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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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参戦

村人達に移住の準備をしてもらう。移住まで3日間しかないので急ピッチで進めてもらうことに。マーギンは養蚕工場から持っていかないとダメなものを選んでもらう。


「向こうで作れるものは作るけど、何が必要なんだ?」


「この機械は持っていきたいです」


女性達が言うのは糸を紡ぐ機械だ。


それをアイテムボックスにしまっていくと目を丸くされたが、詮索するなと言っておく。繭を茹でる釜とかも持っていった方がいいか。


工程を説明してくれるけど、よく分からなかったので、言われるがままに機械や道具を収納していった。


「これ、結構臭うけど何が入ってんの?」


積み上げられた麻袋から、肥料というかなんというか、いい臭いでないものがたくさんある。


「それは、魔蛾のサナギを粉にしたものです」


「もしかして食べるのか?」


と、驚くと、違いますよと笑われる。


「魔桑木の肥料にするんです。それと魚を釣るためにも使いますよ」


なるほど、魚粉みたいなものか。魚はどうやって釣るんだろうか?


「魚はどうやって釣るんだ?」


「それを泥と混ぜて、池に投げ込むと小魚が寄ってくるんですよ。それを釣って食べたり、その小魚を釣って、それを餌にして大きな魚を釣るんです」


撒き餌みたいにして使うのか。


マーギンが興味を示すと、試してみますか? と聞かれたので、池に連れていってもらうことに。池と言うより湖に近いくらいの大きさだ。



「あ、マーギンさんも釣りをされますか?」


すでに数人の男が釣りに来ていた。どうやら、ここを離れる前日に宴会をしたいらしく、宴会で食べる大型魚を釣って準備をしているとのこと。カタリーナを連れてきてやったら喜びそうだな。


フナみたいな魚を釣り、それを泳がせていく。浮き代わりの木に糸を括り付けて待つようだ。


「マーギンさん、あの木を見ててください」


と、言われた木を見るとくるっと、回り始めた。


ぐるぐる。


そして勢いよく回りだす木。


「掛かりましたよ」


小舟に乗って、その木を掴んで引っ張ると、大きなナマズが掛かっていた。岸に引き上げられたナマズを濡れた藁で包み、他の男達が村に運んでいく。


「村の井戸水で活かして、泥を吐き出させてから食べるんですよ」


「へぇ、手間が掛かるね」


「そうすることで、泥臭いのが少しマシになるんです」


そして次々に釣れてくるナマズやライギョ達。他には鯉みたいな大型魚。


「うわ、何この魚?」


他の人が船で運んできたのは、3mほどあるデカい魚。


「ピーラルクアンシェです。これは最高級魚ですよ。宴会当日に釣れてくれれば良かったんですけどね。ギリギリもつかどうか……」


「なら、俺が保存しておいてやるよ。マジックバッグに入れときゃ傷まないから」


そう伝えると、それならと、狙う魚を増やして釣るようだった。


こうして、移住の準備を進め、最終日は朝から宴会の準備。


「家族を亡くした者達も、少し元気を取り戻したようだな」


大隊長がその光景を見て頷く。ワイワイと皆で宴会の準備をしていく村人達。愛する人を亡くして、悲しくないわけではないが、心が傷付いた人々にカタリーナが癒しを与え続けていたのだ。アイリスやローズもそれを手伝っていた。


「そうですね。前を向けるというのはいいことです」


マーギンは自分が言われたことを口にした。


その間、大隊長達はチューマンが出ないか近隣の調査を続けてくれていた。ついでに狩った小型のボアや熊とかを持ち帰っていた。これも宴会の食材になるだろう。



「この魚旨っめぇ」


カザフ達は珍しい魚料理に大はしゃぎ。


「本当だな。淡水魚とは思えんわ」


緑色をしたブラックバスみたいな魚や、マトウダイみたいな魚とか実に魚種が多い。その中でも、ピーラルクアンシェは魚と言うより肉みたいな感じだ。そして、意外なことにライギョを唐辛子と炒めたものが旨い。


