敵は子供
「マーギンっ! てんめぇぇ」
「マーギンさんっ!」
マーギンが攻撃を食らったことで、バネッサとアイリスが飛び出して、子供に攻撃を仕掛けた。
子供を襲うオスクリタとファイアバレット。
《プ、プロテクション……》
血まみれのマーギンが二人の攻撃を防いだ。
《スリープ!》
そして、子供を眠らせる。
「ゴホッ、ゴホッ。やめろ。それより他に警戒を……」
それだけを言い残して、その場で倒れたマーギン。
「きゃぁぁっ、マーギンっ、マーギン!」
「マーギンっ!」
カタリーナとローズもワンテンポ遅れて飛び出した。
ズカ゚ガガガッ。
ギギギンっ。
狙われたカタリーナの盾になってストーンバレットを受けたローズ。
「ちいっ、お前ら、姫様を守れ」
いつの間にか他の子供に囲まれているマーギン達。オルターネンはカザフ達にカタリーナを守れと命令し、大隊長と共に反撃に出る。
ズガガガガっ。
「遅いっ!」
ストーンバレットを撃ってきた子供の腹にパンチを食らわすオルターネン。大隊長はファイアバレットをヴィコーレで子供ごと吹き飛ばす。
「ローズっ、ローズ! 大丈夫っ?」
「だ、大丈夫です。それよりマーギンを……」
鎧で致命傷を防げたものの、大きなダメージを負ったローズ。しかし、至近距離で攻撃を食らったマーギンの方がダメージが大きいと判断して、先にマーギンをの方を診てくれと言った。
「許さないっ!」
血だらけのマーギンを見て、ブチ切れたアイリスが無数のファイアバレットを浮かべて、攻撃してきた子供達を撃とうとした。
ギュッ。
「や、やめろアイリス」
「マーギンさん、だって、だって、あいつらがマーギンさんを……」
マーギンはファイアバレットを撃とうとしたアイリスを後ろから抱きしめた。
「魔法で人を殺すな……頼む……」
血まみれのマーギンの手で抱きしめられているアイリスはファイアバレットを消した。
「マーギンさん……」
アイリスはマーギンの方へ振り向く。
「俺は大丈夫だ。ヘマしたのは確かだけどな」
そう微笑んだマーギンは手を離して、その場に座り込んだ。他に攻撃してきた子供達はオルターネンと大隊長とロッカが制圧したようだ。
「マーギン、お前、大丈夫なのかよ」
バネッサも心配そうな顔でマーギンを覗き込む。
「咄嗟に思いっきり身体強化をしたから、致命傷にはなってない。気持ち悪いだろうから見るな」
そう言って、マーギンは傷口に指を突っ込んで、めり込んでいるストーンバレットを取り出そうとする。
「くっ、くそ。この……ちっ、ダメだ。上手く力が入んねぇわ」
顔を咄嗟に腕でガードしたため、腕に無数の穴が開いているマーギン。そのため上手く力が入らないのだ。
「マーギン、痛くねぇのか?」
その様子を見ているバネッサ。
「痛みは魔法で止めてる。その影響もあるかもしれん」
「なら、うちがやってやんよ。本当に痛くねぇんだな?」
と、何度も確認してから、傷口に指を突っ込み、血で滑ってうまく掴めない弾は、傷口を広げ、口を付けて歯で噛んで引っ張り取り出していくバネッサ。アイリスはその様子を泣きそうな顔で見ていた。
「ローズも怪我したのか?」
向こうでカタリーナがローズにシャランランをしている。
「カタリーナが治癒してるから大丈夫だろ。お前の方が重傷だ。ったく、油断し過ぎなんだよ、てめぇは」
バネッサは血と弾をペッと吐き出して、すべてのストーンバレットを取り出していく。
「捕まえたっ!」
そのとき、トルクが大きな声を上げた。
「どうした?」
オルターネンと大隊長が倒れた子供を訝しげな顔をして調べていたが、トルクの大きな声に反応した。
「隊長、あの影に隠れていた人を捕まえた」
トルクは見えない手で誰かを捕まえたようだ。
「バネッサ、一時中断だ」
と、マーギンは起き上がろうとした。
「隊長に任せておけ。お前はまだ血が止まってねぇだろうが」
「しかし……」
「仲間を信じろ」
と、バネッサに言われて、マーギンは大人しく寝転びなおした。
「マーギン、大丈夫?」
カタリーナがローズと一緒にこっちにやってきた。そして、バネッサの血まみれの顔を見てぎょっとする。
「ローズは大丈夫なのか?」
「も、もう治癒してもらったから、平気だ。バネッサ、血を吸い出してるのか?」
と、ローズに聞かれても、黙々と指で傷口を触り、口を付けて歯で弾を取り出すバネッサ。
「こうしてバネッサが弾を取り出してくれてる。それが終われば自己治癒するから大丈夫だ」
「くそっ、なんだこれは。離せっ!」
バキッ!
トルクの見えない手で掴まれて身動きできない男にオルターネンが尋問しようとしたら、大隊長が有無を言わせず顔面をぶん殴った。そして、首根っこを掴んでズルズルと引っ張りながら戻ってくる。
「大隊長、死にますよ」
「手加減したから大丈夫だ」
男はズルズルと砂利の地面を引きずられてもピクリとも動かない。オルターネンはその様子を見て、もう死んでいるんじゃないかと思っていた。
ロッカ達が意識を失っている子供達を集めて寝かせているところにみんなが集まった。
「マーギン、生きてるか?」
と、オルターネンに聞かれる。
「なんとか」
「お前は女子供に甘すぎるぞ」
「申し訳ない」
マーギンは自分とバネッサとアイリスに洗浄魔法をかけてから、2人に支えられてこっちに来たのだ。
「マーギン、これはどう思う?」
意識がない子供達の額には、魔結晶と思われるものが埋め込まれている。手で引っ張っても取れないので、身体の一部のようになっているのだろう。
「分かりません。この子達は操られていたんじゃないかと思います。恐怖や殺意とか何もなかったんです」
「ならばこいつに聞くしかないな」
「トルクが捕まえたやつですか?」
「そうだ」
「顔が潰れてますよ?」
「そうか? 息はあるから大丈夫だろう。ここで尋問するより、王城に戻ってからやろうか。その様子じゃマーギンも安静が必要だろうしな。転移魔法は使えそうか?」
「大丈夫です。カタリーナ、宜しく頼むな」
「うん」
こうして、マーギン達は額に魔結晶を埋め込まれた子供達と首謀者だろう男を連れて、ノウブシルクの王城に転移したのだった。




