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第80話 帝国の街

 帝国へは、アルタール村から馬車で3日程で着くという。


「この村の人で帝国へ行った事がある人はいるのかい?」


「いや……、多分いねえなぁ。帝国から来る人間はたまにいるけどよ、最近じゃそれもさっぱりだ」



 クラリスの問いにラウが申し訳なさそうに答える。


 やはり帝国に行く事は難しいのだろうか。でも、行かなければ何も始まらない。


「クラリスは帝国に行った事はないの?」


「残念ながら、ない。話だけは良く聞くんだけどね。これはもう行き当たりばったりでいくしかないか……」


「行き当たりでもなんでも、早く行こう。大丈夫、俺が何とかして見せる」



 アレクが決意新たにそう告げる。逸る気持ちは僕も同じだけど、慌てて準備して取返しのつかない様な事になるのは避けたい。ここは多少時間がかかってもしっかりと準備すべきだ。



 結局、アルタール村の皆に無理を言って食糧等集めて貰い、帝国に向けて出発出来たのはそれから三日後の事だった。



 その間、クラリスは怪我人や病人の手当てを、僕とアレクは帝国によって壊されたりしてしまった村のあちこちの修繕を手伝っていた。



 出発の時、村の人達は様々な食料や備品を、これでもかと用意してくれた。


 アレクがお代を払おうとしたが、村の為に尽力してくれた、いわば村の英雄だと、村の多くの人達から感謝と笑顔を追加で贈られてしまった。


 なんともこそばゆい状況ではあったが、人から感謝される経験なんてほとんどなかったので、僕の胸は得も言われぬ満足感でいっぱいになった。




 そんな村の人達の笑顔に見送られながら僕等は村を出発する。当然、目指すは帝国だ。


 ただ、帝国といっても帝国のどこに向かえばいいんだろうか。その答えはあらかじめクラリスが用意していてくれたみたいだ。


「帝国も王国も、大きな仕組みとしては変わらないよ。国の中心に首都があり、その周辺には大きな街がある。首都から離れる程に街は次第に町へ、そして村へ。村より小さな集落もあるかも知れない」


「じゃあ僕達はその首都へ向かえばいいんだね。その、帝国の首都はなんて言う街なの?」


「シュトゥルム、と言うそうだ。帝国は魔道具の国。王国で使っている魔道具の一歩も二歩も先を行く技術を持っているという。私達の目的とは違うが、でも少しはそういう物も見てみたいね」


 先進的な魔道具か、一体どんな物なんだろう。詳しくないから思いつかないけど、生活がより便利になるようなものであれば、是非とも取り入れたいな。


 見るだけでも、その知識をもとにクラリスが再現してくれるかも知れないしね。


「おいっ」



 今回の目的とは違う所でワクワクしていると、アレクから厳しい声がかかる。


 そんなに僕は魔道具の件でにやけた顔をしていたんだろうか……


 慌ててアレクを振り返ると、どうやらそうではなかったらしい。


 アレクは御者台の上から前を見たままそちらに意識を集中していた。


 僕もつられて前を見ると、そこには完全武装した兵士の一団が、道の脇にうずくまっているように見えた。



「……あれは、なんだろう。というか、どこの国の兵だろう。王国にあんな武装をした人たちはいないと思うけど……」


「あれは帝国の兵隊だね。あの旗が見えるかい? あれが帝国の国旗だ。さて、彼等はあそこで何をしているのか……」



 どうやらあれは帝国の兵団らしい。でも、どうしてここに。それに、なんであんな所で蹲ってるんだろう。


 僕達は対応を決めかねていたが、どうも様子がおかしいという事でその一団に近づく事にした。



 突然攻撃される可能性も考え、いつでも対応できるように慎重に近づく。


 人の輪郭がはっきりと見える様になった頃、僕達は初めてその惨状に気が付いた。



 クラリスに手綱を任せて慌てて馬車から飛び降りる僕とアレク。

 恐る恐る近づけば、そこには既にこと切れた帝国の兵士達の姿が広がっていた。



「ひ、ひどい。一体何が……」


「ハクト、こっちだ!」



 アレクが声を上げた方に近づけば、そこにはかろうじてまだ息のある帝国兵が横たわっていた。



「大丈夫ですかっ!? クラリス、クラリース!」


 僕の呼ぶ声にクラリスが慌てて駆け寄ってくる。


 すぐさま帝国兵に手を翳し、その手を淡く光らせる。


 ……だが、何も起きない。傷ついた帝国兵は、ただうめき声をあげ、遂にその場で息絶えただけだ。



「そんなっ……」


「もう、だいぶ深く傷ついていたんだね……。まったく治癒魔術が効かなかった。他には、生きている人はいないだろうか」



 そうして改めて周囲に目を向ける。


 僕等が蹲っているように見えた人たちは、全員その場で死んでいた。


 だが、その死に方が酷い。

 刃物で切られた様な跡は見受けられず、そのほとんどが身体のどこかを潰されていた。



「潰れてる……? これは一体、何にやられたの……」




 ──ドンッ、ドンッ、ドンッ




 その時、腹を底から震わす様な大きな地響きが鳴り渡る。


 最初は一つ、続いて二つ、そして今はもう何個になったか分からない。



 その地響きが収まった頃、僕等の目の前には、絶望を具現化した様な存在が立ちはだかっていた。

更新が遅くなってしまい本当に申し訳ないです。

それでも読み続けて頂いている読者の方々の為に、最後までちゃんと書き上げますので、お付き合いの程どうぞ宜しくお願いします。

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