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明日から突然サバイバル生活!  作者: ELS
(第3章)迷宮でサバイバル!

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迷宮サバイバル二日目(後半)

迷宮サバイバル二日目(後半)


あれからしばらく歩き回っているが、進展はない。天井に続く階段や、押しても引いても開かない扉があった位だろうか。


廊下で小休止することもあるが、気が休まらない。何が出てくるかわからないからだ。

出来れば、安全な部屋を確保して休みたいところだ。

一番良いのは脱出して、もっと気の休まる場所まで行き着くことだが。


クロとゆみちゃんはどうしているかな、田中さんや楓くんも元気だろうか……。

不思議と日本に居た時の事は思い出さないな。こちらに来てからの事が、それだけ印象深いのだろう。


歩いていると、どうしても考え事をしてしまう。気を張っていようと思っても、どうも集中力が続かない。


そんな事を考えていると、何度目かの扉を発見する。

十分注意して開いてみると、上り階段がドンと現れた。石造りのしっかりした階段で、かなり上まで続いているようだ。


「行ってみるか」


階段を上る事に決めた。



……



階段も真っ暗で、気をつけないと足を踏み外す可能性がある。

松明で、照らしながら歩く。


この手製の松明も数が限られている。灯りが無くなれば、行動範囲は一気に狭くなってしまうだろう。


それにしても、長い階段だ。途中から螺旋を描くように、ぐるぐると上に上がっていくように作られている。


(屋上まで続いているんじゃないか)


その時、出口に光が見えた。

どうやら、この階段の終着点のようだ。


最後の一歩を踏み出した。


思った通り、屋上に抜けたようだ。


単純に屋上というと語弊がある。

建物の上部に出たのは確かだが、ヤグラのように屋根があり、周りを格子でぐるりと囲まれている。まるで鳥カゴの中だ。

つまりここから脱出する事は叶わないということだろう。


少しがっかりしたが、久しぶりに外の空気を吸えたのは最高に気分が良い。


そして屋上に出て、初めて迷宮の全貌を知る事が出来た。

此処は周りを森林で囲まれているようだ。そして今、青々とした木々達が茜色に塗り潰されていく。


美しい光景だ。


しかし、もうそんな時間だったか。暗い建物内では時間の感覚が狂ってしまうようだ。


中庭を囲んで口の字型の建物、これが今俺が居る建物だ。そして、その周囲に更に一回り大きな口の字型の建造物がある。


上空から見ると回の字型に、この迷宮は建っているようだ。


そして、その周囲には森林が広がっている。

この迷宮から脱出出来れば、森林地帯ならば水も食料も確保できるかもしれないな。


しかし、しばらくすれば日が暮れるだろう。今日は此処で野営する事に決めた。


ここなら火を使っても火事や酸欠になる心配は無いし、月明かりもあるだろう。

真っ暗な通路で眠る事になるよりは幾分マシだ。


明るい内に準備に取り掛かる事にした。



……



辺りはすっかり暗くなった。

期待していたほど月は、大きく明るく無かったが、代わりに満天の星空が広がっている。


鳥カゴの中には不釣り合いな、焚き火の炎を眺めながら食事を摂る事にした。


食事と言っても缶詰食になるのだが。


それでも食事は楽しみである、今日のディナーはトマトスープだ、中に申し訳程度の小麦の麺が入っている。


ずずっと啜ると、口の中で広がるトマト。


「うん」


“これがトマトだ”と言わんばかりのパンチの効いた味だ。さすが英語圏で作られただけの事はある。

日本人には、このわざとらしいトマト感は中々出せないだろうな。


でも俺は嫌いじゃない、むしろ好きだ。

美味いし量もある、大満足の食事だ。


陶器の壺から汲んできた水も、カップに移し替えて煮沸消毒し、水筒に詰め直した。


「ふぅー」


一息つく。

ぱちぱちという音と暖かな光が、心と身体をゆっくりほぐして癒してくれる。


ここが恐ろしい迷宮の中だ、という恐怖が霞のように薄れていく。


満腹で、暖かい。

良い気分だ。


自然とまぶたが重くなり、眠り込んでしまったのだった。

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