるのだろう。


 そう理解したマーギンは覚悟を決めるのであった。




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― 新着の感想 ―
ここまでで1番のクズキャラが出てきた
全体的にマーギンは優しいんじゃなくてただ甘いように見えるな。ここで甘さを少しは捨てられるかな。
トルクの謎キャラがここに繋がるのか(*・ω・) 属性的に洗脳なり命令なりを乗っ取れたらええなぁ(*・ω・) (希望的観測
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