24「もう一回!」
俺は、あの後何も言わずに着替え、あの場から去り、ガブを一人にした。
今は一人にした方がいい。
きっと今だからゆっくりと考えたい事があると思うから。
ん~…でもこのままだと、多分ガブは長風呂になるだろうし…マジで何しよ。
と、俺が腕を組ながら、廊下を歩いていると
「あ、廻」
「よっ!ネス」
こちらに手を振っているネスの姿があった。
俺は軽く挨拶をする。
可愛い、俺の師匠超可愛い。
俺はそんな再確認をした。
そして、ネスの姿を見ると、何やらいつもと違う服を着ていた。
それは、青色のローブ。
そして、何より目立っていたのは右手に持っている長い杖だ。
それを見て、勿論疑問が過らないはずもあるまい。
「これから何処かに行くのか?」
と、俺はネスに聞いてみる。
「まだ勉強の時間まであるし、ちょっと自主練習をしたくて」
「へぇ…そうなのか」
俺は感心しながら呟く。
ルナの言う通り、ネスは本当にまだ努力をしているんだな。
真っ直ぐと、自分の道に進んで。
何か羨ましいな。
邪魔するのも何だし、さっささと行くかな。
「そんじゃ俺は部屋に戻るよ、頑張ってな!」
と、俺がその場から去ろうとすると、ネスは顎に手を置いて何やら少し考えた後「そうだ!」と言って手の平を、ポン!、と上から拳で叩く。
「廻、暇なら僕の自主練習に付き合ってくれないかな?手合わせをお願いしたいんだ」
「え?俺が!?」
そして、廻は言われるがまま、ネスに引っ張られて行くのだった。
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ネスがついさっき完成させた魔道具、パンドラボックス改め、ボックスで手合わせをする事になった。
ルールは、剣術あり、魔術は下級まで。
相手から一本でも取れば勝者となる。
このルールは俺に配慮した結果だろう。
中級魔術や固有魔術を使えば、俺なんて相手にならないからな。
ゴミクズですよゴミクズ。
「それじゃあ始めようか」
と、ネスが言うと、ネスは持っていた杖を後ろに投げる。
「あれ?杖は使わないのか?」
「流石に手合わせであの杖は使えないよ。
あれは、他の杖とは違って僕のお手製だからね。
使えば、人一人くらい下級魔術でも木っ端微塵に出来るからね」
「マジかよ」
え?何そのチート級のアイテム。
俺にも恵んでくれ、丁度聖剣エクスカリバーの一つや二つ欲しいと思っていた所だ。どうか俺にも約束した勝利を、エクスカリバー!って叫びたい。
何て、事を思っている内に、ネスは既に構えの体制に入る。
「ッ!」
俺も警戒して、木剣を右手で構え、魔術を放つ為、左手を手ぶらにする。
だが、ネスはこちらに構えているだけで、何もしてこない。
詠唱をする様子すらない。
ど言う事だ…?
口を動かしてる様子も動く様子もない。
何かの策か?それとも俺の考えすぎ?
ただこちらがどう出るか伺っているだけか?
なら…これで!
「《我に落雷の導きあり、落雷は光となる、光れ》!」
廻が、そう詠唱すると、ネスの正面が雷の様に強く光る。
下級魔術。
『雷光』
雷の様に光を発っする。
この光は相手だけに届く暗示がしてある。
詠唱したとしても自分にはその光は見えない。
つまり、ただの目眩まし。
普通の魔術師同士の戦いならば、詠唱を唱えるから次に何をしてくるかわかる。
だが、廻の場合は剣術と魔術を合わせて使う魔術剣士。
どうでるかわからない。
そう、普通の魔術師、ならばだ。
「これで終わりだ!」
廻はそう言うと、木剣を上に降り下ろした。
だが、その剣先はあっさりと読まれ、左に避けられる。
「廻、僕はこれでも国級魔術師だ。
目を潰された程度じゃ、状況は有利には働かない」
そして、つかさずネスは右手を廻に向けた。
廻は木剣の大降りをした為前以外はがら空きだ、防御方法は、ない。
「クッ!」
けど詠唱には時間がかかる!
ここから木剣を左に降ればこっちが先に攻撃する事ができる!
廻はバッと左を向く。
「《風の加護よ切り刻め》」
「な!?」
詠唱が短い!?
こんなの間に合う訳…
そして、何個もの風の刃が廻を襲う。
「グハっ!」
廻は後ろへと倒れる。
これって…リーフウィンド?
下級魔術。
『リーフウィンド』
風が舞い散る葉の様に鋭く放たれる。
けどリーフウィンドの詠唱って。
《我、精霊に受けし風の加護よ、刃となりて切り刻め》
のはずだ。
まかさこれって…。
「僕の勝ちだね、廻」
詠唱省略って奴かよ…。
「詠唱省略って…。
使えない俺にそれやるとかちょっと大人げなくないですか?」
俺は倒れたまま女々しい言い訳を口にする。
すると、ネスは笑って、こう答える。
「僕は廻よりか年下だもん」
してやったり、と言うどや顔をしてネスは応えた。
クッソ…俺の師匠可愛すぎかよ…まぁ男な訳だが…。
そして、今日戦ってわかった。
ネスは強い、今の俺なんかじゃ足元にも及ばない。
ネスに勝つのは…無理だ。
こんなんじゃきっと、ガブを守れるような、ガブのお父さんの様な人にはなれない。
って何いってんだ俺!
そもそも、ネスはずっと努力してきたろうが。
俺が負けるのは当たり前だ。
俺にはまだ努力と言えた努力をした試しがない。
なのに何が、無理だ、だ!
まだ、諦める所じゃねぇだろ…?加藤廻!
俺は、ゆっくりと立ち上がる。
「ネス、もう一度手合わせを頼みたい!」
「ッ…!」
ネスは少し面食らった様な顔になりながら廻を見詰める。
その理由は、廻の顔には恐怖とか、挫折とか、そんなのが写ってたんじゃない。
ただ笑って、楽しいと、強くなろうとしている顔だったからだ。
そして、ネスは静かに微笑む。
「次はもう少し強めで行くよ?」
「ばっち来い!!」
こうして、俺とネスの授業前の手合わせが追加された。