「これは酒が進む味だな」


「そうですね。こっちのカエルの唐辛子炒めも旨いですよ」


この料理は村人達のご馳走のようで、これだけ大量にあるのは初めてのこと。いつもは獲りすぎないようにしていたようだが、最後だからと大量に獲ったようだ。



翌日、村人達は自分の荷物を荷車に載せ、マーギンが出した転移魔法陣に恐る恐る入っていく。先行してカタリーナ達に行ってもらい、最後にマーギンとバネッサが入った。


すぐにシャランランを掛けてもらい、元鉱夫達の村へ。


「すっげ、こんなことになってんのかよ?」


バネッサが驚くのも当然だ。前に来たときにはさびれて、離村したほうがいいだろうと思った村に、2階建ての長屋のような集合住宅がたくさん建てられている。人はまだそこまで多くはないが、ハンター達もここを拠点にする者達が増えてきているようだ。



「ハイ、マーギン。食料関係はばっちりよ。しばらく毎日食料が届くから」


シシリーがすでに待っていてくれ、準備をしてくれていた。


「ありがとうな。養蚕の機械類を持ってきてるんだけど、どこに置こうか?」


と、村人達とシシリーで相談してもらい、養蚕工場を作る予定の土地を決めていく。


「まだ、魔桑木が小さいですね。肥料を撒いておきましょう」


と、魔桑木の手入れもすぐに始めてくれる。この調子だと、ここの人達ともすぐに打ち解けていきそうだな。



「シシリー、あとは頼んでいいか?」


「いいわよ。マーギンは忙しいんでしょ?」


「そうだな。本来やらないといけないことがまだ残ってる」


「じゃ、いってらっしゃい。身体に気を付けて頑張ってね」


「ありがとう」


その日の夜はまたもや宴会となり、それが終わった翌朝に、シシリーにあとのことを頼んだのであった。


また転移魔法で、港街に近い街近くに移動してから、港街を目指す。


「たまたまかもしれんが、物流が止まっているようだな」


街道を移動するも人の往来がない。通常、港街と街を繋ぐ街道は往来が多いものだ。季節は冬の終わりといっても、雪は積もってないのにおかしい。


「急ぎましょうか?」


「そうだな」


と、徒歩からダッシュに切り替えて港街を目指した。



「港街が戦場になってんぜ」


先行して偵察に行ってくれていたバネッサから報告が入る。


「どうします? 巻き込まれますよ」


「バネッサ、どんな戦況だ?」


「どっちがどっちか分かんねぇ。ただ、でっけぇ船がたくさんいたぜ」


「ノウブシルクは船で戦力を送りこんだか。おそらく、ビッグワームを討伐した地域も戦場になっているだろう。ゴルドバーンがそっちに戦力を割いたところに港街が狙われたのだな」


ゴルドバーンが疲弊したとみて、ノウブシルクが一気に制圧に乗り出したと推測した。


「た、助けに行かなきゃ」


「カタリーナ。やめとけ。戦地で治癒するとお前が狙われる。そうなると俺達はお前を守るために人を殺さざるをえなくなる」


マーギンがそういうと、悲痛な顔をするカタリーナ。


「そんなに辛そうな顔をするなら、俺が全員を制圧してきてやろうか?」


「えっ?」


「敵味方、兵士、民間人の区別なく、恐怖のどん底に落としてやることはできる。お前が俺に戦争に加担しろと言うなら、協力してやる」


「マ、マーギンを戦争に……」


「お前がそう望むならな。お前は俺が望む聖女になってくれると言った。だから、俺はお前の言うことを聞いてやる。答えろ。戦争に加担して欲しいのかどうかを」


「せ、戦争には加担して欲しくない……でも、助けてあげて欲しいの……」


「なんてわがままな聖女だ。俺はわがままな聖女なんて望んでないぞ」


「ご、ごめんなさい」


「しょうがな……」


バーーン! バンバンバンっ!


そのときに、大きな爆発音が聞こえてきた。


「なんだ今の音はっ?」


「大隊長、多分魔導砲ですよ。ちっ、これで本当に参戦せざるをえなくなったわ。大隊長、あとを頼みます」


「マーギン、何をするつもりだ?」


「魔王ごっこですよ」


と、マーギンは微笑んで、マチョウマントで身を包み、顔を布で隠してプロテクション階段を出して、空へと消えて行ったのだった。




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― 新着の感想 ―
ほっとくと人間はすぐ争うからな(*・ω・) 貧すれば争い富めば争う 平和とは難しい…
マーギンは微笑んで…って魔王役じつは大好きだよなw どう懲らしめてやろうかって気持ちが笑顔に表れてるw 本物の魔王が出てきたら有名になる前にこっちが本物だと偽物(本物)をぶち殺せば問題ないしなw うま…
魔王ごっこはすでに1回、やってるからな〜w ホントの魔王が来たら、どうやってごまかすのこな?www
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