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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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発見

「ねぇ、ローズ」


「はい、姫様」


 港街の住民達の様子を見て回るカタリーナは歩きながら、ローズに話しかける。


「マーギンとバネッサは恋人同士になっちゃったのかな……」


「どうでしょうね。前より近しい間になったのは確かだと思いますが」


「ローズは嫌じゃないの?」


 そう聞かれたローズは少し黙る。


「もう私のことはいいのです。姫様こそマーギンがバネッサと恋人同士になるのは嫌なのではないですか?」


 そして、何かを飲み込んだかのように笑顔を作り、カタリーナの方こそ嫌なのではと聞く。


「マーギンって、みんなに優しいでしょ。それがバネッサにだけ優しくなっちゃったら嫌かも。それにローズが淋しそうな顔でマーギンを見てるのも辛いし」


「そっ、そんな顔で見てませんっ!」


「だったら、どうしてマーギンとしゃべらないの? ノウブシルクに来てからほとんどマーギンとしゃべってないじゃない。それって、バネッサがずっとそばにいるからでしょ」


「マーギンは色々とやることがあって忙しいのですよ。バネッサのこととは関係ありません」


「もう諦めてるの?」


「諦めてるとか……私は使命を果たさねばなりませんので、そのようなことは関係ないのですよ」


 そう笑顔で答えたローズを見たカタリーナは、ローズを自分の護衛から外したら、素直にマーギンのところに行けるのだろうかと考えるのであった。



「騎士様にそのようなことをしていただいては」


 と、オロオロする女性達。


 騎士団長が壊れた家の片付けや、資材を運ぶのを手伝っているのだ


「こういうことは力のあるものがせねばならん。女子供ではどうにもならんだろう」


「でも……」


「ノウブシルクの新しき王は、自ら率先して魔物を倒して街を守り、土地開発をしたり、水路を作る手伝いをされておる。身分がどうのこうのではなく、できる者がやるべきなのだと教えて下さったのだ。それに今の私にはこれぐらいしかできることがないからな」


