表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

444/553

ロッカ覚醒?

ローズを抱きかえるようにして島に降りたマーギン。


「すまないマーギン。もう大丈夫だ」


「無理しなくていいぞ」

 

と、砂浜にマットレスを敷いて、そこに寝かせる。


「まだフワフワしてるだろ? そのまま落ち着くまで寝てたらいいよ」


介抱チャンスをゲットしたローズはカタリーナからいつまでもシャランランしてもらえなかったのだ。


その間に、いきなり全員で行くと驚かれるかもしれないとのことで、マーロック達が先に島民達のところに知らせに行った。今日はここで泊まることになるだろう。


「まだ船に乗ってるみたいだぜ」


「そうだな。 腹の中がひねられているような感じだ」


バネッサとロッカもまだ船酔いから完全復活しておらず、砂浜に座っていた。


「マーギン、この島で何かする予定はあるのか?」


「別にないですよ。旨い酒を飲んだら領都に戻りましょう」


「分かった」


「隊長は何かしたいことでもあるんですか?」


「見知らぬ場所にきたから、何か変わった魔物がいないか見ておこうかと思ってたんだが」


「無人島なら何がいるか分からないけど、昔から島民が住んでるなら、そんなに強い魔物はいないと思いますよ」


「それもそうか」


ここは陸の魔物より、海の魔物の方が厄介なのかもしれんな。海で生活している人達は海の近くに集落を作る。しかし、集落は島の奥の方にあるみたいだからな。


「カタリーナ、アイリス。海に入るなよ」


「えーっ、どうして?」


「なんかいるかもしれんからだ」


「えっ?」


そう脅すと、波打ち際から慌ててこっちに来た。


「お前、いい加減、ローズにシャランランをしろ。いつまでもこんな感じだったら危ないだろうが」


そう言われたカタリーナはローズにシャランランを掛けたのだった。



「マーギン、歓迎すると言ってくれたから、集落に行くぞ」


と、マーロック達が呼びに来てくれたので、集落に移動した。


「結構人がいるんだな」


「ここだけで生活してるからな。人数がいないと集落がダメになるだろ」


昔から不思議だったのが、どんな場所でも住み着く人がいる。わざわざ離島に住まなくても、タイベにはたくさん土地があるのにな。


集落の人達はよそ者でも歓迎してくれ、宴会を開いてくれるらしい。どうやら、娯楽が少ないので、こういうイベントは大歓迎のようだ。


「酒を飲みたくてわざわざ来なすったのかね」


「マーロックが旨いと言ってたんで、気になりましてね」


「ここの住民は酒が好きでの、作っては貯めていくんじゃ。ほれ、遠慮せずに飲め」


もらった酒は米焼酎だろうか。ややクセのある香りと風味。しかし、まったりとした口当たりは滑らかで旨い。


「なるほど、味わい深い酒ですね」


「そうか、そうか。気に入ったなら好きなだけ飲んでいけ」


料理は木で作った大皿で運んでくれる。


「わっ、豆腐じゃん」


この皿はゴーヤチャンプルみたいな料理。そこに豆腐が入っていたのだ。


「おっ、この酒とこれよく合うね」


おこちゃま達はゴーヤが食べられなかったので手を付けない。豚バラ肉の煮たやつと串焼きだけを食べている。


「コリコリしてるこいつはなんだ?」


と、バネッサが聞く。


「豚の耳じゃよ」


ここでは肉といえば豚肉のようで、豚足やツラの焼いたやつとかもある。メインは大きな魚を蒸し焼きにしたもの。塩味ばかりだけど、どれも酒に合う。


「ここでは牛肉は食わないのか?」


「牛は働かせるからの」


食料というより、労働力か。


「牛肉持ってるから、焼肉でもしようか?」


男連中とロッカは美味そうに食ってるけど、ローズがダメそうなものばかりなので、マギュウを出すことに。


「気を遣わんでもいいぞ」


「酒を飲ませてくれた礼だよ」


と、マギュウの焼肉を振る舞う。マーロック達とオルターネンも手伝ってくれ、島民で食べたい人達にも食べてもらう。


「うぉぉぉぉっ、なんじゃこりゃぁぁ。旨ぇぇぇ」


島の人達大騒ぎ。


「向こうではこんな旨いものを食ってるのか?」


「これは魔物の肉でね。向こうでも出回らないよ。自分達で狩ってこないとダメなんだよ。俺達はそいつが群生している場所を見付けたから、こうして大量に持ってるけどね」


「肉が特別なのは分かった。この味付けはなんじゃ?」


「これは最近、タイベで出回り始めた調味料を使ったタレだね。魚にもよく合うよ」


そんな話をしていると、分けて欲しいと言われて、醤油の樽とここの酒の甕を交換することになった。今後はマーロック達がここに来て、物々交換するとのこと。


島民達も飲んで騒いで楽しい時間を過ごした。


「砂浜でテントを張るか」


「夜の砂浜には近寄ってはいかん」


と、忠告される。


「なんか出るのか?」


「この時期はマジャコが上がってくることがある。あいつに襲われたらひとたまりもないぞ」


「マジャコってなんだ?」


マーギンは海の魔物にはあまり詳しくない。


