13「ヒロイン光臨!」
まぁそんな訳で。
俺の一番の苦手科目は魔力維持となった訳だ。
おっかしいなぁ…何で出来ないんだ?
これじゃあせっかくの魔力を持て余すばっかだなぁ…。
まぁ今考えても仕方ねぇや。
気分転換に風呂にでも入ろ。
廻は風呂場へと向かい、着替えを持って向かう。
そして到着したと同時に服を脱ぐ。
「ん?」
廻はふと、鏡を見詰める。
「な…なんだこれ…?」
その鏡に写っていたのは勿論廻自身だ。
けど、廻が驚いたのは他にある。
廻は自分の右肩にそっと手を添える。
廻の右肩にあったのは、黒いタトューだった。
そのタトューは、竜にも見え、はたまな黒い炎にも見える。
「シールじゃない…?
肌と一体化してるみたいだ…」
勿論俺にこんなタトューをした覚えはない。
何かすんげぇ無気味…。
その黒いタトューに気になりながらも廻は風呂を済ました。
部屋に戻ると、一気に眠気に襲われ、そのまま廻はベッドに行き、寝たのだった。
その日、廻は夢を見た。
そこは、黒い炎に包まれ、一人の少女が泣き叫んでいた。
その声を、聞いていると、とても切なくなり、心が痛くなる。
涙が零れる度に黒い炎は強さを増して行く。
その少女の元へ駆け寄ろうとしても、いくら走っても、少女の所へとは辿り着けない。
そして少女は廻のいる方へと顔を動かし、口をあけた。
「助けて」
少女はゆっくりと、黒い炎に包まれた。
そして、最後に見えたのは、黒い炎と大きな翼だった。
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ゆっくりと、廻は目を開ける。
起き上がり、窓を眺める。
既に早朝だ。
廻は、とても変な感覚に包まれていた。
先程見た夢がまったく脳から離れない。
こべりつくかの様に、頭を刺激する。
炎の中にいたかの様に暑い、そのせいか汗だくだ。
「なんだったんだよ…」
廻の中では疑問が増えていくばっかりだった。
黒い炎に少女、そして大きな翼。
廻の手は自然と、右肩へと。
「これなのか…?」
この黒いタトューとあの夢…繋りがないとは思えない。
なんなんだよこれ…俺に何を伝えようと…。
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「《火の聖よ、我が願いに答えたまえ》フレイム!」
廻が右腕を構え、詠唱すると、目の前にある人形がゆっくりと燃え始める。
廻は炎を見詰める。
きっとこんなんもんじゃない。
あの少女が苦しんでいた炎は、もっと暑くて、息なんて出来ないくらいに苦しいんだ。
その中でも泣き喚いて、助けを欲していた。
俺は少女に力を貸したい。
何か出来るものならしてやりたい。
けど、そんな願いは届くはずもないのだ。
廻が呆然と立ち尽くしていると
「廻?」
「っ!」
ネスが肩をポンと叩く。
その顔は明らかに心配そうにしている。
俺もびっくりしてつい動揺してしまう。
「廻、大丈夫?
何か顔色悪いけど…」
「あ、あぁ…大丈夫だ。
気にしないでくれ」
廻は無理に笑顔を見せる。
ネスも勿論そんな廻に気づかないはずもなかった。
だが、あえて触れはしない。
きっとそれは触れてほしくない内容だからだ。
ネスは気を取り直して、笑顔に戻す。
「にしても!いい感じに初歩の魔術が使えるようになってきたね!
それに魔力を相当使っているのに魔力事態の減りがない。
これはすごいことだ!
ウィンド、ウォーター、フレイム、魔術の基本のこの三つをやっと使いこなせた。
まぁまだ威力はあれだけど、この三つは合格だよ、おまけ点だけどね。
2週間も掛かっちゃったし…でも、これで少しは増しになったはずだよ!」
「お…おぉ!本当か!?
てことはこれで俺も魔術師を名乗れる感じ!?」
「こら!」
「いっつ!」
ネスは廻に一発デコピンをお見舞いする。
「あんまり調子に乗らない!
それに、魔術師を名乗るにはまだ威力は勿論、魔力維持が出来てない。
それなのに名乗れるって思わないことだよ?」
「うぅ…ネスって以外に厳しいよな…」
「厳しくいかないと甘えるからね」
「さいですか…」
俺はデコピンの痛みとネスのこれからのスパルタ授業を想像したせいか涙目になった。
想像以上にネスのデコピンは痛い…。
おでこがヒリヒリする。
けど、この言葉と行動、たぶんだけど、ネスは気を紛らわしてくれている。
俺が今悩みを抱えていて、それに頭を悩ませていることもわかっていてのこの励ましなのだろう。
ネスとこう言う会話をするのは楽しい。
いい気分転換になる。
本当に…ネスには助けて貰ってばっかりだな。
けど、本当に今更だけどこんな特訓した所で、滅びの魔女様に勝てるとか思ってたのかね?