「ノウブシルクは王自ら……?」


「そうだ。上が変われば国が変わる。そのような奇跡を私は見たのだ」


 と、騎士団長は笑いながら作業をする。


「騎士団長ーっ! 誰か怪我している人いるー?」


 そこへカタリーナとローズがやってきた。


「今のところ大丈夫のようです。しかし、食料が不足しているようですな」


「食べ物かぁ。魚とか捕れないの?」


 と、作業をしている住民に尋ねる。


「捕れますけど、漁のできる船がたくさん壊れてしまったのです」


「そうなんだ。陸からはどんな魚が釣れるのかな?」


「港からだとそんなに大きな魚は釣れませんが、興味があるなら釣りに行かれますか?」


「うんっ!」


 カタリーナは食料確保を兼ねて、気晴らしに釣りに行くことにした。


「あっ、聖女様だ!」


 港の桟橋で釣りをしている子供達がカタリーナを見て手を振る。治癒魔法を掛けてもらった子供がいるようだ。


「何が釣れてるの?」


「アジとかだよ。聖女様もやってみる?」


「うん」


 バケツの中には子供達が釣った20cmほどのアジが数匹入っている。晩御飯のおかずにするらしい。


 竿を借りてポチョン。しばらく待つと、ウキがシュッと沈む。


「きゃーっ! 釣れたー!!」


「聖女様うまーい」


 子供達に褒められて上機嫌のカタリーナ。しかし、当たりが続かない。


「釣れないね」


「また回ってくるのを待つしかないよ」


 と、アジの回遊を待っていると、


「痛っ!」


「どうしたの?」


「やっちまったよ」


 と、指の根元を押さえて痛そうにしている。


「その魚を針から外すときに刺されたんだ。毒があるんだよコイツ」


「わぁ、痛そう。ちょっと待ってね」


 竿を置いて、エクレールを出してシャランランするカタリーナ。


「どう?」


「すっげぇぇ、もう治った」


「良かったね。気を付けないとダメよ」


「ありがとう聖女様」


 と、みんなから凄い凄いと言われているときに、海がざわつき始めた。


「魚の大群が来てるぞ。誰か大人を呼んでこいよ」


 と、子供達が大人を呼びにいった。


 バチャバチャバチャバチャ。


 桟橋の近くで魚が乱舞する。その場にいる子供達がそれを釣る。


「デカいイワシだっ!」


 魚群を呼ぶイワシの聖女カタリーナ。


 ドバッシャン、ドバッシャン。


 そして、イワシを追ってきた大型魚もすぐ近くで乱舞する。確変に入ったようだ。


「おー、こいつは凄ぇ。投網投げろ、投網っ!」


 こうして、イワシとブリが投網でたくさん捕れ、こんなことは初めてだなと、港は大漁で湧くのであった。


 あちこちで魚を焼く匂いが充満し始めた夕飯時、マーギンと隠密執事は領主邸近くに潜んでいた。


「これでも食え。侵入時間はまだだからな」


 マーギンが出したサンドイッチを食べながら、そのときを待つ。


「行くか」


「はい」


 日付けが変わるぐらいの時間に領主邸に侵入し、宝物庫前まで来た。


 《スリープ》


 宝物庫を守る騎士にスリープを掛けて眠らせる。交代は2時間後。それまでに全てを終わらせなければならない。


「仕掛けがあると言ってたが、これは普通の鍵じゃないのか?」


「そのようですね」


 ダミーの鍵なのだろうか? 見た目は普通の鍵穴でしかない。


 隠密執事が解錠を試みる。


 ガチャ。


「開きました」


「じゃ、行くぞ」


 と、扉の取っ手を持って開けようとしたときに、魔力が流れるような感じがした。


「待て、開けるな」


「何かございましたか?」


「取っ手に仕掛けがあるかもしれん」


 マーギンは取手の裏側を確認する。


「あー、登録したもの以外が開けると罠が発動するタイプだな」


「お分かりになるのですか?」


「取手の模様に見せかけてあるけど、これが防犯の回路だ。登録された者がここを持って開けると防犯装置が作動しない。しかし、さほど難しい回路じゃないな」


 と、隠密執事に説明してから、錬金魔法で回路に使われている銅を取り、防犯の回路を無効化した。


「もう大丈夫だ」


 宝物庫に無事に入り、資料を探していく。


 しかし、金塊とか宝石類とかたくさん持ってやがるな。領主ってこんなに財産を蓄えられるものなのか?


「ずいぶんと金銀財宝が多いな」


「南の地に金銀の鉱脈と宝石鉱山があるのです。ゴルドバーンの財政はそれで支えられていると言っても過言ではありません」


「それと魔カイコの糸か」


「はい。南の地は元々先住民達の土地でしたが、ゴルドバーンに編入し、それで財を成したのです」


「編入というか、侵略だろそれ」


「先住民達からすればそうでしょうね。もう100年以上前のことでございます」


 そんな話を聞きながらチューマン研究の書類を探していると本棚があった。しかし、それらしき本はない。


「古い本がたくさんあるな」


 勇者パーティー時代のよりは新しいようで、何が書かれているかは読めない。が、


「この本、古いわりに埃が少ないな」


 と、一冊の本の埃が少ないことに気が付いた。隠密執事も暗がりでもある程度見えているようだが、昼間のように見えているマーギンほどではない。


 その本を取り出して確認しても字は読めなかった。


 関係ないのか。


 と、本を元に戻すときに違和感がある。


「なんだろうか、この感じ」


 やけにするんと本を元に戻せた。他のは、くっと押さないと元に戻せないのだ。


 マーギンは何気なく、もう少し押し込んだ。


 カチ。


 スイッチを押したような感覚がしたあと、


 ゴゴゴ。


 本棚が動いて、そのうしろにも本棚が現れた。


「ここか」


 その本棚には金鉱や宝石鉱山の場所、そして研究室の場所が記されている地図が隠されてあった。


「見付けた。これはもらっていく」


「バレたら騒ぎになりますぞ」


「別に騒ぎになっても構わんよ。その前に他の騒ぎが起こるだろうからな」


 と、答えたマーギンは、宝物庫の防犯の回路を描き直して領主邸を脱出したのであった。



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― 新着の感想 ―
イワシ!イワシ! ジークイワシ!
イワシとブリ…… カタリーナはブリっ娘…? ……あ!ブリティ、いやプリンセスブリキュアか!
イワシ!(まことちゃんのあの手 豊漁の女神カタリーナとして後に伝えられるのであった(*・ω・)
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