「シャコは知っとるか?」


「エビみたいなやつ?」


「そうじゃ。あれのデカいやつでの。人程の大きさがある。陸でも歩けるから見つかると襲われるんじゃ」


やっぱり海辺に集落を作ってないのは、そんなやつがいるからなのか。


それに数メートル離れていても、パンチの風圧で殴られたようになるらしい。まともにパンチを食らえば頭が吹き飛ぶとのこと。


「食うと旨いんじゃがな」


マジャコを狩りに行って死ぬものもいるので、最近では狩るものもいないとのこと。倒し方は石や石斧をひたすら投げて倒すらしい。


それを聞いていたオルターネンとロッカ。


「じゃ、狩りに行くか」


「別に狩らなくてもいいんじゃない?」


「ここでご馳走になった礼をせねばならん。俺達は特務隊だからな」


そういや、ケンパ爺さんの村で訓練しているときも、ボアを狩って渡してたな。


2人が砂浜でマジャコ討伐するのを見学することに。決して、夜の砂浜でチューするんじゃないかとのぞき見するわけではない。



ザザーン、ザザーン。


月明かりに照らされた波の音がするだけで、一向にマジャコは現れない。退屈になったアイリスとカタリーナは寝てしまった。


「暇だな」


バネッサも退屈そうだ。


「お前も寝とけ。明日また船酔するぞ」


「なんかあったら、うちも助っ人にはいらないとダメだろ」


「あの2人に任せておけばいいんじゃないか。それに砂浜だとお前は分が悪い。あの2人がヤバそうなら、俺がプロテクションを掛けるから心配すんな」


「そうかよ。なら、寝るわ」


と、マーギンにもたれ掛かる。寝るならちゃんと寝ればいいものを。


「ローズも寝なくていいのか? 寝不足は船酔いにつながるぞ」


「いや、姫様の護衛もあるし、あの2人の戦いを見ておきたいのだ」


というので、2人でオルターネン達を見守ることになった。


ザザーン、ザザーン、ザザーン……


「来るぞ」


僅かに盛り上がった水面を見逃さなかったマーギン。


ザパッ。


海面から姿を見せたマジャコはいきなりパンチを放った。


それをジェニクスで斬って防ぐオルターネン。両手を十字にクロスして耐えるロッカ。


ザパッ、ザパッ、ザパッ。


次々と現れるマジャコ。相手はまだ半分海の中だ。


「下がれっ!」


足だけでも海に入って戦うのは圧倒的に不利。オルターネンはバッグステップを踏んでうしろに下がる。


ロッカは下がらずに、剣を構えた。


「馬鹿、下がれっ!」


下がらなかったロッカに怒鳴るオルターネン。


「マーギンっ、補助を頼む」


そう叫んだロッカ。


「しょうがない。参戦してくるわ」


と、ローズに言い残して、ロッカのところへ行く。


「心置きなくやれ。戦う場所は波打ち際の砂場が硬いところだ。そこで横に走って、追わせろ」


「心得た」


マジャコに追わせるように、スピードを下げて横移動するロッカ。


「ちっ、マーギンのやつ」


自分の声より、マーギンの言うことを優先したことが面白くないオルターネン。しかし、マジャコは想定していたより数が多い。


「こっちも来いっ!」


オルターネンも波打ち際まで走り、そこで足を止めて迎え打つ。


「ロッカ、やれ」


追ってきたマジャコを振り向きざまに斬ったロッカ。


「うぉぉぉぉっ!」


マジャコはパンチを空撃ちして、空気圧を飛ばしてくる。それを時折食らっても倒れないロッカは耐久性能が高い。


「これしきっ!」


速く、もっと速く。


ロッカはマジャコがパンチを繰り出すのが見えた。そして、剣を振り上げて下ろすのではなく、円を描くように回転させながらマジャコを斬っていく。


なんだ……この感覚は……?

 

相手がスローモーションのように見えるロッカはバーサクモードに入ったような感じで、マジャコを斬り倒していったのだった。



「はい、お疲れ」


「はあっ、はあっ、はあっ。マーギンっ、今のはなんだっ?」


「ん? ただの強化魔法だぞ。単純に掛けっぱなしにしだけだ。お前、自分でも掛けてただろ? もう立てないんじゃないか?」


「えっ?」


マーギンにそう言われて、自分の足がガクガクと震えているのに気付く。


「俺が補助してんのに、自分でもガッツリ強化魔法を掛けるやつがあるか。補助の意味がねーだろうが」


「て、敵がスローモーションのように見えて……」


「あれだけ強化したら当たり前だ。敵の数を把握してて、討伐完了できることが分かってたらいいけど、まだ敵の数が把握できてないうちに体力を使い果たすな。なんかあったら、撤退もできんだろうが」


と、マーギンにダメ出しされたロッカだったが、今の自分の動きに感動して、それどころではなかったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
デトロイトスタイルからフリッカーを繰り出し華麗なステップ踏むシャコとか居たらオモロそう(*・ω・)
惜しいな〜! 魔力残量さえたんまりあれば〜〜w
ロッカ、良かったロッカ…強くなれる気配
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