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中学時代に嘘告白してきたギャルと、大学で数年ぶりに再会した。  作者: あざね
オープニング

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2/4

1.古い記憶と、現状。






 天川セイラは中学時代から、その容姿も相まって注目の的だった。

 入学直後の俺の耳にも『ヤバい美少女がいる』と、真っ先に飛び込んでくるくらい。同級生のみならず、学校全体に衝撃を与えていたのだ。

 最初はそんな噂だけで、姿形は想像せざるを得なかった彼女と対面したのは、入学式から数日が経過した昼休みのこと。



『見ろよ翔平、アレが天川さんだぜ』

『ん……?』



 廊下を歩いていると、ミーハーなヲタク仲間がそう言った。

 彼の視線の先を追いかけてみると、そこにはちょっとばかりの人だかり。そして、その中心に彼女はいたのだった。


 正直に白状すると、思わず息を呑んだ。

 まだまだあどけない顔立ちをしてはいたが、目鼻顔立ちはとにかく端正で。真っ白な肌は透き通るように綺麗で、肩ほどまでの黒髪は濡烏の羽のように美しかった。



『な、な? 翔平もさすがに、三次元に興味を持つだろ』

『なんだよそれ。まるで人を痛い奴みたいに』

『違うのか?』

『…………強く否定はできないけど』



 そんな友人の馬鹿な話に応えつつ、しかし俺の視線は天川たちが去っていった方に向かっている。そして思ったのは、世の中には本当にいるのだな、ということ。

 俗にいう『生まれながらにしての勝ち組』というやつが。

 後に聞いた話では、天川の実家は大きな会社の経営をしているのだとか。



『まぁ、俺とは住む世界が違うんだな』



 だから、最終的に着地した結論はそれだった。

 どこにでもある一般家庭に生まれて、趣味といえばアニメや漫画のサブカルチャーばかり。学業こそ上位だけど、容姿も優れずに自他共に認める根暗な男。

 そんな俺から見ると、天川セイラという少女はまさに――。



『――高嶺の花、か』





「あ、あははー……まさか、学部まで同じとはね?」

「………………」

「席まで隣、だし……?」



 そんな『高嶺の花』だった彼女はいま、何故か俺の隣の席に座っていた。

 俺たちはどうやら、同じ文学部に進学したらしい。そして『芥川』と『天川』という苗字のため、五十音順に並べると指定された席すら隣という事態が発生。

 ここまではさすがに天川も想定していなかったのか、気まずそうに視線をあらぬ方向へとやっていた。対して俺は大きくうな垂れて、床ばかりを見ている。


 どうしてこうなった。

 いや、ホントにどうしてこうなってしまった!?



「…………」

「…………」



 黙り込む俺に対して、忙しなくしている天川。

 いよいよ言葉すらなくなってしまい、周囲の喧騒とは対照的な静寂が訪れた。だけど俺にとっては、こちらの方が都合がいい。いったん物事を整理する時間が取れるのだし、気取られないように深呼吸を一つ。

 そして、牽制する意味合いも込めてこう訊ねてみた。



「……天川、どうしてこの大学に?」

「ひぇ……!? あ、あー……そうだね、えっと――」



 すると何故か小さな悲鳴を上げてから、彼女は何やら思案する。

 その上で、こう返すのだった。



「その、元々実家がこっちだったから……かな」

「あー……そういえば、中学の時に越してきてたんだっけ……?」

「そ、そういう……こと」

「…………」

「…………」



 ――で、互いにまた無言。

 そういえば天川の実家は元々、都心の方にあるという話があった。親の都合とやらで中学から、俺の地元に引っ越してきていたのだ。それを考えてみれば、この事態や偶然もあり得ないとはいえない、か。

 もっとも、その『偶然』は俺にとって最悪、なのだけども。



「あ、式が始まるね」

「……そう、だな」



 そう考えていると、入学式開始のアナウンスがあった。

 天川はハッとしながらそう言って、俺は深く息をつきながら応える。すると、





「…………え?」





 いま、彼女が俺に向けて何かを言った。

 しかしその意味や意図を訊ねる暇などなく、会場の空気は張り詰めていく。そして結局、こちらがただ悶々とすることになってしまった。

 聞き間違いでなければ、天川はこう言ったのだ。




『また会えて、ホントに良かった』――と。




 俺はそれに対して、何も返すことができなかった。

 だが思い出されるのは一つ。



 ――中学時代の忌まわしき記憶。



 それをフラッシュバックして、俺は軽く頭を抱えた。

 そして、こう誓うのだ。





 『もう絶対に、騙されないからな……!?』――と。




 

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