俺の成長速度はこれだし、本当、あの手紙読んどいて良かったわぁ。
読んでなかったら確実に不安で押し潰されてたわ。
けど後もう少しなんだよなぁ…滅びの魔女様がご登場なさるまで。
俺は以外にもこれから会うのが楽しみだったりする。
魔女、と言えばファンタジー物では王道中の王道のキャラだからだ。
個人的には銀髪か黒髪を要求しておきたい所だな。
おぉ、段々会うのが楽しみになってきた。
それにもしかすると俺をこの世界に呼び出したのが滅びの魔女だったりするかも知れない。
つまりだ。
もしかすると滅びの魔女様は俺のメインヒロインだったりするのかも。
と言う勝手な妄想と理想を繰り広げて見たけど…そんな上手い話はこの異世界召喚ち置いてはないだろう。
何故なら今のところ俺の理想が具現化した覚えなどない。
あるとすれば魔法とか精霊とかか。
だがこれはファンタジー、異世界に置いてはなきゃダメな物だ。
数の内には含まれないかも知れない。
はぁ…俺のメインヒロイン…早く来ねぇかなぁ。
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そして、廻が異世界に来て一ヶ月が経った。
つまり、とうとう来るのだ。
あの、滅びの魔女が。
「なぁネスとルナや…」
「「なに!?」」
二人は死に迫った顔を浮かべる。
現在、城の門の前で俺とネスとルナは滅びの魔女様が来るのを待っている。
まぁ俺は一応ガチモンの剣を装備している訳なのだが…何この二人の心臓を捧げてる顔…。
「お前ら少しは落ち着けないのか?」
と、俺が間の抜けた顔をしながら聞くとネスがまず口を開く。
「廻はなんでそんな冷静なの!?
これから死ぬかも知れないってのに…」
何その顔、完全に最終決戦の顔じゃん。
すると、ルナも口を開く。
「ネスの言う通りよ。
廻、覚悟は今しか出来ないの、立ち向かう勇気はあるのよね?」
「あ、はい、ありますよー」
この温度差よ…。
この二人はあの手紙を読んでこれだもんなぁ。
怖がる要素とか滅びの魔女って言う事だけじゃね?
てかそんなに滅びの魔女の名前って恐ろしいもんなのか?
確かに世界を一度滅ぼしたってのは恐怖を煽るが、今じゃ何もしてないって言う事実に気づいて欲しいのだが…はぁ…ま、来ればわかることか。
そして、時が来た。
「「「ッ!?」」」
俺達三人は道の向こう側をばっと向く。
明らかに雰囲気が違う。
なんだこれ…なんだこの感覚…!
そして、姿を表す。
そこには、二人の黒髪の女の姿があった。
だが、この感覚の先の相手は間違いなく、右の方の、黒いドレスを着た女性だ。
隣の女の子に比べれば身長は高めだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
息が上手く出来ない、汗が止まらない。
背筋が凍る、震えが止まらない。
なのに…なんで…目が離せない。
そして、距離は、十メートル。
その瞬間、三人は動けず、死を悟った。
「あ、初めまして!
手紙を送らせて貰った滅びの魔女と言います。
本名は、エリエルです、今日は手紙の通り、お話があり来ました」
「「「へ…?」」」
だが、その顔に写っていたのは笑みだった。
俺達にとてつもない安堵が押し寄せてきた。
俺はこう言う人だと思っていた…のに…近くに来たらまったく違う。
本当に死ぬかと思った。
未だに口が開かない…動けない。
そして、ルナが最初の一言を放った。
「た、戦わないの…?」
と、ルナが剣を引くと、
「た、戦いませんよ!
私はもう決めてますから…この子の為だけに、力を使うと…」
エリエルと名乗った黒髪の女は視線を隣の女の子に向けた。
それに釣られて、廻もやっとエリエルに向けていた視線を隣に動かせた。
そして、この瞬間、出会ってしまった。
廻が望むメインヒロインが、光臨した。
少女は、こちらを見る。
身長は百六十㎝くらい、白いドレスを着飾るその姿は正に…
「ど、どうも!
初めまして…そのガブリエルと言います」
天使だった。
廻は呆然と立っているのに対して、ネスとルナはただ間の抜けた顔になっていたのだった。




